どの子も輝く!自治的なクラスのつくり方
クラスの子供たちが自分で考えて学び合い、学級の問題を解決し、「私はなにもしていないんですよ」と言えるのは教師の夢。でもそれは、そういう教師がかっこいいからですか? 「自治的学級」の魅力の本質と、その育て方について解説します。
執筆/新潟大学教育学部附属長岡小学校・畠山明大

目次
ホームラン狙いは失敗のもと
まずは、次の場面をご自身に置き換えてお読みください。
上司:○○先生、来週の全校朝会、予定では縦割り班での活動になっています。当日の進行と、何か活動を考えてください。活動は先生にお任せします。
あなた:承知しました。何か考えておきます。
全校朝会終了。後日…
上司:この前の朝会。もうちょっと子供に進行の練習をさせるべきでしたね。活動も指示が分かりづらくて、ルールを理解していない低学年もいたよね。
あなた:……
もしも、あなたがこのような経験をしたら、「やってよかった」と思えるでしょうか。そして、次にまた全校朝会をすることを知ったときに、自ら「次も私がやりましょうか?」と言えるでしょうか? むしろ「もうやりたくない」とさえ、思ってしまわないでしょうか。
続いて、次のような場面はいかがでしょうか。
職員会議で…
同僚A:今年度の運動会は、昨年の反省を受けて、終了時間を早めたいのですが。
あなた:それでは、全校種目の綱引きをなくしてはどうでしょう?
同僚B:賛成です。全校種目は、大玉送りもありますし、子供の体力面も考慮したほうがよいのではないでしょうか。
同僚C:ちょっと待ってください。綱引きはこの学校に古くから続く伝統種目です。勝手になくされては困ります!
あなたは前年度の反省を改善しようと発言しました。決して悪気なく、よかれと思っての発言です。ですが、少し強い口調で反対されたら、どう感じるでしょうか? もしかしたら、「これからは、職員会議で発言するのをやめておこうかな」と思ってしまわないでしょうか?
実は、ここに「自治的集団づくり」のカギがあります。それが…
「達成感」と「貢献感」
です。任されたはずなのに、指導を受ける。せっかく努力したのに、「ダメ」と言われる。これこそが、「自治的集団づくり」を阻害する最大の原因です。「当たり前」「そんなことは分かっている」と感じた方もご注意ください。頭では理解していても、実際には同じような思いを子供たちにさせてしまっていることがよくあります。
- 忙しい4月をスムーズにスタートさせるために先生の都合で決めた朝の会・帰りの会
- 朝会での整列指示と代表委員会への出席が主な仕事の学級委員
- トラブルが起きないように、あれやこれやと先生が口を出すお楽しみ会
- 前年度踏襲と先生の下請け仕事がメインの委員会活動
- 毎日やる内容が指定される自主学習
こうした数々の取り組みを、誰からも感謝されず、「当たり前」と言わんばかりに取り組ませていたらどうなるでしょう。こういった日々の何気ないことで、やってよかったという「達成感」と誰かの役に立ったという「貢献感」を一人ひとりから奪っていくのです。
もしも、あなたが学級を自治的集団にしたいと考えているとしたら、日々の一つひとつの取り組みこそ、子供たちに「達成感」と「貢献感」を与えられているか、顧みる必要があります。
野球に例えるならば、コツコツとバットにボールを当てる練習を積み重ねるのです。「おっ、何だか打てるようになってきた」「ぼくのボールトスで〇〇さんも上手になったな」「次はホームランを打ってみたい」と思わせるのです。
運動会で力のある子が応援団になったのに、先生の指示を待つばかり。音楽会で実行委員を決めたのに自分たちで練習を進めない。それは、日々の取り組みが自治的ではないからです。つまり、
いきなりホームランは打てない
のです。大きな行事は学級が自治的集団になるきっかけでありチャンスではありますが、そうなるためには、日々の積み重ね以外にありません。決してこの視点を忘れてはなりません。
まずは学級診断を
これまで申し上げた通り、大きな行事を活用したからと言って、突然子供たちが自分たちで考え、自分たちで行動するということはまずありません。誤解を恐れずに言えば、「今から慌てて自治的集団を目指しても遅い」と言うほかありません。そして、まずはご自身の学級を診断してください。
あなたのクラスは? 自治的集団チェック
□実行委員や代表を決める際、活動によって立候補する顔ぶれが変わる。
□誰かが失敗したときに責める・からかう言葉が出ない。
□少人数での話合いで、誰もが同じ量程度話せる。

クラスの子供たちに、自ら動きだそうというエネルギーがあるでしょうか? 子供が「挑戦したい!」「立候補しようかな」と思うためには、学級に「安心」という土台が必要です。土台なしに自治的集団を目指しても、間違いなくうまくいきません。