小4社会「47都道府県の名称と位置」社会科におけるプログラミング教育のポイント
執筆/文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官・小倉勝登
「プログラミング教育をどう展開したらよいか」ということも現場の先生の悩みの1つだろう。そこで、社会科では、このようなプログラミング体験の取り入れ方があるという一例を提示してみた。未来の学びコンソーシアムが運営するポータルサイト「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」にある小学校第4学年を対象とした「ブロックを組み合わせて47都道府県を見つけよう」の実践を事例として、小学校社会科におけるプログラミング教育について説明する。「社会科における1人1台端末の効果的な活用」と併せて参考にしていただければと思う。
目次
効果的な活用のポイント
社会科におけるプログラミング教育については、「平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力」の育成を目指し、学習指導要領に示す社会科の内容を指導する中で実施されることとなる。
つまり、意図した一連の動きを実現するために、命令を順序立てたり、条件を設定したり、条件によって命令を分岐させたりするプログラミング体験を通して、子供が当該単元において育成を目指す資質・能力がよりよく育成されるのかを十分に吟味することが重要となる。端的に言えば、その単元の目標の実現に向かうためにプログラミング体験が効果的かどうか、という点が最も大切なことである。
第4学年「ブロックを組み合わせて47都道府県を見つけよう」
1 実践事例の概要
この単元で使用するプログラムは、47都道府県の特徴が記されたブロックを組み合わせることにより、組み合わせたブロックに記された特徴に合致した都道府県の名称と位置を示すよう、「Scrach」で作成されたものである。
本実践でのプログラミング的思考は、「都道府県の条件を3つ以上組み合わせて、都道府県1つを特定する」という、自分が意図する一連の活動を実現するために、「必要な条件を考える」「条件を組み合わせる」「必要に応じて改善する」という活動を論理的に考えていくことである。
具体的には、例えば、それぞれ「近畿地方」「海に面している」「世界遺産がある」「隣り合う都道府県の数が4つ」という特徴が記されているブロックを組み合わせると、「兵庫県」が特定されるというものである。しかしながら、条件の組み合わせが違い、特定できない場合は、再度、異なる条件を探して組み合わせを改善することとなる。
この活動は、特徴が記されたブロックを組み合わせることは、特徴の組み合わせを見つけることであり、特徴という条件によりふるいをかけ、その条件に合致する都道府県を1つに特定する学習である。同時に、子供は地図帳を活用し、特徴を探し、試行錯誤しながら特徴を組み合わせ、都道府県を特定する。
こうした活動により、子供は、都道府県の特徴とともに名称と位置を理解していく。条件設定は、ブロックを組み合わせることで簡単にできる。何度も繰り返し取り組むことができたり、足りない条件を地図帳から探したりすることで、単に地図上で理解することよりも思考を伴った学習活動になることが期待できる。
2 実践の実際
①単元名:『47都道府県の名称と位置』全3時間
②単元の目標
パソコンのプログラムを活用し、都道府県の地理的環境や自然条件、面積、人口や特産物などの特色を組み合わせて県を特定する活動を通して、47都道府県の名称と位置を理解する。
③教科の学習とプログラミング教育の関連
本単元では、プログラミングソフトを中心の教材としながらも、地図帳や白地図を同時に活用しながら学習を進めていく。各子供は、47都道府県の特徴が記されたブロックを組み合わせながら、つまり、都道府県の特徴を組み合わせて特定の都道府県を見つけていくプログラムである。子供は、地図帳を同時に活用し、特徴を探し、組み合わせる活動を繰り返し行う。試行錯誤しながら条件設定し、県を特定する。県の特徴とともに名称と位置を理解していく。簡単な操作ではあるが、条件を組み合わせることはかなり難易度が高い。このような学習はプログラミングソフトであるがゆえの利点と言える。子供が地図帳を活用せざるをえない状態に追い込めるのもこのソフトの利点でもある。子供も楽しく操作しながら思考でき、理解につながることが大いに期待できる。
④単元の展開
【第1時】
47都道府県の見つけ方を知る
まず例として北海道を取り上げて、特徴を組み合わせて北海道を導き出すにはどうすればいいかを、子供に問いながら黒板上で条件を組み合わせる活動を行う。黒板には「Scratch」と同じブロックを印刷して貼り付けている。この活動を通して、条件を3つ以上組み合わせることにより都道府県が特定できることを子供は知る。
タブレットの中のプログラムを使って、47都道府県を見つける
プログラムを使った都道府県の見つけ方を知った子供は、各自、地図帳を活用して各都道府県を導き出す条件を自由に考えて活動を始める。見つけた都道府県を白地図に色鉛筆で塗りつぶしていく。
各自タブレットに向かって、地図帳を活用しながら、都道府県を調べ、見つける活動が進んでいくと、
「なぜ3つもあるの?」
「『雪が多い』というところが違う。もっと多い県があるよ。上位ではないから条件が違う」
隣同士や近くの友達と話し合いや情報交換が行われる。解決に必要な活動として自然と対話が始まる。
【第2時】※第1時の続き
タブレットの中のプログラムを使って、47都道府県を見つける
【第3時】
47都道府県の条件を使って、グループで問題を出し合う
⑤実践を通して
子供の学びの姿を見ていると、一人一人が自分のアプローチで解決に迫っている。試行錯誤を繰り返し、友達と話し合い、情報交換しながら、何度も条件を組合せ、県を特定させていく。「なかなか決まらない」状況であっても、子供の中では失敗ではなく、「発見」につながっている。プログラミングを位置付ける時に一番大切にしたいのは「そのプログラミングは目標の実現に向けて効果的か」ということである。この単元の目標は「47都道府県の名称と位置を特徴と組み合わせて理解する」である。どの子供の学びも、どの子供のアプローチも間違いは1つもない。すべてこの目標の実現に向かって学びが続いていた。
まとめ
社会科の学習において、例えば、学習した知識を発表する手段として、クイズづくりやクイズ発表のような学習をプログラミング体験として位置付けることや、児童の思考を代替するようなソフトを活用することなどは望ましくない。また、児童が調べたり、考えたり、まとめたりするためにソフトを活用することを考えると、プログラミン体験だけで全時間展開するのではなく、他の資料で調べたり、見学したり話を聞いたりして調べることや、意見を交換したりする活動など、さまざまな活動と組み合わせて学習を展開していくことが大切である。さらに、プログラミング体験自体が目的になるものは望ましくない。
※未来の学びコンソーシアムが運営するポータルサイト「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」参照