小5外国語:「思考力・判断力・表現力」を育むための手立てとは?

連載
英語授業Q&A特集:教科書編集委員が指導法やポイントを解説!

神奈川県公立小学校教諭

長沼久美子

小学校外国語科検定教科書の編集委員でもある神奈川県公立小学校の長沼久美子先生による好評連載! ここでは、外国語の授業で子どもの「思考・判断・表現」の力を育むために、教師ができる手立てについて教えていただきました。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・長沼久美子

小5外国語:「思考力・判断力・表現力」を育むための手立てとは?
Pixabay

Q1「ふるさとメニューを注文しよう」では、思考力・判断力・表現力を育むために、どのような手立てを取るとよいのでしょうか。

(東京書籍『New Horizon Elementary5』P. 59)

A.注文のやり取りが進まない状況になったとき、再びやり取りが進むように、状況に応じた言葉がけをしましょう。

メニューを注文する活動では、一問一答の会話を暗記しただけでは対応できない状況が生じます。その場面が、思考・判断を促すチャンスです。

例えば、お店屋さん役は、買い物の活動中に、

どんな注文が来るかな?

複数個の注文が来たら、○○って答えよう。

などのやり取りを想定します。

外国から来た先生役も、

何を注文しようかな。

○○と○○を注文したいから○○って言おう。

値段は多分○○だから、こんなやりとりのなるかな。

などと考えます。

しかし、双方の思惑がずれるため、暗記しただけでは、対応ができなくなるのです。

会話が止まってしまい、やり取りが進まない状況になった時こそ、思考・判断を促す支援が求められます。

注文したいものは、なあに?
○○って伝えたらよいのでは?
どこまでやりとりできた?
次は○○をすればよいよね。

など、一人ひとりの困り感を見取り、状況に応じた言葉がけをしてみてください。

子どもが、買い物のやり取りをつなげられたとき、思考・判断がなされているのです。

複雑なやり取りをしている子どもたちがいた場合は、全体に紹介することも重要な支援です。

こんなやり取りもできるんだ。

と、他の子どもに良い刺激となるからです。

教師として見取りやすいという理由から、会話が広がらないようにメニューの数や種類を限定するのでは、暗記したやりとりになりがちです。

広げたままのその中で生まれるやり取りを経験できるようにすれば、思考・判断の場を保障することになり、結果として思考力・判断力・表現力を育むことになるのです。

外国語学習における「思考・判断・表現」について、こちらの記事でも解説しています! → 小5外国語:「思考・判断・表現」の見取り方を教科書編集委員が解説

Q2「あなたのオリジナルメニューを考え、書いてみよう」の活動で、思考力・判断力・表現力を育むためには、どのような手立てを取るとよいのでしょうか。

(教育出版『ONE WORLD Smiles5』P.86)

A.誰をターゲットにした、どんなお店にしたいのかを考えて、メニューを作るように声をかけてみましょう。

オリジナルメニューを考える活動では、アルファベットで文字を書いたり、絵を描いたりします。大人が考えつかないようなメニューを考える子もいることでしょう。例えば、

「ミートソースパスタ、ショートケーキ、ミルク、バナナの大喜びランチセット」

「かつ丼、カレーライス、ラーメン、コーラの満腹定食」

など、子どもの独創性が発揮されます。大人としては、そんな組み合わせある? と驚くものありますが、子どもたちにとっては、いろいろと工夫できるので、とても楽しい活動になります。

誰をターゲットにするのか、どんな時に注文してもらえそうかを考えながら値段を決めて、準備を進めます。

その際、メニューを英語で考えたり、それをどうやって文字に書くのか考えたりするなど、思考・判断が繰り返されます。文字の大きさや単語と単語の間、そもそもその文字で合っているのか考えながら書くときも、思考・判断が求められます。

そこで、子どもが活動している時に机間を回りながら、手が止まり思考が止まっている子がいないかよく見取るようにしましょう。

どうしたいの?
何に困っている?
わからないところある?

などの声かけをしたり、

メニューは、英語ではどう読むの?
おすすめポイントを英語で言うとどんなところ?

など、尋ねてみたりしながら、思考・判断を促すことができるように指導にあたってください。

外国語学習における「思考・判断・表現」について、こちらの記事でも解説しています! → 小5外国語:「思考力・判断力・表現力」の育み方を教科書編集委員が解説

Q3 「先生にインタビューをして分かったことを伝える」という活動では、思考力・判断力・表現力を育むために、どのような手立てを取るとよいのでしょうか。

(三省堂『CROWN.Jr5』P.72・73)

A.既習事項を振り返る時間を設けたり、それらを想起するような働きかけをしたりしながら、子どもの思考・判断を促してみましょう。

子どもは、先生に質問できるとなって、とてもやる気を出します。いつも一緒に過ごしている先生に「何かを聞く」ということは、なかなかない機会だからです。

そんな子どもの”やる気”を起点に、「どの先生に質問するか」「どんなことを聞くか」などを決めていきます。その過程で、

どんな英語表現を使おうかな?

と考え、質問メモを作っていきます。思考・表現です。

この活動に活かせる英語表現が、これまでの学習からどのくらい子どもに身についているかによって、手立てが変わります。

既に様々な英語表現が使える子どもには、活動を見守りつつ、

What are you talking about?

など、問いかけながら状況を把握していきます。

しかし、英語表現を知っているというレベルの戸惑っている子どもに対しては、質問を作り出せるような支援が必要です。

例えば、

どんなことを聞いてみたいの?

と、尋ねながら子どもの思いをくみ取ります。そして、

○○の時に勉強した○○の言い方を使ったらいいんじゃないかな?

と、アドバイスを送ってみてください。その時、今までの学習を書き留めているノートなどがあれば、それを見るように支援することも重要です。

この活動は、暗記した内容のやり取りになりがちな面もあります。しかし、それでは思考・表現にはなりません。試行錯誤を繰り返しながら、子ども自身の力で、質問内容が決められるようにしましょう。自分で決めることで、必然的に思考・判断が繰り返されることになるからです。

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長沼久美子先生プロフィールイラスト

長沼久美子
神奈川県公立小学校教諭。小学校英語教科書CROWN Jr. 編集委員。
(イラスト/本山浩子)

イラスト/横井智美

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