国語の教材分析③ ~教師と教材との出合い~
Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 今回は、分析の観点を使って教材を読み深めていく過程での大事なポイントについてお伝えします。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
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目次
教材との出合い
子供と同じように、教師にとっても教材との出合いは大切です。
教材を読んでいるとき、読み終わったあとはどのような気持ちになったか、どんな言葉が心に残ったかを意識的に教師の思考に残しておくことで、授業づくりの一助となります。
「通読」→「精読」
題名分析を行ったあと、「通読」を行います。
通読
「通読」とは、一般的には、文章あるいは作品の全体をはじめから終わりまで、ひととおり読み通すことですが、教育用語としては、教材文と出合う最初の段階の読みの活動のことです。子供の活動としてのみ行うのではなく、教師も行うことをおすすめします。
通読においては、
- 全文を読むこと
- 分からない言葉を調べ、理解すること
- 主題や全体の出来事の大体を捉えること
の3つを行います。
主題については、浅く捉えている状態で構いません。
例えば、『スーホの白い馬』(光村図書2年)を読んだあと、みなさんはどのような感想をもつでしょうか。私は、「悲しいお話だな」や「スーホと白馬の絆はとても深く強いのだな」という感想をもちました。主題として、「人と動物の心の通い合い」というテーマを一旦、思考の内に留めておきます。
精読
次は、「精読」を行います。
「精読」とは、一般的には、表現の細部にまで注意し、よく意味を考えてくわしく読むことですが、ここでは、再読をして、読み深める活動のことを表します。
精読において、
- 主題を探求すること
- 出来事を読み解き、人物の変容や主題と関連づけて読むこと
- 表現の効果を読むこと
を行います。
通読で抱いた感想や、主題などを確かめるために、分析の観点をもとに読み深めていきます。
おすすめしたい観点は、次の5つです。
- 設定(時・場所・人物)
- 冒頭・事件・山場・結末
- 人物の変容
- 主題
- 文章構成(作品構造)
精読を終えた後、児童は「
教師は、この学習過程を充実させるために、授業づくりの中で単元の言語活動を練り上げます。
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分析の観点その2「設定」
次に 「設定」をもとに、読み深めていきます。 前回紹介した【分析の観点「題名」】に続く2つ目の【分析の観点】です。
設定には、「時・場所・人物」の3つの要素があります。
光村図書6年『海の命』
物語の時・場所・人物に着目しながら、精読を行います。
『海の命』(光村図書6年)を例に考えてみましょう。
「設定」は、物語の冒頭に書いてあることが多いです。設定を読み取るときには、冒頭を丁寧に読むようにしましょう。
時
「時」は、1日の中の時間帯から天候、季節、時代に至るまで、多くの意味を内包します。物語全体が、いつの話かを考え、時を大きく捉えましょう。
『海の命』では、「太一の幼少期から、太一が死ぬまで」という時の設定になります。
つまり、この物語は、太一の人生を表した物語ということになります。
場所
「場所」は、物語の舞台となります。登場人物による細かな移動はあるものの、大きく捉えます。
『海の命』では、一文目にある「父もその父も、その先ずっと顔も知らない父親たちが住んでいた海」となります。
「海に住む」という表現が特徴的であることや、祖先がずっと住んでいた海での物語ということから、太一の生き方や運命、背負うものなどを考えるきっかけとなるでしょう。
人物
「人物」は、人物の役割を意識して読むと、読みが深まります。
- 中心人物……物語の中でもっとも大きく変容する人物
- 対人物……中心人物の変容に大きく関わる人物
- その他の人物(脇役)
登場する人物の中で、どの人物がもっとも変容するかを考えながら読みましょう。
『海の命』では、太一が中心人物となります。対人物は、太一の人生に大きく関わっている人物と考えると、「父」「与吉じいさ」がそれに当たります。
「母」は対人物でしょうか。脇役でしょうか。教師の中に湧き上がった疑問は、児童にも湧き上がる疑問かもしれません。また、この疑問が、主体的に読むきっかけにもなり得ます。人物の役割を意識しながら、問いをもって物語を読んでいくことが大切です。
次回は、分析の観点その3「冒頭・事件・山場・結末」についてお伝えします。
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樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。
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