オンライン学習の疲労度調査でわかったこと【教育ニュース】
先生だったら知っておきたい様々な教育ニュースのことを、東京新聞の元教育担当記者・中澤佳子さんが解説します。今回のテーマはオンライン学習の疲労度についてです。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子
目次
オンライン学習の疲労度は、低学年のほうが高学年より高い傾向
新型コロナウイルス問題は、教育に変革を促しました。オンライン学習の活用もその一つ。ただ、子供の心身への影響を見逃してはなりません。
感染拡大に伴う臨時休校中、パソコンやタブレット端末、スマートフォンなどを使って勉強した小学生の疲労度が、ゲームやテレビなど娯楽での利用時よりも高いことが、群馬大学の共同研究グループの調査で分かりました。
調査は5月、全国の小学生の保護者1300人に実施。多くの学校が休校になった4月20~25日について、子供の過ごし方や心身の状況を尋ねました。
期間中の学習の主流はプリントや問題集でしたが、学校・塾などのオンライン指導や、学習動画の自主的な視聴も半数近くに。テレビを含めてメディアの利用が増えた子は、8割強に上ります。
調査では「めまい」「肩こり」など10症状の疲労度を合計し、「高」から「なし」まで4段階に分類。オンライン学習や、ゲーム・動画などの娯楽利用を「メディア接触」として、接触時間や目的ごとに分析しました。
時間が長いほど疲労度は高い傾向ですが、これは予想できることでしょう。興味深いのは、時間の長さは同じでも、利用目的で疲労度が違うことです。
例えば、メディア接触が4時間を超える子で疲労度「高」の割合を見ると、娯楽だけで3時間以上は7%なのに対し、オンライン学習で3時間以上だと20%に跳ね上がります。疲労度「中」を加えても、娯楽のみ3時間以上は23%ですが、オンライン学習は33%でした。
教員が子供の疲労度を把握しにくいオンライン学習
場所にとらわれない遠隔教育は、離島や僻地、療養中などさまざまな状況の子の学びを保障する意味でも重みを増している一方で、必要な機器の整備状況は地域によってまちまち。家庭の経済状況で格差が生じる恐れもはらんでいます。
今回の調査でも、子供が家で使えるネット機器を複数回答で尋ねると、スマホ(62.2%)、タブレット(50.3%)、ゲーム機(49.5%)が挙がりましたが、「ない」という子も8.6%いました。現在、国は「1人1台端末環境」の実現をめざしており、経団連も今年3月にコロナ禍と絡めて、機器配備やネット環境の整備などを提言。どの子供も遠隔教育やICT教育が受けられる環境にすることは、世の流れになりつつあります。
ただ、研究グループは今回の結果から、画面の光刺激や過剰な情報が心身の疲れを招くだけでなく、オンライン学習は集中力がより必要な一方、教員が子供の疲労度合いを把握しにくいなどの課題を指摘しました。低学年は高学年より疲労度が高い傾向もあるとして、「オンライン学習の機会は増えると予想されるが、疲労に関しても注意する必要もある」と警告しました。
ICT教育の環境を整えようというなら、発達段階に応じた利用についても併せて考える必要がありそうです。
『教育技術』2020年9月号より