夏休み明けの3日間が命。中学年の子どもを学校モードに戻そう
夏休み明けの二学期に、まず取り組みたいのが、規則正しい生活への「モードの切り替え」。三年生・四年生ならではのポイントを押さえながら、担任の先生のきめ細やかな観察と、巧みなスイッチングで、子どもたちの元気な新学期スタートを後押ししましょう!
執筆/東京都公立小学校教諭・大屋敷 浩子
目次
こんな子どもには注意して!
一人ひとりに目を配り、小さな変化も見落とさないで!
夏休み明けの3日間は、とても大切な「決めの3日間」。ここで子供たちの変化を見逃して、なんとなく二学期を始めてしまうと、深刻な問題に発展してしまうこともあります。クラスの〝ざわざわムード〞もまとめられないままだと、秋の学級崩壊へなだれ込む危険性があります。
「あの子、夏休みが明けて、なんとなく雰囲気が変わったみたいだけど……気のせいかな?」
「クラスに落ち着きがないけど、新学期が始まったばかりだからしかたない?」
いえいえ。少しでも違和感を感じたら、丁寧に観察をしてみてください。
ただし、夏休み明けの変化を発見するためには、夏休みに入る前の一人ひとりの表情もちゃんと観察しておく必要があります
夏休み明けのちょっと心配な子どもの例
ダラダラ生活の影あり
夏休み中に特に予定がなく、両親が仕事などで一人で過ごしがちだった子。休み中は友達が塾や帰省で不在になり、思うように遊べなかった場合は、オンラインゲームや動画サイトにどっぷり浸かってしまった子もいます。ぼんやりした表情をしています。
昼夜逆転で眠そう
深夜に放映されているアニメなどを見て、生活時間が昼夜逆転になってしまった子もいます。眠そうな顔をしている子には、何げなく理由を聞き出して、保護者にも協力してもらい生活改善に導いてあげましょう。
急激に痩せた! 太った!
二学期の定例身体測定で、過度な体重の増減があった子は要注意! 減った場合、自然に身体が締まってきたのなら大丈夫ですが、昼食を抜かしたり、栄養に偏りがある場合も。増えすぎの場合、ダラダラと食べ続けた暴飲暴食、運動不足の結果かも。体重変化からも夏休み中の生活、家庭環境が垣間見えます。
朝の登校シーンからチェック!
始業式の朝の様子を一人ひとり観察する
二学期の始業式の朝。いつも以上に、一人ひとりの表情や姿勢、言動を観察してください。始業式で校庭や体育館で並んでいるとき、「なんとなく体がフラフラしている」「落ち着きがない」ような場合、生活リズムが乱れて、体調を崩しているかもしれません。教室で「机に伏せたまま」とか、「目が腫れぼったい」「あくびをしたり、眠そう」だったら、声をかけてみてください。
「昨日何時に寝たの?」
「朝は何時に起きたの?」
叱ったり、注意する口調ではなく、あくまで何げない世間話のように聞いてみましょう。
クラス全員の顔を見渡してみて、表情が暗い子も要チェック。先生からの「おはよう!」の挨拶に返ってくる「おはようございます」の声が小さい子も、「どうしたのかな?」と気に留めてください。
一番心配なのは、何も話さない子。できるだけフランクに、「どうしたの~?」と聞いてみて、それでも話してくれないときは、その子と仲のよい友達に何げなく聞くのも手です。
「登校しぶり」が戻ってしまう子も
中には、初日から遅刻、もしくは欠席の子がいるかもしれません。9月1日に子どもの自殺が多いというデータがあるぐらい、学校へ行きたくない子にとっては、初日の登校は気が重いものです。
そこまで深刻ではなくても、「登校しぶり」という現象があります。登校しぶりに多いのは「母子分離」ができていないケース。通常中学年では少なくなりますが、近年は、母親離れができない子が増えているようです。せっかく一学期にうまく登校できるようになっても、夏休み中に母子でどっぷり過ごすと、逆戻りしてしまう子もいます。
宿題の提出の様子も要チェック。「やっていない」のはもちろんNGですが、提出はしたものの、自信がなさそうだったり、いつもちゃんとやっている子が、いい加減にやった様子が見て取れる状況だったら、「どうしたのかな?」とアンテナを張ってください。
「元気に盛り上げるぞ」の先生は注意!全体を冷静に観察
先生側で気を付けなくてはいけないこともあります。子どもたちのテンションを上げようと、面白い話で盛り上げようと頑張る先生。悪いことではありませんが、クラス全体の反応を気にするだけで、一人取り残されている元気のない子に気が付かないことがあります。一人ひとりを冷静に観察し、全体ではなく「個」とつながる意識をお忘れなく。
夏休みのふり返りで子どもをチェック!
