感化を促す実物掲示のアイデア【どの子も安心して学べる1年生の教室環境 #1】
学校にわくわくしながらも不安を抱える1年生が、どの子も安心して学べる「教室環境づくり」を提案する連載のスタートです。『教室ギア55』(東洋館出版社)や『日常アレンジ大全』(明治図書出版) などの著書をもつ、教室環境づくりのプロフェッショナル〈鈴木優太先生〉が、さまざまなアイデアを紹介していきます。月1回公開、全12回の連載です。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。
目次
子供同士の感化を促す2つの最強アイテム
連載第1回では、私が「最強」と考える『マグネットクリップ』と『曲板(まげいた)』の活用法を紹介します。
写真や動画、イラスト…子供たちに様々な場面でビジュアルを見せて説明することがあると思いますが、「実物」を驚くほど簡単に掲示することができる方法をお伝えします。こちらは、1年生が自分の手で貼り出すこともできて、子供たち同士の「感化」を促す点で「最強」のアイテムと考えています。
『マグネット』クリップを使って、実物を貼り出そう!
『マグネットクリップ』は、挟んだ「実物」を磁石が付く場所ならどこにでも貼り出すことができるアイテムです。しかも、100円ショップなどで簡単に入手できます。
例えば、牛乳パックのたたみ方を指導する場合に、上の写真のように2つの「実物」を黒板に貼り出します。
「どちらがいい?」と問いかけ、黒板に「〇」と「▲」と書いても良いですね。
一目瞭然です。
1cmまでの厚さのノートや教科書程度の重さであれば、開いて貼ることができます。それ以上の重量があるものも、2つ以上の『マグネットクリップ』を使うことで貼れる場合があります。
言葉だけの説明では理解が難しい子も、「実物」が貼り出されると顔が上がります。「見ただけで分かる」という情報提示の工夫は、特に1年生には有効です。
写真を提示したり、プレゼンソフトにまとめたり、動画を編集したり……教師による視覚教材の準備はとても効果的ですが、見通しと事前の準備が少なからず必要(どちらも超大切ですが!)でもあります。
「その場」で、「すぐ」にできるのが『マグネットクリップ』です。
ひらめきを瞬く間に形にすることができます。子供たちの実態を見極めて、行動に結び付く指示や説明がタイムリーにできるようになります。
「実物」を貼り出しましょう!
『曲板』を使って、実物を掲示物にしよう!
『マグネットクリップ』で挟んだ「実物」をそのまま「掲示物」にするには、等間隔に穴の開いた鉄製のプレート『曲板(まげいた)』を使います。
DAISOで購入される場合は「ステンレスフリーステー296mm」という商品が適します。私は、ホームセンターで購入できる、八幡ねじ「クロームメッキ曲板〈チドリ〉500mm」を愛用しています。
『曲板』の穴の部分を掲示板に画鋲で固定すると、磁石が付くようになります。
このような『曲板学習コーナー』や『曲板係コーナー』を教室の掲示板に設けましょう。
黒板に貼り出した「実物」は、『マグネットクリップ』に挟んだまま『曲板学習コーナー』にスライドするだけで知的掲示物に早変わりします。レイアウトを変えたり、再び黒板に貼り出したりする際も、挟んだままでOK。取り外しや移動が自由自在です。
教室環境の大部分を占める掲示板をフル活用した、ダイナミックな学級経営や授業ができるようになります。
掲示物は「子供たちの手」で更新しよう!
『マグネットクリップ』と『曲板』が教室にあると、掲示の度に画鋲を扱うことがなくなります。そのため、「子供たちの手」で安全に貼り出すことができます。
例えば……
・書きたてほやほやのノートを、書いた子供たちが「開いた状態」で「即」掲示物にする。
・図工作品の途中経過を貼り出し、貼り出された友達の作品を見てイメージを膨らませる。
「先生見てー」という自由帳や折り紙なども、子供たちの手で展示してよいことにすると、係活動への発展や活性化につながります。「すぐ」に友達と見合えることは子供たちにとって大きな励みになります。
教師だけがノートや作品の山に目を通していた時よりも、他者を意識したノートや作品に変わっていきます。子供たちの交流が促されるのです。コピーを貼ったり、1人1台端末でノートや作品の写真を共有したりすることも有効ですが、「生のノート」にはかないません。「実物」にはかなわないのです。
手書きしたノートや作品は、触れる距離で正対できることで、質感を伴った「感化」が促されます。
さて、掲示板に貼り出した掲示物の「旬」は「その日」です。最長でも「3日」です。賞味期限切れの掲示物は惜しまずはずし、「鮮度」の高い情報に次々と更新します。「教師しか」情報を更新できない教室は、掲示物が変色していきがちです。
「実物」を貼り出し、旬に合わせて更新しましょう、子供たちの手で!