小6国語「海の命」指導アイデア

教材名:「海の命」 光村図書

指導事項:C読むこと エ、オ
言語活動:イ

執筆/千葉大学教育学部附属小学校教諭・青木大和
編集委員/文部科学省教科調査官・菊池英慈 千葉大学教育学部附属小学校副校長・大木圭

単元で付けたい資質・能力

①身に付けたい資質・能力

登場人物の相互関係や心情、場面についての描写を捉え、人物の生き方について自分の考えをまとめることができる力を育むことを目指します。「海の命」は主人公「太一」が村一の漁師になるまでの成長が描かれています。

それぞれの場面において「太一」の成長に関わる「父」、「与吉じいさ」、「母」の言葉や生き方が描かれ、その影響を受けながら、「太一」が海やそこにすむ魚、人間の存在を深く見つめ、自分の生き方を決めていく物語です。

②言語活動とその特徴

本単元で取り組む言語活動は、立松和平「いのちシリーズ」を基に学級短編文集を作るという活動です。「いのちシリーズ」で自分が捉えた「命」や「自然」、あるいは「生きる」ということが自分たちの生活の場面のどこで感じられたのかを文集としてまとめていきます。

6年生の後期となり、人生の一つの節目を迎えようとしている彼らに、6年後期の学習として、この教材を扱う意味を子供に考えさせることから始めていきます。「命」という言葉、「生きる」という言葉を改めて見つめ直すことができる教材です。

子供には、学校や普段の生活の中に溢れている「命」や「生きている」ということを再認識できる場所や体験を探すように促しましょう。そして、主教材である「海の命」では、どのように捉えているのかを読み取っていき、自分事にさせていきます。

大事なことは、その「命」や「生きる」ということの実感の先に見えてきたものが何かを読み取ることです。「海の命」の場合では、「自然の偉大さ」につながってきます。

単元の展開(6時間扱い)

主な学習活動

第一次(1・2時)

①学習の見通しをもつ。
・「○○の命 短編文集を作ろう」という学習課題を設定し、学習計画を立てる。

②「海の命」を読む
・他の「いのちシリーズ」を紹介し、読書をする
→アイデア1

【学習課題】「○○の命 短編文集」を作ろう

第二次(3・4時)

③④「海の命」の人物相関図を作る
・太一を中心とした人物相関図を作り、太一の成長に関わった人物やその言葉を書き出していく。
→アイデア2
・太一の物語前半と後半の変化について捉えていく。

第三次(5・6時)

⑤⑥短編文集を作る。
・自分が感じた「命」について、文集にまとめる。
→アイデア3

アイデア1 「いのちシリーズ」の読書をする

立松和平の「いのちシリーズ」では、テーマの違う「命」を扱った作品が出版されています(ポプラ社刊)。

立松和平「いのちシリーズ」

山のいのち」…長く学校を休んでいた少年が、山奥で祖父と二人で暮らすことになる物語
川のいのち…小学校最後の夏休みを川で何かを成し遂げる計画を立て、集まった少年たちの物語
街のいのち…母の死で心を閉ざしてしまった少女の成長を描いた物語
田んぼのいのち」…農家の老夫婦が自然と向き合いながら、稲作への想いを描いた物語
牧場のいのち…代々受け継がれてきた星野牧場。一家で牛の世話をしながら「命」について考える物語
木のいのち…街の真ん中にある一本のけやきの木。少女の人生とけやきとの関わりを描いた物語

これらをシリーズ本にすることで、海だと「命」を実感できない子供でも、自分事として「命」について考えたり、類似した体験を想起したりすることができるはずです。

また、「命」を多面的に捉えることができ、自分が捉える「命」について考えるのに役立つことでしょう。

アイデア2 「海の命」の人物相関図を作る

「海の命」は、主人公「太一」が「父」「与吉じいさ」「母」の3人と関わり合うことで成長していく物語です。

そのため、太一とそれぞれの登場人物が、どのように関わり合っているのかを相関図にして表すことで、物語全体や太一の成長を読み取ることができるようになります。

▼「海の命」人物相関図〈例〉

「海の命」人物相関図〈例〉

それぞれの矢印にどのような言葉が入り、その理由となる叙述やセリフを考えさせましょう。また、最後のクエに挑む場面で、今までの太一の考え方の変容に気付かせると、物語を深く読み取ることができます。

アイデア3 自分が感じた「命」について短編文集にまとめる

イラスト/畠山きょうこ

『教育技術 小五小六』2020年3月号より

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