「ルーブリック」とは?【知っておきたい教育用語】

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学習成果の発表や報告など、いわゆるパフォーマンス課題における学習活動の評価をどんな方法で行っていますか。児童生徒の達成度を評価するのに役立つツールとして、「ルーブリック」が注目されています。

執筆/東京学芸大学准教授・梶井芳明

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ルーブリックが求められる背景

近年、児童生徒が主体となって能動的に学習することを促す「アクティブ・ラーニング」に役立つ学習指導・評価が模索されています。

アクティブ・ラーニングは、体験学習や発見学習、問題解決学習、調査学習における対話や共同などを通して、知識・技能の一層の定着を図ること(確かな学び、深い学びの実現)が目的です。その目的を果たすためには、思考力・判断力・表現力、さらには主体的に学習に取り組む態度を指導し、評価することが求められています。

そこで、思考力・判断力・表現力や主体的に学習に取り組む態度を評価する方法の1つとして、「ルーブリック」が注目されています。

ルーブリックとは

アクティブ・ラーニングは、実技などのパフォーマンス課題の実践を指します。そこで必要となる思考力・判断力・表現力や主体的に学習に取り組む態度を評価の対象とする際には、学習成果のみならず学習過程を重視しなければなりません。

ルーブリックとは、パフォーマンス課題における学習の到達度を評価する際に使用する評価指標のことです。この評価指標は、学習活動を通して児童生徒に育成したい資質・能力について「評価観点」を設定し、それぞれの評価観点に対応する学習の到達度として「評価基準」を定めて表を作成し、児童生徒の学びの姿を文章で表現していきます。

プレゼンテーションに関わるルーブリック評価表について具体的に考えてみます。

「評価観点」として、例えば、〈一番伝えたい内容は何かがはっきりしていた。〉〈図表や写真の配置や枚数が適切だった。〉〈自分らしさが出ていた。〉〈資料が吟味され、発表者がその資料について熟知していた。〉〈結論が明確に伝わるような話の流れ(ストーリー)になっていた。〉といった内容を設定し、表の縦軸にします。

さらに、「評価観点」の内容それぞれについて、数段階の学習到達度を文章で表現し、表の横軸にします。これが、「評価基準」に当たります。例えば5段階の場合、〈一番伝えたい内容は何かがはっきりしていた。〉の「評価観点」(縦軸)の「評価基準」(横軸)として、〈5:一番伝えたい内容が明瞭であり、発表者の意図も理解できる。〉〈4:一番伝えたい内容が明瞭に理解できる。〉〈3:一番伝えたい内容が理解できる。〉〈2:伝えたい内容が曖昧である。〉〈1: 何を伝えたいのか理解できない。〉といった到達度を設定します。

形成的評価としてのルーブリック

ルーブリックは、学習評価場面において使用されます。しかしその多くは、学習単元後の児童生徒の姿、学習成果を想定した、いわゆる単元を貫くルーブリックでした。

これに対し、児童生徒の学習成果のみならず、成果に至る学習過程を丁寧に評価する「形成的評価」についての実践研究が盛んに行われるようになってきました。形成的評価とは、単に成績の結果を評価するものではありません。児童生徒がどのような態度で授業に参加し、学習の目的を達成しているかを評価するものです。

例えば、現行の学習指導要領の重点の1つである「探究的な学習」においては、子ども主体の形成的評価を実現させるために、あらかじめ教師がルーブリックに示した評価観点と評価基準を、「調べ学習についての見通しをもつ」「調べ学習に取り組む」「調べ学習の成果をまとめる」「調べ学習の成果を発表する」のような、いくつかの学習過程のそれぞれに対応させる必要があります。すなわち、学習に「見通しをもつ」「取り組む」、学習の成果を「まとめる」「発表する」といった過程ごとに、子どもたちに目的意識や方法意識、成果意識をもたせることが、形成的評価にとっては必要不可欠となるのです。

ルーブリックの作成ポイント

ルーブリックを作成する際のポイントは、まず初めに学習単元後の児童生徒の学習成果を想定することです。単元の終わりに、児童生徒がどのように成長していることを期待するのか、その成長の姿を学習課題に即して具体的に想像し、それを教師のみならず児童生徒にとっても理解できる言葉で表現することが重要になります。

次に、学習単元後の成長した児童生徒に、どのような資質・能力が育っていることを期待しているかについて、教師と児童生徒が共通理解できるように、言葉で表現することです。つまり、学習活動を通して児童生徒に育成したい資質・能力を「評価観点」として設定し、それぞれの評価観点に対応する学習の到達度を「評価基準」といった児童生徒の学びの姿として文章で表現することがポイントとなります。

アクティブ・ラーニングを実現させるためには、教師と児童生徒が、共通理解を図りながら取り組むことが大切ですから、ルーブリックはそれを評価するツールとして適しています。

なお、アクティブ・ラーニングの学習指導・評価における資質・能力の取り扱いについては、東京学芸大学附属小学校、中学校などで行われた、「主体的・対話的で深い学び」の授業の実践例をビデオ収録して配信している「21CoDOMoS」が参考になります。

最後に、学習過程を踏まえた形成的評価を行うためのルーブリックを作成するにあたっては、単元を通して育成したい資質・能力を明らかにした上で、育成したい資質・能力を学習過程ごとに見直し、評価観点と評価規準を再設定する必要があります。

そして、学習過程を踏まえた形成的評価に取り組む際には、先に示した、「調べ学習についての見通しをもつ」「調べ学習に取り組む」「調べ学習の成果をまとめる」「調べ学習の成果を発表する」といった学習展開ごとに重点を置く評価観点の到達度を、できる限り具体的な学習活動例を示しながら明記することが大切となります。

参考文献
梶井芳明「誰のための学習指導・評価か?」(羽野ゆつ子・倉盛美穂子・梶井芳明編著『あなたと創る教育心理学:新しい教育課題にどう応えるか』)ナカニシヤ出版、2017年
梶井芳明「『総合的な学習の時間』における『探究的な学習』の授業づくりとその評価について」(関口貴裕・岸学・杉森伸吉編著『学校教育ではぐくむ 資質・能力を評価する』)図書文化、2019年
鄭谷心「『総合的な学習の時間』におけるパフォーマンス評価の活用」(関口貴裕・岸学・杉森伸吉編著『学校教育ではぐくむ 資質・能力を評価する』)図書文化、2019年
東京学芸大学次世代教育研究推進機構(ウェブサイト)「21世紀のコンピテンシー育成のためのオンライン動画サービス(21st century Competency Development Online Moving-image Service: 21CoDOMoS )」2018年

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