自学で「植物にいろいろな液体をあげるとどうなるか」研究~科学的思考力を育む自学とは②
子供たちの科学的思考力を育むために、福岡県北九州市立木屋瀬小学校を中心に、北九州市の小学校で自学・自由研究に取り組んでいます。今回は「植物にいろいろな液体をあげるとどうなるのかな?」(北九州市立熊西小学校6年、藤井星成さん)の発表を、ダイジェストで紹介します(「第2回こやのせ科学フェスティバル」より)。
目次
研究テーマ「植物にいろいろな液体をあげるとどうなるのかな?」(熊西小学校6年、藤井星成さん)
植物にいろいろな液体をあげるとどうなるかと調べようと思ったのは、しおれて元気がなくなったスイカの芽に水をあげると、1時間後に茎や葉がピンと伸びて元気になっていたからでした。「植物もぼくと一緒で、のどが乾いて水を飲んだら元気になったんだ! 他の飲み物でももっと元気になるかもしれない」というのがきっかけになりました。
1 予想「どの液体が切り花を元気で長持ちさせるのだろう」
「どの液体が切り花を元気で長持ちさせるのだろう」という視点で、予想しました。長持ちするのはサイダー(シュワシュワがいい)、栄養ドリンク(栄養があるから)。
予想表
2 調べ方
〈準備するもの〉
①スプレーカーネーション
②液体(14種類)
水・サイダー・炭酸水・食塩水・麦茶・リンゴジュース・酢・栄養ドリンク・牛乳・アクエリアス・クエン酸水・漂白剤・ハンドソープ・キッチン用洗剤
③ふた付きカップ
④計量カップ
〈調べる手順〉
①ふた付きカップに液体を150mLずつ入れる。
②スプレーカーネーションを液体につけて、2週間の様子を観察する。
③花、茎の様子と液体の量を調べる。
3 結果「きれいなまま長持ち」「水がたくさん減った」液体
きれいなまま長持ちした液体 BEST3
1位 アクエリアス
2位 サイダー
3位 リンゴジュース
量がたくさん減った液体
サイダー、クエン酸水、漂白剤、アクエリアス、炭酸水
両方の結果を整理
●花がきれいなまま、長持ちした液体
サイダー、リンゴジュース、アクエリアス
●量が、たくさん減った液体
サイダー、クエン酸水、漂白剤、アクエリアス、炭酸水
4 考察
●花がきれいなまま、長持ちした液体
花がきれいなまま長持ちしたのは、サイダー、リンゴジュース、アクエリアスの3つ。この共通点は「甘い」こと。「甘い成分が、きれいな花のまま長持ちさせているのでは? つぼみだった花も咲きそうだから、成長を続けさせている」と推測できます。
一番元気できれいな花はアクエリアスだったので、実験前の予想通り、アクエリアスは、人の体を元気にする栄養があるからよかったのではないかと考えました。でも、それなら、栄養ドリンクはどうなのかと新たな疑問がわきました。
栄養ドリンクは、6日目で茎が折れたけど、花の色はアクエリアスなどと同じでとてもきれいでした。このことから、人間の栄養と同じように、植物にとっても長持ちするのに必要な栄養や色がきれいになる栄養など、成分によって役割があるのではないかと考えました。
●量が、たくさん減った液体
液体の量がたくさん減ったのはサイダー、クエン酸水、漂白剤、アクエリアス、炭酸水でした。しかし、5つの共通点を考えましたが、わかりませんでした。だから、成分表を調べる必要があると思いました。
5 成分を調べる
市販されている、2種類の切り花用延命剤の成分を見ました。界面活性剤、糖類、防腐剤、抗菌剤という成分が気になったので調べました。
界面活性剤は、切り花の水の吸い上げを助ける働きがあるそうです。漂白剤やキッチン用洗剤に入っていました。
このことから、漂白剤がたくさん減ったのは、界面活性剤が入っていたからだと考えました。キッチン用洗剤は、うすめなかったので、ドロドロしてダメだったのではないかと思いました。他の液体には入っていないけれど、界面活性剤と同じように、水の吸い上げに関係するひみつが他にもあるのかもしれません。
2種類の切り花用延命剤には、どちらにも糖類が入っていました。糖類は、花のエネルギーになるそうです。液体の成分を見ると、アクエリアスにも糖が入っていました。
糖が入っている液体
防腐剤や抗菌剤は、水の中のバイキンが増えないようにする役割があるそうです。実際に毎日水かえをしていたら、9日たっても花は元気なままでした。だから、液体が腐らないようにすることも大事だと思いました。
6 まとめ
・植物は、水ではない液体をあげてもすぐには枯れない。
・アクエリアスやサイダーなど、甘い「糖」が入っている液体は、花をきれいな色のまま水よりも長持ちさせることができる。
・液体を腐らせないことも大事。
7 感想
甘い「糖」という成分が、切り花をきれいな色のまま長持ちさせることができるということにびっくりしました。次にやりたいことは、栄養ドリンクはなぜだめだったのか、糖の入った液体を水に少し混ぜるだけでも効果があるのか、などを調べたいと思います。
元 企業の研究・開発者 武藤良弘さん講評
わからないときに、自分と植物を比べる考え方をしているのがいい。また、壁にぶつかったときに、藤井さんは自分なりに考えて予想をしていますが、それも大切なことです。そして、自分で調べたいと思ったことを実際に試してみて、きちんと発表しているところがすばらしい。
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B5判 オールカラー 80ページ
ISBN978-4-09-840209-0
取材・文・撮影・構成/浅原孝子