自由研究と思い出スピーチを分けずに一緒に発表する
二学期が始まり、すぐに教科書に沿った授業をせずに、「自由研究の発表」や「夏休みの思い出スピーチ」で、夏休みをふり返えるのも大切な時間です。子どもたちは、一生懸命に取り組んだ自分の研究の発表を心待ちにしています。
夏休み中に家族と旅行へ行ったり、貴重な体験をしたりした子も、みんなの前で話したくてウズウズしています。一方で、「自慢できるような思い出なんて何もなかった」と、スピーチのネタに困り、憂鬱になっている子もいます。
そこで提案したいのは、自由研究の発表と思い出スピーチを別々にせずに、両方をあわせて発表することです。別々にしないことで、「何も話すことがない」はなくなります。少なくとも自由研究の発表では、何かしら言うことがあるものです。「ここを頑張りました」「一番見てほしいのはここです」「ここを触ると壊れやすいので注意してください」……など。
中には、自分の自由研究のよさをうまく表現できない子もいるかもしれません。そんな時には、先生が代弁して伝えてあげるのも大切です。
つけたしMEMO
自由研究の展示方法は先生の腕の見せどころです。子どもたちが頑張った作品を、見栄えのよいように展示してあげましょう。段ボールや長机で特設展示コーナーを設けたり、カテゴリーごとに展示する方法も。作品と本人の記念写真を撮ってあげるのも、難しいことではありませんね。
いろいろな子に配慮して、発表前の準備で手助けを
思い出スピーチに関しては、事前にシートを配るか、自分のノートに「どんなことを話すつもりか」を書かせて、準備をさせることをお勧めします。「夏休みに何もなかった」と、本番でシドロモドロになってしまい、嫌な思いをする子がいないようにします。
発表内容に悩んでいる子がいる場合は、事前にネタのヒントをあげてください。
旅行やイベント体験だけがすべてではないことを伝え、「夏休み中に頑張って取り組んだこと」「新しい体験」「夏休み中に読んだ本」「夏休み中に気になったニュース」など、その子の語れることを引き出してあげましょう。
「夏休み新聞」を宿題にしておくと、ネタに困ることもなくなります。スピーチの内容が決まっている子にも、「この部分膨らませてみたら?」「みんながもっと詳しく聞きたいのは、ここじゃないかな」とアドバイスをしてあげましょう。
宿題や提出物にはなるべく早く目を通して、丁寧にコメントを付けて返却します。子どもたちは先生の反応を待っています。一生懸命取り組んだことを先生に認めてもらうことが、二学期からの自信とやる気につながります。
「友達関係」も夏休み中に変化の可能性
友達関係の変化は、休み時間の様子から見える
長い夏休みの間に、クラスの子どもたちの友達関係が変わっていることがあります。先生の目が届かない世界で、ケンカがあったり、夏休み中のイベントで、新たに友達になった子がいたりするかもしれません。新しいグループの誕生もあり得ます。グループメンバーが変わっていることもあります。
その友達関係の変化に気が付くのは、子どもたちが動き出す「休み時間」のことが多いです。「あれ? あの子、どうして○○ちゃんと一緒にいないのかな?」「○○くん、あちらのグループに入っている」など、注意して観察してみると、なんとなく見えてきます。
夏休み中の友達関係に影響するのは、「友達と毎日会えない」という状況。とくにケンカをしてしまった場合、普段なら翌日には顔を合わせ、なんとなく修復できてしまうのに、ずっと会えない日が続くと、修復のタイミングを失ってしまいます。
もちろん、先生が仲直りの仲裁に入ることもできません。このため、夏休み中に深い溝ができて、卒業まで仲直りできなかった例もあります。逆に、夏休み中に新たに親しくなると、遊ぶ時間も多くなり、急速接近することも。
少し大人になった中学年、友達関係には大人も介入できない
夏休み明けに、子どもたちの友達関係の変化に気が付いたとしても、先生が介入することは難しい年頃になっています。
「○○ちゃんと話さなくていいの?」
「どっちのグループにつくの?」
大人が決めることではありません。現状を把握して、見守るしかないでしょう。ただし、一学期に仲よくしていた友達と離れて孤立してしまった子や、どのグループにも所属していない子がいた場合、しばらく様子を見て、その子の気持ちを聞いてみてください。夏休み明けに限らず、デリケートなケアが必要になります。
複雑になった友達関係は、席替えがリセットのチャンス!
新学期の切り札に、席替えがあります。一学期のままの席であることが、新しい友達関係において「気まずい」雰囲気になっているのを察知したら、席替えをしてみるのも打開策です。新学期スタートの気持ちの切り替えがうまくいってない子にとっても、新しい席が気持ちをリセットするきっかけになるでしょう。
とは言え、席替えを休み明けすぐに実施してしまうのは時期尚早。しばらくは友達関係の変化も含め、クラスの様子を観察してからのほうがよいと思います。係決めも、教科書を使った授業を開始する前、ウォーミングアップ期に実施するとよいですね。
イラスト/有田リリコ
『小三教育技術』2018年9月号より