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生徒指導って何?【生徒指導のお悩み解決~楽しく豊かで安心・安全な学級風土を子供たち自らがつくる~】①

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「生徒指導」の重要性は分かるけれど、どうしてよいかよく分からないという先生方が多いと聞きます。新年度からの学級経営に欠かせない生徒指導について、前文部科学省視学官、帝京大学教授の安部恭子先生に【生徒指導のお悩み解決~楽しく豊かで安心・安全な学級風土を子供たち自らがつくる~】を3回シリーズでご執筆いただきました。第1回の今回は、「生徒指導って何?」です。ぜひ、4月からの学級経営のヒントにしてください。

執筆/前文部科学省視学官
帝京大学教育学部教授・安部恭子

「生徒指導」の本質を知ろう

新年度や新学期、先生方は子供たちとの出会いや生活を楽しみにされていると思います。学習指導だけでなく、生徒指導もしっかり行って、子供をちゃんと指導しなくては、と思っている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、「生徒指導は大切だと思うけれど、どうやっていいかよく分からない」「子供たちが多様で指導がうまくいかない」などのお悩みをお聞きすることがあります。

皆さんが大切だという生徒指導ですが、そもそも「生徒指導」って何でしょうか? 生徒指導のイメージや学生時代を含めたこれまでの経験を先生方や学生に聞いてみると、「問題を起こした人が別室で指導を受ける」「生徒指導主任の先生が毎月朝会などで今月の生活目標について話をする」「頭髪や持ち物の検査をされて、校則を守れていないと注意される」などのように、「問題行動を起こした人への対応」「ルールを守れていないときに厳しく指導すること」といった認識が見られました。

では、「生徒指導がうまくいかない」とはどのようなことでしょうか。「教師がいくら注意したり指示したりしても子供たちはそれを聞かずに勝手なことをしている。授業に集中して取り組まないなど、教師の指示が通らない」「子供同士のけんかやトラブルが多く、学級としての規律が乱れている」「互いを尊重せず、人間関係がうまくつくられていない」などが考えられるでしょう。こうした状況になってしまうのは子供に原因があるのでしょうか。教師の指導や学級経営は関係ないのでしょうか

例えば、「学級における規律」を考えたとき、「教師に管理されて規律が守られている学級」と、「子供たちの『自律』によって『規律』が守られている学級」のどちらが望ましいでしょうか。だからと言って、「できていない人の名前を先生に報告する」など、子供が子供を管理するようなことは望ましくありません。

学級にはいろいろな特性をもった子供や、支援が必要な子供など、多様な子供が在籍しています。どの子も自分のよさを発揮できて、周りの友達から大切にされていると実感できるような学級生活を、子供たち自身がつくっていくことがとても大切です。

「生徒指導提要」(令和4年 文部科学省)では、「生徒指導とは、児童生徒が、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことである。なお、生徒指導上の課題に対応するために、必要に応じて指導や援助を行う。」と定義されています。

つまり、生徒指導は、子供たちを教師が取り締まったり、ルールを守らないと注意したりするといった狭いものではなく、「社会的な自己実現(自分らしい生き方の実現)」に向けて子供たちを支える働きです。

これまでも、問題行動を起こした一部の子供への対応だけが生徒指導ではなく、未然防止や早期発見が大切であると言われてきました。さらに、多様な子供が在籍している現代だからこそ、全ての子供を対象とした日常的な生徒指導である「発達支持的生徒指導」が大切です。

互いの個性や多様性を尊重し合い、子供たちが自ら楽しく豊かな学級生活をつくり、安心して過ごせる居心地のよい学級風土をつくることが求められています。その中核的な実践の場が特別活動です。その具体的な実践や手立てについては次回に紹介します。

こんなことはありませんか?

自分ばっかりイラスト

・「○○しない」といった学級のルールを決めていて、守れない場合にはペナルティーが与えられる。

「守れていないのは私だけじゃないのに、私ばかり注意される」「△さんだってちゃんとやっていなかったのにずるい。今度から自分も守れていない子を注意しよう」など、子供たちの関係性がギスギスしてしまいます。また、「注意されるのが嫌だから、やらない」となり、そもそも何のためのルールなのか、分からなくなり、自己指導能力が育ちません。

解決のヒント

例えば、何かの約束を決めるときに、なぜその約束が必要なのかを共通理解することが大切です。「○○しない」というルールをつくって、できていない人を互いに注意したり非難したりすると、よりよい人間関係はつくれず、学級の雰囲気は温かいものとは程遠いものになるでしょう。そこで、「○○しよう」など、子供たちが自ら行動したり、一人一人の望ましい行動を促したりする「プラスの表現」にするとよいでしょう。そして、「自分は何をどのように頑張るか」を具体的に意思決定して取り組むこと、一人一人がその約束を意識して過ごすことにより、みんなが安全・安心に過ごすことができ、楽しく豊かな学級生活づくりにつながります。

