「新・教師力」で子供から信頼される教師になる!

「主体的・対話的で深い学び」を子どもに求める上で、教師のレベルアップが必須となります。これからの教師が、新学習指導要領に則った指導をするために必要な「教師力」について、和歌山大学教育学部教職大学院特任教授 深澤英雄先生が解説していきます。

新・教師力イメージ
撮影/大庭正美

「受容力」を養う

思春期の子どもたちを受け止める

前思春期に突入する4年生の子どもたちは、自分自身で感情のコントロールが難しくなるため、教師には受容力が求められます。教師が声をかけても、「別に」「なんにもない」といったそっけない返事をする子もいます。イライラする子も多くなりますが、実は、自分でもなぜイライラするのかわからず不安なのです。教師はそうした発達段階の状況を理解し、受け止めてあげることが大事です。

子どもは相手を傷つけながら近寄ってくる

「先生の足、どうして短いの?」「先生の顔、気持ち悪いね」などと、わざと相手を傷つけるようなことを言ってくる子もいます。腹は立ちますが、こんな時こそ冷静に考えましょう。このような問いかけは、教師に構ってもらいたい気持ちがあるからです。例えば、「よし、どっちが短いか比べようか」と、足を出してみたり、「先生の顔、気持ち悪いか。そうか。申し訳ないね。整形したいけどお金がないからな」などと言ってみてはどうでしょう。上手に軽く受け流していくと、相手を傷つけない言葉で話しかけてくるようになります。大事なことは、どんな言葉も、仲よくしたい信号だと受け止めることです。

ありのままを受け入れ共感する

受容力を身に付けるには、共感することも大切です。元気のない子や泣いている子は、つらい気持ちを理解し、次のことを意識しながら、ありのままを受け入れてあげるのです。

教師はキャッチャー
イラスト/大橋明子

・「なぜ?」と理由を聞かない
・アドバイスしない
・元気出せよと励まさない

教師は、いつでもキャッチャーです。子どもが投げたボールを受け続けます。しかし、無理に投げ返さなくてよいと思います。答えが欲しいのではなく、安心して本音が言える人が欲しいのです。少し元気が出てきたら、子どもと言葉のキャッチボールが始まります。でも答えを出すのは子どもです。子どもの中にある力を信じて、見守る、支えるのが教師の役割です。

「遊ぶ力」を持つ

子どもに好かれる入り口が遊び

子どもに好かれたり、信頼してもらうための入り口の一つが遊びです。私が小学校教師になった時、先輩から一番最初に言われたことは、「授業が下手なのはわかっている。だから、子どもとつながるために、まずは休み時間に子どもと遊べ」でした。子どもに好かれなければ、どんなによい指導も入りません。逆に、子どもに好かれていれば、多少は下手な指導も入っていきます。まずは、子どもとたくさん遊んでみてください。

子どもの多面的なよさを引き出す

子どもたちとの遊びの中では、勉強中とは違ったそれぞれの子どものよさが発見できます。そういった子どもの個性を、多面的な活動を通して引き出してあげましょう。「自分は教師だ」と上から目線で子どもを見ている限り、子どもの本当の姿は見えません。時には、子どもと同じ目の高さに立ち、子どもの心にわが心を寄せ合うことによって、子どもの心に共感することができるようになります。

子どもと遊ぶ時の留意点

4年生になると、仲間どうしで遊べるようにと、教師が少し距離を置いてしまうことがあります。一歩下がりつつも、きちんと見守っていればよいのですが、ついつい子どもたちだけに任せてしまい、「からかい」が「いじめ」につながるケースも出てきます。毎日、毎時間でなくてもよいので、クラスみんなで遊ぶ日をつくったり、色々なグループの遊びにさりげなく参加して、つながりを持つことが必要です。遊ぶ中で、子どもたちの関係の変化に気付くことができます。

