小5理科「電磁石の性質」指導アイデア
執筆/福岡県公立小学校教諭・國房逸美
編集委員/文部科学省教科調査官・鳴川哲也、福岡県公立小学校校長・田邉伸三
目次
単元のねらい
電流の大きさや向き、コイルの巻き数などに着目して、それらの条件を制御しながら、電流がつくる磁力を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に予想や仮説を基に、解決の方法を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を養う。
単元の流れ(三次 総時数 11時間)
第一次 電磁石の性質について調べる(5時間)
① コイルや電磁石について知る。
②③ 電磁石を作り、電磁石の性質を磁石と比べる。
④⑤ 電磁石の極について調べる。
この単元は、目には見えない、電気がつくる磁力(磁石の力)を、方位磁針やクリップといった、目に見えるものを使って、その性質について調べる単元です。電流の大きさや向き、コイルの巻き数などに着目して、それらの条件を制御(条件を1つずつ変えて調べる)しながら進めていきます。
第二次 電磁石を強くする方法を考え、調べる(4時間)
① 電磁石を強くする方法を考える。
② 電流を大きくして実験する。
③ 巻き数を増やして実験する。
④ 電磁石を強くする方法についてまとめる。
本単元では、主に「量的・関係的」な見方を働かせ、「電磁石の強さ」は「電流の大きさ」や「導線の巻き数」によって変わるのかという問題を解決していきます。
第三次 生活の中にある電磁石を利用した道具を調べたり、つくったりして、電磁石の性質についてまとめる(2時間)
① 身の回りにある電磁石を利用したものを調べる。
② 電磁石を利用したおもちゃや、強力電磁石を作ってみる。
単元の導入

① 電磁石の不思議を提示しよう。
◆動画を提示する

すごいな。鉄が、引き付けられたり、離れたりしている。

電気の力で、クリップが引き付けられたよ。
② 話合いをして調べることを整理しよう。
電磁石には永久磁石と似ている性質がありそうだね。違うところもあるのかな。
永久磁石と同じように電磁石にもN極やS極はあるのかな。北をさしたり、同じ極同士がしりぞけ合ったりする性質もあるのかな。
活動アイデア
予想や仮説を基に実験方法を考え、結果を見通したり、引き付けたクリップの数という実験結果と、その要因であるコイルの巻き数を関係付けたりすることを通して、「量的・関係的」な見方を働かせながら問題を解決していきましょう。
授業の展開例
自然事象への関わり
コイルに電流を流すことで磁力が発生するという電磁石の仕組みを知り、電磁石を強くするためには、コイルの巻き数も要因であることに着目する。
問題
コイルの巻き数を増やすと、電磁石の鉄を引き付ける力は、強くなるのだろうか。
コイルの巻き数を変えた時の、引き付けられる鉄のクリップの数に着目した追究により、「量的・関係的」な見方を働かせていることを意識させましょう。
予想
・巻き数が増えると、磁石の力が増し、電磁石は強くなると思う。
・コイルをたくさん巻いても、電流の大きさは同じだから、電磁石の強さは変わらない。
解決方法の立案
コイルの巻き数とクリップの引き付ける数の関係を調べるぞ。
変える条件はコイルの巻き数だから、変えない条件は電流の大きさだね。
電池の消耗具合によって結果に差が出ることがあるため、新品の乾電池、もしくは電源装置を使います。

観察、実験
・導線50回巻きの電磁石と導線100回巻きの電磁石で、クリップを引き付ける数を比べる。

データの妥当性を求めるため、実験は3回以上行います。一度引き付けたクリップは磁力を持つため、新品のクリップを多めに用意し、一度使ったクリップは使わないようにして条件を揃えます。
結果

各班の実験結果が一目でわかるような一覧掲示を黒板にし、「結果全体からどのようなことが言えるだろうか」と考えるようにしましょう。
考察
・コイルの巻き数と、電磁石の強さは関係がある。
・巻き数が多いと、電磁石の鉄を引き付ける力は強くなる。
コイルの巻き数と引き付けられたクリップの数を関係付けて、コイルの巻き数が増えると鉄を引き付ける力が強くなると結論付けます。
結論
コイルの巻き数を増やすと、電磁石が鉄を引き付ける力は強くなる。
イラスト/佐藤雅枝、横井智美
『教育技術 小五小六』2021年2月号より