・呼名の仕方が子供によって(無意識に)違っている(名字をさん付け、ちゃん付け、下の名前、ニックネームなど)。

「○○さんのことはニックネームで呼んでいる。私は名字なのに……」などの思いを子供が抱き、信頼関係が構築されません

解決のヒント

細かいことですが、とても大切なことです。学校のスタンダードで男女とも「○○さん」と呼んでいるから大丈夫、という先生もいらっしゃるでしょう。でも、日頃からそばに来てよく話をする子や、よく気が付いて進んで手伝ってくれる子などに対して、気付かないうちに「〇〇ちゃん」など親しい言い方をしてしまうときがあるかもしれません。思い返してみると、私もそうしたことがありました。子供たちは先生の言動だけでなく、表情、声のトーンなど、本当によく見ています
どの子も「先生は自分のことをよく見てくれている」「自分は大切にされている」と感じることができるようにするために、呼名や対応に留意し、笑顔で子供と接しましょう。

・指示したことをすぐにやらなかったり、教師の言うことを聞かなかったりする子供に対して、よくなってほしいという思いで注意をするが、かえって反抗的な態度をとられてしまう。

なぜ注意されるのかが分からなければ、その子にしてみれば、「なんで自分ばっかり注意されるのか」と思ってしまうでしょう。「どうせ先生は自分のことをまた怒るんだ」という感情になっているかもしれません。

解決のヒント

どの子も「認めてほしい、褒めてほしい」と思っています。問題行動が見られたときに「見えている姿」だけで判断し「叱ってしまう」と、子供の心は離れていってしまいます。なぜそうしたのか、どういう気持ちだったのかなど、その子の思いに寄り添うことが大切です。
子供によって頑張りの度合いや成長の見える度合いは違います。少しの伸びや成長を見逃さず、たくさん褒めてあげましょう。生徒指導の基本は児童生徒理解です。そして、先生がその子ばかり注意してしまうと、周りの子供も「あの子はいつも先生に注意されている子」という認識をもってしまいます。どの子も活躍できる、よさが発揮できるような、場や機会の充実を図るとともに、子供たちの関わり合いを大切にして、互いのよさや頑張りを知ったり、「あの子、こんなところがあったんだ」など、新たな面を知ったりすることができるようにしましょう。

・責任感をもたせたいから日直は1人。

日直は責任感をもたせるためにあるのでしょうか? 学級の当番活動の1つとして、協力し合って仕事に取り組み、学級のみんなが生活しやすくするためにあるものです。

解決のヒント

日直などの学級内の組織をつくることはとても大切ですが、何のためにあるのかを考えてみましょう。給食や掃除などの当番活動は、学級内で公平に分担し、週ごとなどで役割を交代し、友達と協力して取り組むことで学級生活がスムーズに運営できるために行うものです。日直は毎日交代して行うと思いますが、「責任感を育むために1人で行わせる」ことが大切でしょうか。仕事内容が多くなり負担に感じたり、1人でみんなの前に立つことなどに不安を感じたり、もう1人の日直の友達に手伝ってもらうなど協力して行うことの大切さ・よさを実感する機会を逃してしまうことも考えられます。

・係を決めたが、所属が1人の係がある。

係活動は学級生活をみんなで豊かで楽しいものにするために行うものです。1人の係は趣味の世界になってしまいがちです。

解決のヒント

係活動は学級活動(1)の内容ですから、発意・発想を生かし、同じ係の友達と協力し合って活動し、学級みんなが過ごしやすいようにすることが大切です。
学級会で係を決めるとき、どのようにしていますか? 
「前のクラスはどんな係があったの?」と聞いただけでは、中学年以上になっても黒板係など当番的な係が多くなってしまいがちです。学級生活の充実・向上のために係をつくるのですから、子供たちの経験が少なければ、教師が例を挙げたり他の学級や学年を子供たちがリサーチしたりするのもよいでしょう。そうしてみんなで決めた係なのですから、例えば、「希望者がいないからこの係はつくらないことにする」のではなく、「学級生活に必要だから係として決めた」ことを子供たちに助言し、「みんなで話し合って決めたことを、みんなで実践すること」が大切だということを確認しましょう。また、1人の係では、協力し合って活動することのよさや大切さを子供たちが経験できませんから、「1人の係をつくらないことにする」ことについても教師が助言したり、可能であれば話し合う前に指導しておいたりするとよいでしょう。係活動の実践を通して、豊かで楽しい学級生活を子供たちがつくっていけるようにしましょう。

年度初めに考えたい学級経営と生徒指導

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