小5理科「台風と気象情報」指導アイデア
執筆/大阪府公立小学校指導教諭・小髙大輔
編集委員/文部科学省教科調査官・鳴川哲也、大阪府公立小学校校長・細川克寿
目次
単元のねらい
台風の動きに着目して、それと天気の変化とを関係付けて、天気の変化の仕方を調べる活動を通してそれらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に予想や仮説を基に、解決の方法を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。

単元の流れ
(二次 総時数 4時間)
一次 台風の動きと天気の変化(2時間)
【活動アイディア例】
① 台風の動きと天気の変化について調べよう。
二次 台風による災害や災害に対する備え(2時間)
① 台風の風や雨による災害について調べよう。
風で物が飛ばされて、物を壊すことがあるんだね。
短い時間で、たくさんの雨が降るんだったね。
風で木や電柱が倒れることがあるんだね。
台風の雨で、洪水や土砂崩れが起きているよ。
子供は、台風について、これまでに台風の通過を経験したり、ニュースで見聞きしたりして知っています。そのため、台風について調べたいとはなりにくいものです。そこで、台風についてよく知らないことを自覚させることで、台風について調べたいと思えるようにし、一次の台風の動きと天気の変化について調べる活動や、二次の台風による災害や災害に対する備えについて調べる活動へとつなげていきます。
② 台風による災害に対する備えについて考えよう。
風で飛びそうな物は、家の中に入れておくといいね。
ハザードマップで、洪水の危険性のある場所を確認しよう。
気象情報を見て、台風の動きに気を付けよう。
土砂崩れが起きそうな場所もあるから、早めの避難が大事だね。
台風の動きを時間の経過に沿って調べることで、カーブして南から北に動いたり、ゆっくり動いたり、速く動いたり、東から西に動いたりと天気の変化の規則性が、台風の動きには当てはまらないことが見えてきます。また、台風の動きや台風の雲の広がりと、雨の降る様子や風の吹く様子を結び付けながら調べ、台風の動きと天気の変化とを関係付けて考えることが大切です。
単元の終わりに期待される振り返り

学校が、休みになるかな?


家の周りに、飛びそうな物はないね。台風の動きは不規則だから、気象情報で台風の動きを確認しよう。
<子供の振り返り例>
台風が近づくと、風が強いから学校が休みになると思っていたけれど、台風は風だけでなく、短時間に多くの雨を降らすこともあるから、気を付けないといけないんだね。また、台風の動きは不規則だから、気象情報で台風の動きを確かめて、台風が近づいてきたら、風で物が飛ばされないようにしたり、洪水や土砂崩れに備えて避難の準備をしたりするなど、台風による災害に備えないといけないね。
活動アイディア
資質・能力の育成を目指して!
子供の生活と台風を結び付けて授業を行うことで、気象情報で台風の動きを確認し、台風に備えようとする子供を育成しよう。
授業の展開例
一次(1・2時) ①台風の動きと天気の変化について調べよう
自然事象への関わり

台風のニュース映像です。
△号だから、今年△個目の台風です。
△個目だけど、まだ台風は来ていないよ。
日本から遠いけれど、日本に来るのかな?
台風が来たら、風や雨で学校が休みになるかな?
問題
台風はどのように動き、台風の動きによって、天気はどのように変わるのだろうか。
予想
日本に来るから、真っすぐ北に動くと思うよ。
でも、天気は西から東に変化したよ。
前に来た台風は、カーブしながら日本に来たよ。
雲が分厚いから、雨がたくさん降りそうだね。
風は遠くまで届くから、台風が遠くても強くなるかな?
解決方法の立案
同じ場所の天気の変化を調べると、台風の動きとの関係がわかりそうだね。
△個目の台風だから、複数の台風について調べるといいね。
雲画像やアメダスの風情報、降雨レーダー画像を見比べると、台風の動きと天気の変化とを調べられそうだね。
解決方法を立案する
天気調べをしたときのことを思い出させ、方法を考えられるようにする。また、台風の動きと天気の変化を調べるために、同じ時間の台風の位置と雨や風の様子を比べることや、同じ場所の天気が変化する様子を調べることなど、調べる視点をもてるようにする。
台風調べ
台風の動く速さが、変わっているよ。
どの台風も、同じような動き方をしているよ。
台風から遠い場所でも、風が強くなりだしているね。
台風が近づいて来ると、風も雨も強くなっているね。
ICTを活用し、台風の動きと天気の変化を関係付ける
雲画像を動画で見ることで、台風の動きは見えても、天気の変化は見られません。そこで、複数のタブレットで、雲画像、アメダスの風情報、降雨レーダー画像を同時に見ることで、台風の動きと天気の変化とを結び付けるようにします。
〈台風情報を調べるためのHP〉
・NHK for school
・気象庁ホームページ
・国立情報学研究所デジタル台風
自然災害と関連を図るためのポイント!
台風による自然災害を扱う際には、被害の様子の写真や映像を取り上げることが多くありますが、子供によっては、その写真や映像に強いショックを受けることがあるため十分な配慮をする必要があります。中には実際に見てみたいと考える子供もいます。自然はコントロールできず、安易な行動は危険であることを確認し、台風の接近による天気の変化が自然災害を発生させることから、台風の動きを気象情報で確認し、むやみに外に出たり川や海に近づいたりせずに、適切に対応できるようにすることが大切です。
また、台風の風の強さや雨の降る量は数値で表すことが多いです。例えば、熱帯低気圧のうち最大風速17m/s 以上のものを台風といいますが、風速17 m /s と言われても実感をもちにくいでしょう。そこで、風速17m/s は、時速約60㎞で走る車の速さで、この風の中では風に向かって歩けなくなり、傘をさすこともできないなど、子供が実感をもちやすい数値に置き替えたり、気象庁のリーフレット「雨と風」を参考にして、人への影響など身の回りで起きる現象で表したりして、実感をもてるようにすることが大切です。
イラスト/高橋正輝、横井智美
『教育技術 小五小六』2019年7/8月号より