小6外国語:メモは日本語でもいい?その疑問に教科書編集委員が答えます
メモは英語で取らせるべき? 聞き取れない子どものためにはすぐに日本語で訳してあげた方がいいの…? 教科書だけではわからないかもしれない指導のポイントについて、小学校外国語科検定教科書の編集委員でもある神奈川県公立小学校の長沼久美子先生に教えていただきます。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・長沼久美子
目次
Q1 自己紹介で聞いたことのメモは、日本語でもいいのでしょうか。英語でメモを取るのは難しいように思います。
(光村図書『Here we go!6』P.24)
A. 日本語でメモをとって全く問題ありません。もちろん、メモがなくてもいい。ねらいは、英語を聞き取ることです。英語でメモすることではありません。
音声を聞いてメモを取るためには、次のようないくつものステップを踏む必要があります。
音声を聞く → 理解する → メモしたいことを選ぶ → 文字を書く
英語を聞き取ることに慣れていない段階では、日本語でメモを取ることも難しいかもしれません。
さて、このアクティビティは、世界の小学生が話す自己紹介の聞き取りがねらいです。
自己紹介では、“I’m good at~.”や“I’m from~.”などのフレーズが使われますが、これはUnit1から学習をしてきている表現。この学習場面で再び登場するので、
得意なことを言うだろうな。
出身地も言うだろうな。
と、推測しながら聞いている子どもの姿を期待したいところです。
重要なのは、このアクティビティは、一言一句を逃さずに聞き取ることではなく、相手の自己紹介から必要と思うこと(得意なことや出身地など)が聞き取れていればよいということです。メモは、日本語でも英語でもどちらでもいいのです。
最後に、英語を書くことについて一言。
6年の5月頃は、見本を見ながら書くことが目標とされています。聞いて分かったことを英語で書くのは、超高度なことです。無理に要求しないのが一番と思います。
Q2 世界の子どもたちの学校生活について聞こえた順に番号を書くアクティビティで、音を聞き取れない子どもには、日本語に訳すなどの支援は必要ですか?
(東京書籍『New HORIZON Elementary6』P.14・15)
A 指導を工夫します。日本語訳は読みあげる必要はありません。
このアクティビティでは、短い話を聞いて、その概要を捉えること、概要について話し合うことが目的とされています。
例えば、聞いたことについて話し合っていくうちに、最初は○○の話、次に□□の話と、徐々に理解が深まっていくイメージ。なので、細かく日本語で訳す必要はありません。
また、先生が日本語で訳してくれると分かった瞬間、子どもは英語を聞いたり分かろうとしたりすることをやめてしまいます。
どうせ先生が日本語で教えてくれるから、英語を聞かなくてもいいや。
と、英語を聞く必要性を失ってしまうからです。その点からも注意が必要と思います。
さて、日本語に訳さない代わりとして、内容を理解するための支援について紹介します。
例えば、教科書の写真を見ながら、
どんな話だろうね。
と予想してから聞くことがお勧めです。また、
聞き取れた英語はあったかな? どんな話だった?
と、内容について尋ねながら、繰り返し聞くなども有効です。
子どもによって、聞き取ったことが異なります。対話を通して、その共有が図られていくと、内容の理解が進んで概要をつかむことができるため、教師が英語を訳す必要はなくなります。
友達の聞き取ったことを知ることで、聞き方が自分と違うと気付く子どももいるので、友達が聞いていたことを共有する学習は、とても価値があります。
Q3 「Enjoy Reading」の英文は、〈読んでみよう〉と書かれています。いきなり子どもが英語を声に出して読むのですか?
(三省堂『CROWN Jr6』P.31)
A いきなり読むのは無謀です。段階を踏んで「読む」ための指導をしていきましょう。
アクティビティでは、イラストとともに、5文(20語)が提示されています。
はじめは、イラストを見て、どんなことが書かれているか想像してもらいましょう。次に教師がイラストを示しながら内容が分かるように範読します。最後に、音声を聞きながら目で文字を追います(指でなぞりながらするのも効果的)。
もし、文字を目で追いながら声に出せるフレーズがあれば、どんどん声を出してみるように声をかけてみてください。
音楽の授業で、新しく習う歌を指導する時と似ています。譜面横のイラストを見て、どんな歌かなぁと想像する。範唱を聞き、譜面を目で追って、歌えるところを一緒に歌ってみる。
新しく習う曲が、段階を踏んで指導することで徐々に歌えるように、英語を読むことも同じステップを踏むと、読めるようになっていきます。
少しずつ読めるようになってきたら、交代読み等を取り入れて、音読を楽しむ場面をつくってみるのもお勧めです。
ところで、前のページでは、MとNの音をサウンドチャンツで学習します。これには意味があります。今回のアクティビティでは、20語の中に、MとNの音から始まる語が5つ含まれているのですが、サウンドチャンツで扱った発音が活用できるようになっているのです。子どもに気付いてほしいポイントです。その気付きも含めて、英語を声に出して読んでいけると、英語を楽しむ幅が広がると思います。
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長沼久美子
神奈川県公立小学校教諭。小学校英語教科書CROWN Jr. 編集委員。
(イラスト/本山浩子)
イラスト/横井智美