不登校と中1ギャップとの関係性
最新の文部科学省の調査結果によれば、平成10年以降、不登校者数は過去最多を記録しました。みなさんの学校はどうでしょうか。不登校に苦しんでいる子供、保護者、先生方も身近におられると思います。不登校は小学5年生から中学3年生まで学年を追って増加傾向をたどります。そこで、不登校に関する対策等をいくつかご紹介します。
執筆/福岡県公立小学校教諭・山﨑邦彦
目次
1 数の的確な把握
グラフのみを眺めると、不登校者数の増加が著しいと感じます。しかし、不登校者数を「①新規数(前年度は不登校ではなかった人数)」と「②継続数(以前から不登校の児童数)」とに分けて考えましょう。さらに、登校が可能になった人数「③不登校解消数」にも着目し、その取組を振り返ることも有効です。
学校で一度、「新規不登校者数」と「不登校解消者数」を整理し、対応策を協議するのもいいかもしれません。不登校解消者以上に「新規不登校者数」が増加しているのか、ただ単に「新規不登校者数」が増加しているだけなのか、不登校増加の原因はどこにあるのかなど、問題を焦点化します。
不登校児童数の増加は全国的な傾向です。その一方で、不登校解消者数も一定数確認されています。各校で不登校解消に向けた取組を見直し、的確に数を把握することで原因解消への糸口が見えてくるかもしれません。
2 中1ギャップについて
小中接続の問題として取り上げられることが多い「中1ギャップ」です。さて問題は、本当に子供たちにとって、大きな「ギャップ」があるかです。
小学校時に欠席や遅刻早退等の目立たなかった児童が、中学1年生になっていきなり「不登校になる」割合は、20~25%程度です。
中学1年生(以下、中1)の不登校者数を「継続」と「新規」とに分け考えます。すると、中1の「新規不登校者数」は全体の2割程度というデータもあります。やはり学校の実態を細かく調査し、その傾向を把握することは必要不可欠です。
例えば、上のグラフで小中学校の不登校児童生徒数を比較します。すると、欠席日数が30日から89日の児童生徒数に限って大幅に減少しています。不登校の長期化は大きな懸念材料ですが、解消者も一定数いるということです。
となると、不登校解消の取組は、やはり中学校区の小中全校で連携しながら行うべきではないでしょうか。
しかし、依然として90日以上欠席した児童生徒は全体の6割程度を占めています。不登校の状況が長期に及んでいるという事実を受け止め、中学校区で対策を考えていくべきではないでしょうか。
3 長期欠席児童への対応例(家庭への啓発)
①規則正しい生活
欠席が続くと、睡眠時間や適切な食事などの生活習慣の乱れが気になります。「早寝、早起き、朝ご飯」「家庭内での挨拶」など、できることから取り組みましょう。
②ゲーム、携帯等のルールづくり
子供と一緒に1日のスケジュールを立て、時間を可視化することも有効です。子供自身が自己管理できるよう意思決定を尊重することがポイントです。「寝るときはスマホ等をリビングに置く」「1日のうち〇時間はノーネットタイム」など、子供と話し合い、決めたルールは家族みんなで守ることが鉄則です。
不登校は、要因、背景、学校、家庭、社会など多くの問題が複雑に絡み合っていることから「どの子にも起こりうる可能性」を含んでいます。兆候に気づいた段階で関係諸機関と連携を図ることも重要です。
イラスト/種田瑞子
『教育技術 小五小六』2021年2月号より