「探究的な学習」とは?【知っておきたい教育用語】
教育はめまぐるしい社会の変化にどう対応するかが問われています。自ら課題を設定し、主体的に判断し、よりよく問題を解決する力を身につける探究的な学習は、新しい学習指導要領の基本的な考え方に沿った学び方であり、授業をよくするための重要な視点です。
執筆/中京大学教授・久野弘幸

目次
「探究的な学習」とは
「探究」は、総合的な学習の時間の設置(1998年)によって初めて教育課程の重要な用語として示されました。それ以前にも、一部の教科で探究の語が学習過程に用いられてきましたが、今日のように教育課程の中心的な概念として用いられるようになったきっかけは、総合的な学習の時間の設置にあります。
総合的な学習の時間についての学習指導要領の解説には、探究的な学習とは、「物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営み」であり、「問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく」学びのあり方であるとあります。
探究的な学習においては、「探究の過程」(プロセス)が重要な意味を持っています。探究の過程とは、
- 日常生活や教科内容の学習を通して課題を見つける(「課題の設定」)
- 課題を追究する過程でさまざまな情報を収集する(「情報の収集」)
- その情報を整理することで精査したり、考えを交換しながら分析したりして問題の解決に取り組む(「整理・分析」)
- 取組の成果をまとめ、他者に向けて表現する(「まとめ・表現」)
といった学習活動を繰り返すことです。
ここで留意したいのは、探究の過程は、必ずしも1~4を順番どおり実施する必要はないということです。課題を設定した後、情報を集めているうちに新しい課題が生まれることは自然なことですし、成果をまとめながら改めて情報を整理し直すこともあります。
総合的な学習の時間における「探究」
総合的な学習の時間においては、設置の当初から探究的な学習の方法を基本としてきました。「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること」は、総合的な学習の時間の中心概念です。
この探究的な学習は、総合的な学習を充実させるための学習方法というだけでなく、他教科等の見方・考え方を結びつけて総合的に活用することや、実社会・実生活の課題を探究して自己の生き方を問い続けるあり方として示されています。
すなわち、「探究」は総合的な学習の時間だけで展開されるものではなく、もう一段高い地平から、各教科の探究の学習を結びつける役割を持つものであると位置づけられています。