SDGs 〜国際観をアップデートする〜

連載
坂本良晶の「学校ゲームチェンジ論」
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元京都府公立小学校教諭、Canvaエデュケーション アジア太平洋地域マーケティング統括マネージャー

坂本良晶

ビジネス界のマインドや手法を教師の仕事に落としこむエッジの効いた発信で多くの若手教師に支持される、”さる先生”こと坂本良晶先生の連載。今回は、国連サミットで2015年に採択された、世界平和のために目指すべき持続可能な開発目標= SDGsをもとにした、国際観のアップデートの必要性についてのお話です。

執筆/京都府公立小学校教諭・坂本良晶

SDGsは環境問題だけじゃない

連続的なゲームチェンジが起こるこれからの世界において、学校教育で育てておくべき子どもたちの観も変わってくると考えます。

ここ数年、SDGsという言葉を日常的に見聞きするようになりました。とても良い意味でトレンド化していると思います。学校教育でもSDGsの視点を取り入れたカリキュラムが組まれているところが多くあります。

SDGsとはサステイナブル(持続可能な)デベロップメント(開発)ゴールズ(目標)の略です。

学校では「環境問題」=SDGsといった大きな捉え方をする場合が多いように感じますが、実はそれは一部であり、その他多くの問題がピックアップされています。さまざまな観についてアップデートしていくことが、これからを生きる我々には求められているのです。

日仏のサッカー代表におけるコントラスト

著作権の関係でここでは画像を載せることができないのですが、もしよかったら「サッカー日本代表」と「サッカーフランス代表」で画像検索をしてみてください。

2枚の写真を見比べてみると、気づくことがたくさんあると思います。今まで何度か教材として子どもたちに見せたところ、いろんな意見が出ました。

外見的な観点で気づくこととしては、肌の色、髪の色といったことが挙げられるのではないでしょうか。フランス代表は、肌が黒い選手、白い選手、金髪の選手、黒髪の選手と、多種多様です。それに対して、日本代表はほとんどの選手が似たような肌の色、そして黒髪ですよね。

内面的な観点で言うと、フランス代表はそれぞれの民族的ルーツの多様性が高いのに対し、日本代表は多くが先祖代々日本で生まれ日本に育ったという民族的ルーツの単一性が高いことがほとんどです。

僕は海外サッカーが好きで、よくそれに関するニュース等をチェックするのですが、比較的よくあるスキャンダルに「差別的発言」が挙げられます。

EU圏では差別に対する風当たりが日本のそれとは比べものにならないレベルで強く、敏感です。肌の色や人種による差別的発言があったものなら、メディアは厳しく糾弾します。

元日本代表でドイツやイングランドで活躍した岡崎慎司選手に対し、人種差別的用語を使ったと噂されたジェイミー・バーディ選手が謝罪するというニュースを見た時、日本との感覚の違いを強く感じました。ちなみに岡崎選手とバーディ選手はチーム内において極めて良好な関係で、伝説となったプレミアリーグ制覇の原動力となるなど、お互いを信頼したプレーからもそれは見て取れました。

「国際観」を育てる

クレヨン
写真AC

さて、日本の子どもたちの「国際観」はどうでしょうか。

今はなくなりつつ、正確にいうと無くそうとされている言葉に、「肌色」があります。僕が子どもの頃は「肌色のクレヨン」と呼ばれていたものは、現在では「うすだいだいのクレヨン」と変更されています。

しかし、令和を生きる子どもたちも、やはり「肌色」と多くの場合呼んでいるのではないでしょうか。ここに潜むマジョリティ主義は、言い換えると、マイノリティに対するリスペクトの欠如であり、差別問題というリスクが潜在的に潜んでいることの表れだといえます。

子どもたちの中に「肌の色はこうだ」という指標があり、そこからの乖離が大きい時に、「からかい」という行為に及ぶことは珍しくありません。

しかし、一定の年齢に達し、他国の人と交流する際に、子どものころと同じ行動をとってしまったら、取り返しのつかないことになります。「知らなかった」では許されない常識が、すでに海外には存在しています。

こういったタブーというものは、意図的に、こちらから子どもたちへ教えることが大切だと感じます。

事実、ガンバ大阪のパトリック選手に対しTwitterで黒人差別的発信をした高校生が所属する学校が謝罪をするといったトラブルも過去に起きています。その際の学校のコメントに「さまざまな機会を通じてあらゆる差別は絶対にあってはいけないものだと教育して参りましたが(以下略)」とありましたが、その指導の解像度は極めて低かったのではないでしょうか。

「肌の色で差別することは絶対にあってはいけない」と、具体性をもってして教育する必要があると考えます。

米国では2020年以降、黒人差別問題を巡り大規模なデモが発生している様子がニュースでよく流れました。こういったニュースを題材にして、大人は子どもたちへ語りかけ、子どもが考え、観をアップデートしていく。これは、これからの未来を生きる子どもたちにとって、絶対的に必要なことなのです。

次回は、「SDGs 目標5 ジェンダー平等を実現しよう」について、子どもたちに伝えるべき性別観とその具体的指導などを考えていきたいと思います。


坂本良晶 先生
坂本良晶 先生

1983年生まれ。京都府公立小学校教諭。前職では大手回転寿司チェーンで店長として全国売り上げ1位を記録するという異色の経歴をもつ教師。「教育の生産性を上げ、子どもも教師もハッピーに。」を合い言葉に日々発信するTwitter「さる@小学校教師」のフォロワー17000人以上。近著『これからの教育を面白くする! さる先生の学校ゲームチェンジ』(学陽書房)、他に『全部やろうはバカやろう』(学陽書房)、『MISSION DRIVEN』(主婦と生活社)などがある。

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