国語の教材分析① ~教材分析で大切にしたいこと~

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大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 今回は、国語の教材分析において大切にしたいことについてのお話です。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

国語の教材分析① ~教材分析に大切なこと~
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国語の教材分析の難しさ

私が冬休み中に、SNSで国語についての質問を募集したところ、いちばん多かったのが、「教材分析のしかたを教えてほしい」という内容でした。

これまでも、職場や研究授業の講師として訪れた学校、セミナー等で直接相談を受けてきました。多くの先生方が、国語の教材分析の難しさを感じられているのだと思います。

その中で最も多い困りごとは、「分析の仕方も、正解も分からない」というものでした。

この困りごとに対して、私は次のようにお答えしています。

「分析のものさしは先生によって違います。そして、分析後の解釈は、人の数だけあります。正解を探そうとすると、国語の授業づくりは楽しめません」

何もかもが分からなかったのは、当然私も通ってきた道です。今でも分からないことはたくさんあります。しかし、多くの教材を分析すればするほど、少しずつ知識は増えていき、いつの間にか分からないことや難しいことも楽しく感じるようになってきました。

どうしてそのように感じ方が変わったのかをお話しします。

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住田先生との出会い

私が教材分析の面白さを感じられるようになったのは、8年前に、大阪教育大学教授の住田勝先生にお会いして、毎月いっしょに分析をさせていただくようになったことが大きく影響しています。

住田先生に出会うまでの私は、何が分からないかも分からず、勉強不足な自分を恥じて、どこかごまかして授業をしていました。指導書を読んだり、先行実践を探ることで精いっぱいでした。

住田先生と行う学習会では、ひと月に1回、いつも8名ほどの教員が参加し、持ち寄った教材を分析します。

特徴は、自分が担任していない学年の教材分析もすること、そして複数で行うことです。

この二つが、私の国語授業づくりの視点を大きく変えました。

初めての学習会

初めて参加した日のことを今でも覚えています。私が行う研究授業の単元を、いっしょに分析してもらいました。そこには、同じ国語部のベテランの先生、少し年上の先輩先生が参加されており、次のような会話が交わされました。

住田先生「ああ~『くちばし』かあ。〇〇先生、去年やってましたよね?」

ベテラン先生「やりました。板書ありますよ。あのとき、――だったんですよね」

先輩先生「樋口さん、板書見せてもらったらいいよ。事例の比較がとても分かりやすい板書だったよ」

住田先生「あの教材は、――という構造になっている教材なんですよ。次の説明文と比較すると……」

私はあっけにとられながらも、交わされる会話を少しでも記憶しようと一生懸命にメモをとることで必死でした。

この学習会では、何度も同じ教材を取り扱います。

新しく入った私には初耳なことも、元々参加されている先生は何度も分析した教材になります。

しかし、「前にやったから、もうしない」という選択肢はありません。

それは、分析する度に、新たな発見があるからです。

また、初めて聞く私にとっても、先行実践を直接伺い、さらに視点を変えた研究授業を行うチャンスとなります。

初めての学習会で、私はこれまでの教材分析、ベテラン先生の授業実践とリフレクション、新たな視点を取り入れた教材分析について聞くことができました。

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学習会の積み重ねで起きた変化

この学習会に参加するようになって3年ほど経ったとき、あることに気づきました。

それは、

  • どの学年の教材も、全部読んだことがある
  • 国語用語を使いこなせるようになっている

ということです。

初めはちんぷんかんぷんで、何が分からないのかも分からなかった私ですが、先輩先生はよく、

「分からないことがあったら、聞いたほうがいいよ。私はたくさん聞いたから」

と言ってくれて、知らなかった言葉をたくさん知ることができました。

それが国語用語です。

住田先生は、教材を分析するための難しい言葉を、たくさん使います。しかし、それは、定義のある汎用的な言葉です。一度理解して、自分自身も使えるようになると、学習会で交わされる会話の内容を速く理解できるようになりました。

効果は、これだけではありませんでした。

次々に分析する教材を、つなげて考えられるようになったのです。

「設定が似ている」「構造が同じ」など、比較したり、系統性を考えたりしながら教材を読んでいるのです。

また、授業の中でも用語を使うようになりました。みんなで共通理解した言葉は子どもたちにとっても使いやすく、国語の授業の中での発言が活発になりました。そして、新たな学びに対する知的好奇心が旺盛になり、国語の授業を楽しみにしてくれる子も増えていきました。

思い返せば、初めて参加した学習会で聞いたあの会話の中にも、教材同士を比較したり、つなげたりする言葉や国語用語がたくさんありました。学習会でいつもそのようにされていたことで、いつの間にか私の中でも「当たり前のこと」となっていったのでしょう。

学習会から学んだこと

住田先生の学習会から感じたことは、次の二つです。

  • 複数で教材分析をすることの良さ
  • 比較できる知識をもつことの大切さ

人数が増えると、いろいろな見方や感じ方があることに気づき、分からないことを共有したり、感じ方の違いを確かめ合うことができます。

私は現在、勤務校で、1年生から6年生の各学年の先生方と、国語の教材分析会を放課後に開いています。

時間は40分程度、延長はなしという約束で、複数人で1つの教材を分析します。

私が中心になって分析しながら、分からないことを共有したり、過去の実践について話したりして、全員で授業づくりについても話し合います。

その中で重要になってくるのが、「分析の観点」です。これは国語用語でもあります。数多くの観点がある中、どの観点で分析するかによっても授業づくりは変わってきます。

次回は、「分析の観点」についてお伝えします。

樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。

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