低学年の学年末指導 8つのポイント

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宿題が全員提出されたことを、笑顔で子供たちに伝える教師。

低学年のうちに身に付けるべき力はしっかりと育てて、次学年へと送り出したいもの。2月、3月の残り2か月で、低学年の学級担任がこれだけは押さえておきたい指導のポイントを紹介します。

執筆/千葉県公立小学校教頭・藤木美智代

1.毎日持ってくる物を忘れない

生活に慣れてくると、手を抜いてしまうことがあれこれ出てきます。もう一度初心に戻って、毎日持ってくるべき物を忘れないことが習慣になっているかなどを見直すことが大事です。

私の学級では、朝の会で、毎日必要な物の頭文字を取って、「あははてぃなつぼ検査」という持ち物検査を日直が行います。

…朝ご飯食べてきたか
…歯磨きをしてきたか
…ハンカチを持ってきたか
てぃ…ティッシュを持ってきたか
…名札を付けているか
…爪を切ってきたか
…帽子をかぶってきたか

やり方は簡単です。朝の会で、日直がみんなに聞きます。
「朝ご飯食べてきた人?」「食べてこなかった人?」
人数を数えます。

「歯磨きしてきた人?」「してこなかった人?」
と、同様に続けます。これは自己申告です。

学校で確かめられるハンカチ、ティッシュ、名札や爪、帽子は、隣同士で見合います。これを「おとなりチェック」と言っています。毎日100%達成をめざしたいものです。

私の学級では、「あははてぃなつぼ」で全員が忘れずに、パーフェクトになった日はビー玉を一つ、ペットボトルに貯金します。ペットボトルがいっぱいになったら、お楽しみ会を開くというごほうびがあります。

2.あたりまえのことをできるようにする

学級を次の担任に受け渡すときに、あたりまえのことをあたりまえにできるようにしておくことが大切になります。こんなこともできないのかと思われたくはありませんよね。次年度の4月にここから指導するのと、もうすでにできているのとでは、スタートダッシュが違ってきます。

私は、森信三先生の「しつけ三原則」を徹底させたいと思います。

①大きな声であいさつができる子
②「はい」と返事ができる子
③靴を揃え、椅子を戻す子

先生や子供同士で元気にあいさつする子供たち

これらは、毎日、指導を続けることで、習慣にできるはずです。

また、森信三先生は「立腰りつよう教育」といって、正しい姿勢を保つことを重んじ、実践されていました。「つねに腰骨をシャンと立てること、これは人間の根性の入る極秘伝なり」と師は唱えています。

①腰骨を立てる
②あごを引く
③つねに下腹の力を抜かぬこと

授業中に姿勢のくずれている子がいたら、後ろから背骨を押し、腰骨を立てていきます。いつでもよい姿勢で授業に臨めるようにさせたいものです。

3.提出物は全員揃うようにする

提出物が出されていないのに、何も指導せず見過ごしてしまうと、提出物は出さなくてもいいものだということを学習してしまいます。毎回、提出すべきものを出していない子には声かけをします。

簡単な方法としては「全員起立。名前を言われた人から座りましょう」と言って、提出済みの子の名前を読み上げていきます。これを続けていると、名前を読み上げ始めたところで、「ぼく、まだ出していません」と名乗りを上げる子が出てきます。次第に全員が提出できるようになります。

プリントやノートを回収する際、グループごとに、全員の分を揃えたら持ってこさせるという方法も有効です。遅い子や分からない子に、同じグループの子が力を貸す場面も見られるようになります。

宿題や提出課題を家に置いてきてしまった子には、どうしたら明日、忘れないか考えさせます。連絡帳に赤で書くとか、ランドセルを開けたら見える所にメモを貼っておくなど、自分で解決方法を工夫させることが大切です。

4.おおかたのことは任せる

「ほんものとにせものとは、見えないところのあり方で決まる」

これは東井義雄先生の言葉です。担任がいたらしっかり活動できるのに、担任がいないと何もできないという学級は本物とは言えません。残された日々は、このような言葉を子供たちに伝え、本物の学級をめざしていきましょう。

整列、教室移動、給食配膳、掃除、朝の会、帰りの会などの毎日の行動においては、担任が指示や注意をしなくても、しっかりと時間内に活動が行えるようシステム化します。

また、日課変更などに対応できるよう、日程がきちんと示された「週プログラム」を配付したり、教室にその日の予定を示したりする必要があります。

「次に何をするのですか」「終わったらどうするのですか」「なん時からやるのですか」などの質問には一切答えず、「予定表を見て行動しなさい」と言うようにします。次第に担任を頼らなくても行動できるようになります。

教師には頼らず、当日の予定表をみて、自分たちだけで次の授業の準備をする子供たち。

5.役割を超えて動けるようにする

次のようなことはありませんか?

□□君、これ配ってくれる?

それは、〇〇君の仕事です

ここを掃いてくれない?