わけ隔てなく遊ぶ
イラスト/大橋明子

子どもと遊ぶ上で注意したいのは、「友達」のような関係になってしまうことです。友達のようなフレンドリーさは必要ですが、子どもに迎合してしまうと、後から付け込まれてしまいます。また、自分に近寄ってくる子とだけ遊ぶことも注意しましょう。教師はどの子にも平等に声をかけることが大切です。自分に近寄ってこない子には、こちらから声をかけたいものです。

「察する力」を高める

4年生は本音を言わなくなる

中学年になると、なかなか本音を話さなくなる子もいます。だからこそ、行動、しぐさ、ちょっとした言葉遣いから、子どもの気持ちを察することが、とても重要になってきます。

日記など書かせるのも、子どもを察するよい手がかりになります。察する力を付けるために最も重要なのは、「相手の気持ちを理解しようとすること」です。朝、子どもたちに「おはよう」と声をかけた時に、『挨拶への反応がいつもよりも薄い』と感じる場合があります。椅子に座った姿勢もどこか前屈みであったり、動きが鈍かったり、目に覇気がなかったりするかもしれません。もしそんな兆候が見られたら、「体調悪そうだけど大丈夫?」「何かあったら言ってね」と子どもを思いやる言葉をかけましょう。

子どもの行動をよく見て、どうすればよいのか判断しようとする思考が、相手の内面を想像することを手助けてくれます。そのためにも、普段の状態を記憶しておかなければなりません。日頃の観察との比較が大切なのです。

保護者の気持ちを察する

私が30代前半に出会った、ある先生に気付かされたことがあります。その先生に受け持ってもらった保護者はこう言いました。「A先生は、学級懇談会でこちらが恐縮するくらいものすごくうちの子をほめてくれるんです。我が子をほめてもらうのを聞いていると、親としての私もほめてもらっているような気持ちになるんです」その話を聞いて、「相手の聞きたい話をする」ことの大切さを学びました。

保護者の方は、学校での我が子の様子は誰もが気になっているはずです。クラスの友達関係や学校の勉強についていけているのか等、担任に聞きたいことはたくさんあります。A先生は、クラスの子どもの様子をいつも丁寧に観察して、記録をしていました。そして、そのことを常に学級通信に書いたり、懇談会で保護者へ伝えていたのです。

「察する力」を高めるためには、まずは「観察力」が大切です。子どもや保護者に信頼される先生は、相手の心を察しています。これができる人は、相手の話し方やその場の状況などから相手が何を考えているのか、感じているのかを感じ取ることができるので、相手に寄り添ったコミュニケーションを取ることができるのです。察するとは、子どもや保護者との内面との対話、気持ちの対話とも言えます。

答申は、「社会に開かれた教育課程」の中で「学校が社会や世界と接点を持ちつつ、多様な人々とつながりを保ちながら学ぶことができる、開かれた環境」が不可欠であるとします。保護者・地域の方とのつながりの第一歩を大事にしていきたいものです。

「笑顔力」を意識する

教師の笑顔がよい循環をつくる

教師の笑顔がよい循環を生む
イラスト/大橋明子

子どもから信頼され、よい授業をしていると思える先生の共通点は、「笑顔が素敵」です。実は、これこそが子どもたちが求めていることなのです。教師に「明るい表情」と「笑顔」があれば、子どもは授業中に間違っても、恥ずかしがることがなくなります。「この先生は間違った意見を言っても笑顔で認めてくれたぞ」とか「先生はいつも明るい表情なので、意見が言いやすいな」と感じるのです。子どものこうした気持ちは、教室中に広がり、やがて子どもたちは、間違いを恐れずに自分の意見を言い始めるようになるのです。自分の意見が認められることは、子どもたちの達成感や成就感につながり、次の学習が楽しみになるのです。

『学習指導要領2020実現のための「新・教師力20」』
見る力、疑問力、相談力、気配り力等、新学習指導要領に則った指導をするために必要な力を、一つ一つ詳細に解説した、若手教師必読の書。

深澤英雄/著 定価1400円+税 小学館

取材・文/出浦文絵

『小四教育技術』2018年7/8月号より

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