「ファシリテーター」とは?【知っておきたい教育用語】
「主体的・対話的な学び」や「協働的な学び」のために、またよりよい学校運営や良好な教職員関係の実現をめざして、ファシリテーターの重要性が指摘されています。ファシリテーターにはどのような役割や行動が求められているでしょうか。
執筆/東京学芸大学准教授・末松裕基

目次
「ファシリテーション能力」が求められる理由
これからの教師に求められる資質・能力として、使命感、責任感、教育的愛情、教科や教職に関する専門的知識、実践的指導力、総合的人間力、コミュニケーション能力に加えて、「ファシリテーション能力」が改めて強調されました(中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現〜(答申)」2021年1月)。
「ファシリテーション能力」がこのように注目される背景には、次のような指摘があります。
AIやロボティクス、ビッグデータ、IoTといった技術の急速な発展に伴い、社会の在り方そのものが「非連続的」と言えるほど劇的に変わるSociety5.0時代の到来が予想されている。学校教育もこのような社会の変化に対応し、子供たちが予測不能な未来社会を主体的に生き、社会の形成、発展に創造的に参画する力や意欲を育成することが一層求められる。これに伴い、教師に求められる役割や力も変わってゆく。
中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会「Society5.0時代に対応した教員養成を先導する教員養成フラッグシップ大学の在り方について(最終報告)」2020年1月
学校におけるファシリテーター
ファシリテート(facilitate)には、「容易にする」「楽にする」「(行動・過程などを)促進する・助長する」などの意味があります。
「ファシリテーター」は、「(物事を)容易にする人」「(グループの)まとめ役、世話人、進行係」ということになります。
学校におけるファシリテーターとしては、まず授業づくり、学級経営、スクールカウンセリングなどにおける役割が考えられます。
いずれも、子どもを対象にしたもので、例えば授業におけるファシリテーター(教師)は、知識や解決策を提示するのではなく、子どもが持つ経験値や知識、感情を尊重し、寄り添い、問いかけます。このように子どもの興味・関心や主体性を重視することによって、子ども自らが新たなアイデアや問題解決策を発見していきます。そのことが、深い学びができる環境づくりにつながります。
一方、教職員を対象としたファシリテーターの役割としては、会議や打ち合わせなどにおける実りのある運営、教師間の協働促進、学校・地域の連携づくりなどが考えられます。
この場合、ファシリテーターは、教職員の多様性を尊重し、合意形成を丁寧に行うことによって、職場の協働性や創造的な話し合いの牽引役になることです。そして、学校経営上の柔軟な発想やアイデアを生み出すこと、組織・集団の問題解決などをめざします。
そのためには、参加者一人ひとりの発言を促したり、相互交流を促進したりして、一人ひとりが当事者意識を持てるように関与することです。