私、雑巾の担当なので……

役割を細分化して、各々がやるべき仕事をしっかり行うことは大事ですが、そのために自分の役割以外はやらなくていいという意識をもたせたのでは本末転倒です。

私は、給食配膳や掃除の当番グループを週ごとに回すシステムはつくりますが、その中で誰が何をするのか細分化したことはありません。「なるべくいろいろな仕事をやること」「一人で同じ仕事ばかりしないこと」というような声かけはしましたが、基本的に気付いた人や早く終わった人が自主的に行うようにさせました。

だから、当番表(円盤)はいたってシンプル。4等分くらいです。よく働いている子をほめたり、いつも楽している子に発破をかけたりしながら、自主的に働くことができるように仕向けます。

「誰かがやるだろう」や「なんで私がやらなければならないの?」という感覚を払拭させ、誰もやらないなら私がやろう、大変そうだから手伝ってあげよう、そんな役割を超えて動く、気を利かせられる子を育てましょう。

6.全員が授業に参加する

1日1回は、全員に発言をさせたいと思います。できるようになるには訓練が必要ですが、どのような発言をしても、受け入れられるというクラスの雰囲気づくりも大切です。

正誤が問われるものでなく、感想のような何を言ってもいいという発言から始めます。「全員起立。一言感想を言った人から座ります」というように、発言をしたかどうかを可視化できるようにします。同じことでもいいので、必ず自分の言葉で言わせます。

発言することに慣れてきたら、ハンドサインを使います。私はハンドサインをハワイのアロハ(親指と小指を立てて、残りの指は折る)にして、挙手の際、「今日まだ発言していません」ということを表明させ、優先的に当てるようにしていました。

アロハのハンドサインで挙手する子供と、その子を当てようと考える教師。

それでも、発言できない子がいたら、やはり、授業の最後に感想を述べてもらいます。

これからの授業においては、グループでの話合い活動が多くなります。その際にも、全員が発言できるような工夫が必要です。挙手をした子や、積極的な子だけが発言するのでなく、順番に発言を求めるルールを盛り込みましょう。話合いの振り返りには、必ず発言できたかどうかの確認をするようにします。

7.自習をきちんとできるようにする

担任が出張だったり、休暇を取ったり、あるいは研究授業で他の教室に行ったりで、自習課題を行うときがあります。そういうときのきまりは、ただ二つ。これを徹底させます。

・席を立たない
・話をしない

また、課題が早く終わったらどうするかを決めておきます。私の場合は、次のように優先順位を付けています。

① やり残しの課題
② 自学帳
③ 読書

ドリルや課題プリントなど、提出すべきもので未提出のものがあればそれが第一優先。全部提出できていれば、自学帳に取り組みます。自学帳を1冊持たせておきます。低学年は無地の自由帳を持たせていることが多いと思います。それを「自由学習帳」として、ただ好きな絵などを描かせるのでなく、学習に関係あることを書くノートとしておくとよいでしょう。1~2ページ取り組んだら、読書をしてもよいというふうにします。

また、担任が、怪我の対応や生徒指導など、なんらかの事情で授業が始まっても教室に行けないときに、自分たちだけで自習体制ができるようにしておきます。

例えば、国語なら、新出漢字を1文字ずつ割り当てておき、その子が前に出て説明するシステムをつくっておきます。算数なら、問題集を置いておき、そこから日直が問題を出すようにします。音楽なら、音楽係が発声練習用のCDをかけて、みんなで歌うようにします。このように、教科ごとにやることを決めておくとよいでしょう。

担任がいなくても、時間になったら学習が進められるというのが理想の姿です。そのためには、担任がいる普段の日に「自習の練習」をしてみてはいかがでしょう。

例えば、1日分の自習計画を黒板に貼り出して、担任がいても指示を出さずに、1日を過ごせるかにチャレンジさせるのです。そうすれば、学級の欠点も見えてきます。そこを修正することでアップグレードが図れるはずです。

3時間目の算数の自習内容について説明する日直。

8.学級の仲間意識を育てる

「〇〇くんが、廊下を走っていました」「〇〇さんが、掃除をやっていません」というふうに言ってくる子がいます。だから、「先生が注意してください」と訴えているのでしょう。

もちろん必要な指導はしますが、その前に、「それで、あなたはどうしてあげたの?」 「先生でなく、その子に言ってあげたら?」 「その子が先生に怒られないようにしてあげてほしいな」などと答えます。

なんでも先生に言えば解決してくれる、先生が叱ってくれる、という意識を変え、自分たちでできることはないかを考えさせたいのです。クラスの仲間を先生から怒られないようにしてあげる、そんな思いやりを育てられたらいいなと思います。

私はよく、「悪口報告ではなく、先生の知らないところで行っていた『いいこと報告』をしてほしい」と言っています。お互いのよさを見付け、よいことを広め、よいクラスだなと思わせる。そして最後は、よいクラスだったなと感じながら、クラスを終わらせることができたらいいのではないかと思います。

イラスト/浅羽ピピ

『教育技術 小一小二』2022年2/3月号より

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