小6外国語:キーワードゲームのねらいって?教科書編集委員が解説します
いよいよ本格的に始まった小学校での外国語。授業を通して、子どもたちが楽しく学ぶ姿にたくさん出会いたいですね。ことばへの気付きや外国語の習得を生み出していくアクティビティーについて、教科書だけではわからないかもしれないポイントを、小学校外国語科検定教科書の編集委員でもある神奈川県公立小学校の長沼久美子先生に教えていただきます。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・長沼久美子
目次
Q.見開き2ページにパノラマの絵。美味しそうな食事がテーブルに並んでいて、登場する人物がみんなで楽しそうに話しています。でも、このパノラマの絵を使って、どのように授業を進めればいいのでしょうか。
A.パノラマの絵に登場する人物になりきって、その単元で扱いたいフレーズを紹介してみましょう。
三省堂『CROWN.Jr 6』、16・17ページは、レッスン1、「We are from India.」の導入場面です。見開きいっぱいにパノラマの絵がありますが、特に指示がありません。何をすればいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。
このパノラマの絵は、登場する人物の会話を通して、その単元で扱いたいフレーズにアクセスすることを狙っています。
「We are from India.」では、新たな仲間と出会いの中で、自分のことを紹介するときに使う英語表現に目を向けていくことがねらいです。
例えば、パノラマの絵の登場人物になりきって、
Hi. I’m Tanya. Nice to meet to you. I‘m from India.
と、会話の様子を紹介しましょう。クラスの子どもが少しずつ状況を理解してきたら、
How about you?
と問いかけて、会話に巻き込んでみてください。もし、
I’m from Japan.
と、状況に合わせて対応できた子どもがいたら、その子どもと先生の間で、少し会話をつなげてみましょう。
このやりとりを通して、自然と、自分のことを紹介する場面で使う英語表現に注目できるようになります。
どんな会話をしたらよいか想像できないときは、音声CDに入っていますのでまず聞いてみましょう。
Q.キーワードゲームが、競争のようになって騒々しくなってしまいます。どのような工夫が必要ですか?
A.アクティビティのねらいは、子どもたちに音を聞いてもらうことです。にぎやかになっていても、音を聞いている時に子どもが耳をそばだてていればOKです。
光村図書『Here We Go! 6年』の19ページに、キーワードゲームが紹介されています。キーワードゲームは、聞いてほしい単語を、ゲームを通して自然と何回も耳にしていく中で、自然にインプットしてしまうことをねらっています。
例えば、まずは、2~3人組になって「『dolphin』が聴こえたら消しゴムをとる」と、ルールを共有します。先生が、
Cat, dog, rabbit,‥‥dolphin.
と合図を出したとき、「dolphin」に反応して先に消しゴムとったほうの勝ち!となります。だんだん慣れてきたら、単語数を増やしたり、似たような音を混ぜたりしてみてください。
Cat, dog, rabbit, sheep, elephant…dolphin.
盛り上がりながらもきちんと聞くことにつながります。
しかし、これでは一つのことばを覚えるだけの活動になってしまうでしょう。少しルールを工夫してみることもできます。
例えば、自己紹介で好きな生き物を伝えるときに使えることばとして学習したいときは、ことばのグループを意識できるように、「生き物ではないことばが聞こえたら手を挙げる」等のルールをつくってみることもできます。
Cat, dog, rabbit, sheep, elephant, panda, pencil.
子どもたちは、新たに耳をそばだてて、生き物なのかどうか、音を聞き分ける楽しさを体感しながら、言葉を自然に耳にしていくことになります。
Q.頻度を表す言葉(always, usually, sometimes)は難しいと思うのですが、扱う必要がありますか?
A.微妙な表現を可能にしてくれる言葉として、知っておくと便利です。
開隆堂『Junior Sunshine 6』の9ページ「Let’s listen」では、always, usually, sometimesが紹介されています。これらは、頻度を表す言葉です。
例えば、自分の一日を紹介する時、頻度を表す言葉を知っていると、微妙な表現が可能になります。
9時に寝ると言いたいけれど、毎日9時に寝ているわけではないし、9時に寝ると言ってしまってよいのだろうか? いつもは9時に寝るけど、遅い日もあるかなぁ。
といった場合に、頻度を表す言葉が、適切な表現を可能にしてくれます。この場合は、usuallyがぴったり!
また、頻度を使って発表する子どもが増えてくると、頻度を表す言葉に注目して聞く子どもが増えてくるので、意味のある言語活動になります。
例えば、お皿を洗っている絵とともに wash the dishes のフレーズが紹介されています。毎日お手伝いでやっている子ども、時々やっている子ども、程度は人それぞれでしょう。それをクラスで話し合ってみると、学校で毎日顔を合わせている仲間との微妙な違いが分かってきます。
それが、「もっと聞いてみたい」といった思いにつながれば、大きな意味をもってくることでしょう。
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長沼久美子
神奈川県公立小学校教諭。小学校英語教科書CROWN Jr. 編集委員。
(イラスト/本山浩子)
イラスト/横井智美