二学期の保護者参観授業を成功させるコツとアイデア

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出席者が減る二学期以降の保護者参観。保護者にクラスの応援団になったもらうための、ちょっとした「こつ」と「授業案」を紹介します。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・尾野繁史

授業参観のイメージ

準備に時間を取れない時のオススメ

日々の忙しさに追われ、気がついたら保護者参観が近づいている。慌てて黒板に貼る物を夜遅くまで作成し、なんとか間に合わせる。教員になった当初の私の姿です。しかし保護者参観は、「この先生ならまかせて大丈夫だな」と思ってもらうための絶好のチャンス。年に数回のチャンスをバタバタと余裕のない状態で迎えるのは得策ではありません。

そこでまずは以下の二つの考え方をお勧めします。準備に時間が取れない時に、是非試して頂きたいと思います。

アイディア1 自分の得意分野で授業する

一つ目は、自分の得意分野の授業にすることです。自分の専門教科や領域があれば、それが一番よいと思います。私自身は、かつて絵画教室に通っていたことがあり、少年サッカーのコーチをしていた経験があるので、図工の絵や体育のサッカーを保護者参観に選ぶことがあります。教師が指導力を発揮できますし、きっと自信のあるオーラが出ているので、保護者への信頼感が高まること間違いなしです。

自分の専門教科や領域があれば、それが一番よいと思います。私自身は、かつて絵画教室に通っていたことがあり、少年サッカーのコーチをしていた経験があるので、図工の絵や体育のサッカーを保護者参観に選ぶことがあります。教師が指導力を発揮できますし、きっと自信のあるオーラが出ているので、保護者への信頼感が高まること間違いなしです。

アイディア2 前に行った研究授業を再度行う

二つ目は、かつて自分が研究授業で行ったゴージャスな授業や一度見たことがある授業で自分ならできそうだと思った授業をやるとよいと思います。かつて研究授業で行った授業は、何度も試行錯誤し、練りに練った授業です。さらに一度やっている授業なので、準備に時間がかからず、しかも特別感のある授業を行うことができます。費用対効果を考えると、かつて行った研究授業や、かつて見た同僚の研究授業など、再度行うことはお勧めです。

保護者が満足する参観授業とは・・・

保護者参観に来てくださった保護者は、言うまでもなく自分の子供を見に来ています。ですので、授業の中で子供が活動していることが大前提となります。

教師の説明を黙って聞く授業は、学校生活の中では必要な場面がありますが、保護者参観には不向きです。では、二学期以降の保護者参観がどうなれば成功かというと、保護者が「うちの子がんばっているな。しかもこのクラスにいることが楽しそう!」と感じることです。このような気持ちをもつことができたら、保護者はクラスのファンとなり、応援してくれるようになります。

一学期で担任の指導力や人となりは大体分かっています。担任のことをすでに知っている二学期以降の保護者参観では、このことを念頭に置いて活動的な授業を計画する必要があります。

以下では、私が五年生担任時に行った「うちの子がんばっているな。しかもこのクラスにいることが楽しそう!」と思ってもらえる授業を二つご紹介します。

アイディア3 「話すこと」で活動の多い授業を

どの学年でもそうだと思いますが、国語の「話すこと、聞くこと」は保護者参観と相性がいいものです。子供の活動量が多く、活躍の場面が作りやすいからです。

よくあるのは、その単元の最後の授業で、これまでの学習を生かし、子供一人一人が発表する「発表会」スタイルです。教師が話をする場面も少なく、準備もあまり必要としません。教師が失敗をする可能性も少ないので取り組みやすいでしょう。

教師の仕事としては、全員が発表できるように時間を管理すること、発表原稿を忘れる子供がいないようにすることでしょうか。

しかし、発表会を保護者参観にあてるのは、あまりお勧めではありません。この方法だと一人が一回、もしくは数回発表して終わりになってしまい、活動量が少なく、子供の待ち時間が多いという問題があります。保護者にしても45分の授業の中で、自分の子供の活躍の場が1分で、残りの44分は友達の発表を聞いている、という状態になってしまいます。また授業の中での子供の変容やクラスの雰囲気も伝わりにくいことも難点として挙げられます。

