計算はアナザーゴールで意欲向上【ぬまっち流】
高学年になったら、自ら学ぶ子どもになって欲しいと期待しますが、子どもは興味がないことはやりたがりません。子どもたちが学ぶようになる仕掛け「アナザーゴール」を編み出した「ぬまっち」こと沼田晶弘先生に、計算トレーニング方法を教えてもらいました。
目次
面白そうな別ミッションとルールを与える
子どもたちがやる気にならないのは、面白そうではないから。逆に、面白そうだなと思うと自然にやる気になります。そこで編み出した仕掛けが「アナザーゴール」です。本来の目的とは違うように見えても、まずは子どもたちが面白そうだなと思うような「別のミッション」を与えるのです。
そのミッションには、できるだけ明確で達成しやすいゴール設定をすることがポイント。さらにミッションをクリアするために「守らなければならない条件」を与えると子どもはワクワクします。
サッカーゲームのノリで計算トレーニング
このアナザーゴールの一つが、「計算トレーニング=計トレ」。これは、縦9列、横9列のマスを描いたプリントを使った、百ます計算ならぬ「81ます計算」です。まず僕が縦と横の端のマスに入れる数字を黒板に書きます。スタートの合図で子どもたちは81のマスを掛け算で埋めていきます。
計トレの制限時間は1分21秒。1つ間違うとマイナス20秒のペナルティ。1分以内に全問正解できたら、「神」と呼ばれ、「U-1」と書かれたカードをもらえます。しかし、次の計トレで1分21秒以上かかったり、計算ミスをするとカードは失効。こうした制限をつけると、子どもたちのやる気に火がつきます。
目標達成に向けて夢中で取り組むようになる
この計トレは、そもそもは二年生の担任のときに、九九を覚えさせるために考えたものですが、高学年でもみんな喜んで取り組みます。少しでもタイムを縮めようと、時間があれば計トレに取り組み、自宅に帰ってからも自主特訓するようになりました。これには保護者もびっくりです。計算が嫌いな子も、ゲーム感覚なので夢中になるのです。
さらに高学年でやると、計算が早くなるだけでなく、計算ミスが激減しました。この計トレでスピードを上げるためには、目と手と思考が別の動きをしなければなりません。答えを書きながら次の数字を見るという、立派な脳トレだったのです!
最初はカードが欲しくて計トレしている子も、途中から自分のタイムが縮まるほうがうれしくなります。そして目標が達成できないと悔しくて、また一生懸命取り組みます。勉強しているだけだと気が付いても、楽しいのでやめません。
つまり、いつの間にか「自ら進んで学ぶ」という、本来の目的を達成しているのです。子どものやる気を引き出すために必要なのは、「楽しさ」なのです。
「子どもを動かすためには、子どもは何をしたいのか、何を求めているのかを知ることが大事!」
取材・文/出浦文絵
沼田晶弘:1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学付属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
『小五教育技術』2018年6月号より