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現実世界の中で、数学的な見方・考え方を顕在化させていく【「高校につながる英・数・国」の授業づくり #59】

連載
全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり
現実世界の中で、数学的な見方・考え方を顕在化させていく【「高校につながる英・数・国」の授業づくり #59】バナー

前回から、2025年夏の日本算数・数学教育学会の石川県大会で、石川県の中学校教諭として、ただ1人実践研究発表を行った、金沢市立紫錦台中学校の三浦彩教諭に授業実践の実例やその背景となる教育観、子供観などについて伺っていきます。 今回は、前回紹介したような授業づくりの背景となる三浦教諭の子供観や教育観などを中心に、話をしていただきます。 

石川県金沢市立紫錦台中学校
三浦彩 教諭
石川県金沢市立紫錦台中学校
三浦彩 教諭

問い続けられる力を育むことも重要

まず「なぜ数学の教師を志したのか」と水を向けると、三浦教諭は自身の子供時代から教育観や子供観までつなげて、次のように話します。 

「私が数学の教師になったのは数学が好きだったからです。小学校時代の算数からずっと好きだったのですが、何よりも論理的な思考のプロセスを自分自身で書き出していって、最後に答えまで行き着くその過程が大好きでした。論理が明快だというのが数学を好きな理由であり、私が数学の教員になった理由です。 

今の中学生の中には、『身近なところで数学が使えない』という認識をもつ生徒は少なくありません。日々の授業の中では、数学的な見方・考え方を働かせてほしいからこそ、解説に示されている数学的活動の図のように、現実の世界と数学の世界を往還しながら進めていくような単元の学習も行います。 

そのとき、現実の問題を理想化、単純化して数学に落とし込み、問題解決を図る際には一定の誤差が生じるのですが、子供たちは『だから正確じゃない』『現実と違う』『四則計算くらいしか使えない』と思うようです。ある程度の誤差の範囲で的確に起こり得る結果を予測できていたとしても、現実とイコールではないから使えないというわけです。それはPISA調査などの結果における、日本の子供たちは『数学を日常に使えない』とか『学習を生かしきれない』という指摘にも表れています。そこをどう乗り越えていくのかということが重要だと思います。 

数学は、現実の社会生活では多様な場面で使われているのですが、子供たちは使っているということに気付けていません。それは、そのときに使われている数学的な見方・考え方が曖昧になっていたり、言語化されていなかったりするため、使っていても子供たち自身が気付いていないという問題があるのだと思います。 

ですから、現実世界の中で働かせている数学的な見方・考え方を顕在化させ、価値付けていくことが重要だと感じています。言語化できず、使っていても気付いていないことに対して、『今の視点(が数学的な見方)だよね』『今の考え方(が数学的な考え方)だよね』と言語化し、顕在化させていく。そのような授業を意識して行いたいと考えています。 

またこれからの社会を考えたら、問い続けられる力を育むことも重要だと思います。例えば、数学なら『これはこう計算すればこうなるでしょ』と答えを出して終わりにしてしまい、自分で問いを問い続けることを止めてしまう子供もいます。情報がどんどん大量に入ってくる時代なので、『少し調べたら分かることだから、それで終わり』という意識があるのでしょう。 

しかし、情報があふれ、正解のない時代だからこそ、『これ本当?』『他の解決方法は?』と常に問い続けられる人を育てていきたいと思っています。私は数学を通して、その練習をしていきたいのです。日常生活の中には多様な難しい課題はありますが、それを数学の中で抽象化し、たくさん練習をして、数学的な見方・考え方を働かせながら課題を解決する力を身に付けていってほしいと思っています」 

三浦彩教諭の授業の様子

見方・考え方に焦点を当ててICTを活用する

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