そこで、私は国語の「話すこと、聞くこと」の授業をする場合には、発表会の一つ前の授業、みんなで発表会に向けて、交流をしながら、練習をしていく授業を公開するようにしています。

昨年度はこのような授業をしました。

単元名
「お家の人がメダカを飼いたくなるように、おすすめの理由をはっきりさせてすいせんしよう」

昨年度のクラスでは、総合的な学習の時間を使って、教室の中に巨大なメダカ池を作りました。学年も終わる頃、メダカ池に住むメダカをお家に持って帰ることになりました。70匹から80匹位いたでしょうか。

子供たちは一年間の総合の学習で、メダカのことが大好きになっていて、持ち帰りたいのですが、お家にもメダカを飼えない様々な事情があります。子供の「家で飼いたい気持ち」と保護者の「お家の事情」のせめぎ合いです。そこで、国語の教科書のスピーチ単元とつなげて、前述のような単元名で学習を進めたのでした。内容面(構成や叙述)の学習は終わっていたので、保護者参観では音声面に特化した授業を考えました。

お家の人へのプレゼン授業
イラスト/宇和島太郎

1.めあての提示
お家の人が思わず「飼っていいよ」と口にしてしまうような効果的なスピーチの仕方を考えて、練習しよう。

2.効果的なスピーチの仕方の確認
参考となりそうな動画をみて、効果的なスピーチの仕方を確認。
・声の大きさ
・話す速さ
・間のとり方

3.自分のめあての設定

4.ペアでスピーチ練習(相手をかえて、練習とフィードバックの繰り返し)

5.今日の成果の発表・ふりかえり

6.お家の人への予告

この授業では、4のスピーチ練習がメインで多くの時間を使うことになります。この方法だと、子供の活動量も多く、上達の具合もよくわかります。ペアでのスピーチ練習は、同時進行で行われるため、保護者は、自分の子供と友達のやりとりをたくさん見ることができます。

プレゼンの練習風景イメージ
イラスト/宇和島太郎

最後に保護者を意識しながら、子供に伝えました。「次の時間はクラスみんなの前で全員が発表します。それは一位を決めるためではなくて、補強し合うためです。そしてそれ以降は、各自お家に帰って、推薦をしてみてください。見事、お家の人に『飼っていいよ!』と言わせることができたら、教室のメダカを持ち帰りましょう」。子供たちも保護者も笑顔で保護者参観を終了させることができました。

アイディア4 メドレー授業できびきび感を見てもらう

授業は45分で一つの教科、一つのめあてで学習することが通常ですが、私は年間一回、保護者参観限定で15分の活動×三回で授業を構成することがあります。

一つ一つの活動は、その年のクラスの授業や授業以外でずっと通してやってきたことです。「五年○組メドレー授業」と題して、保護者にも告知します。時数をどの教科で計上するのか、評価規準はどうなるのか、ということを言われることもありますが、一年に一回の「お祭り」だと思って、取り組んでいます。

ある年は、このような授業をしました。

1.音読の授業(15分)
・発生練習&早口言葉
・古文・名文音読
(様々なバリエーションで)

2.計算トレーニング(15分)
・百マス計算
・公倍数、公約数トライアル

3.百人一首(15分)
・2回実施

私が考える「メドレー授業」のよさは大きく三つあります。

一つ目は、これまでに育てられてきた学級の文化を知ってもらうことができることです。その年のクラスは、昼休みに百人一首をしたり、算数の授業前に計算トレーニング(百マス計算、公倍数、公約数)をしたり、朝の会で音読をしたりしていました。そのような活動はクラスの子供たちの所属意識に繋がっていて、家庭でも話題になることが多いようですが、残念ながらなかなか見て頂く機会がありません。

そのような日々取り組んでいる活動にこそクラスの雰囲気が出ます。この部分にスポットを当てることで、クラスのポジティブな空気を感じ取って頂くことができます。

二つ目は、子供の様々な姿を見ることができる点です。私の授業では、1の音読の授業でしっかりと声を出せること、2の百マス計算では、シーンとした中で最大限の集中力で学習に取り組めること、3の百人一首では、ルールを守ってクラスの友達と楽しく活動できること、を保護者の方に感じ取って頂けます。15分で内容が変わるので、飽きにくいですし、いろいろな姿が見られるので、保護者の方としては「お得感」があるようです。

三つ目は、クラスのきびきびした様子を見せることができることです。保護者の方も、だら~っとしたクラスより、きびきびと颯爽としたクラスがいいに決まっています。メドレー授業で行う一つ一つの活動は、日々取り組んでいることです。教師の説明がほとんど必要ありません。子供たちも次の行動がわかっているので、動きもスムーズです。子供たちだけで学習が進んでいく姿はとても頼もしく、見ていて気持ちがよいものです。

保護者参観
イラスト/宇和島太郎

またメドレーの順番にもこつがあります。1音読(動)、2百マス計算(静)、3百人一首(動)のように子供の声がたくさん出る活動と静かに黙々と学習する活動を交互に入れることが重要です。このような順番にすると、子供たちが素早く切り替えをつけて学習できるところが強調できます。保護者の方は、元気よく声を出す姿、黙々と真剣に学習する姿、友達と楽しく交流する姿、を見ることができます。

「メドレー授業」はいつもやっていることなので、準備が必要ありません。二学期にやることで、早い段階で保護者の心を掴むこともできます。みなさんもやってみてはいかがでしょうか。

コレは避けたい、失敗しがちな3つの方法

保護者参観で、やめたほうがよいと思うこともあります。ここでは三つ紹介します。

初挑戦は失敗する

一つ目は、初めてやることです。これは絶対にNGです。うまくいかないことが多いです。教師も子供も予想がつかないので、授業がごてごてするか、シーンとして進みません。

今、思うと不思議なのですが、教師になりたての頃、保護者参観で「今日の感想を五・七・五・七・七でまとめてみましょう」と今までしたことがない感想の書き方を指示してしまったことがあります。突然の無茶ぶりに子供たちは動揺し、感想が書けなかったことがあります。初めての指示はやるべきではありません。

授業時間超過は厳禁

二つ目は、時間内に終わらないことです。学校現場の課題だと思うのですが、スタートの時間は守りますが、授業終了の時間は案外守られていません。よい授業なら時間をオーバしても構わないと思っているところがあります。これはおよそ民間の感覚からはずれていて、改善すべきところだと思います。

幼稚園のお迎え、仕事に戻らなければならない等、保護者の方は忙しいのです。これを念頭に置いて、終わりの時間を厳守することが大切だと思います。

保護者参加型は、好かれない場合もある

三つ目は、過度に保護者参加型にしないということです。私は学年が終わる時、今後のために保護者の方に「何がよかったですか?」「どれがちょっと嫌でした?」と率直に聞くようにしています。すると、意外とお話をしてくださいます。そこで私が得た感触としては、地域や個人の状況にもよるのですが、私たち教師が思うほど、保護者は参加型の授業を好んでいないのではないかということです。参加型の授業は盛り上がりもしますが、そういうことが好きではない保護者やじっくり見たい保護者の足は遠のきます。保護者からすると、自分も「オン」の状態にしなくてはならないので、負担感があるようです。

繰り返しますが、重要なのは「うちの子がんばっているな。しかもこのクラスにいることが楽しそう!」と保護者に感じてもらうこと。これを念頭に置いて、保護者がクラスの応援団になってくれるような保護者参観を目指しましょう。

『小五教育技術』2018年9月号より

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