強い・でかい・かっこいい! 昆虫界の暴君、カマキリ様との出会いは冬から!
前回の記事で虫たちの冬の過ごし方をご紹介しましたが、中でも卵で冬を越す代表選手であるカマキリは、この寒い時期であれば何の抵抗もされずに捕まえられ、観察のための環境を作るのも比較的簡単です。皆さんも子どもたちと一緒に、春に孵化するまでを見守ってみませんか? カマキリたちの魅力もたくさんご紹介していきたいと思います。
【連載】モンタ先生の自然はともだち #32
執筆/森田弘文
目次
1. 昆虫界の暴君、カマキリのご紹介

カマキリはカマのような形をした特徴的な前足を使い、バッタ・チョウ・ガ・ハエ・蚊などは言うに及ばず、カエルやトカゲ、さらに小鳥なども捕えて、強靭なアゴでバリバリと食べてしまいます。しかも頭からかぶりつき、真っ先に相手の抵抗力を奪ってしまいます。羽を広げ、カマをもたげて威嚇する姿は捕食者の荒々しさに満ちており、まさに暴君の名にふさわしい肉食昆虫と言えます。
カマキリの身体能力は卓越しており、その目は立体で世界を捕えられるため、獲物との距離を正確に認識することができ、素晴らしい瞬発力で一瞬のうちに獲物を仕留めます。さらに驚くべきことに、天敵であるコウモリが放つ超音波を聞き取り、逃れることもできるそうです。
カマキリって、どんな種類がいるの?
・ オオカマキリ

日本全国に分布する、最も大きなカマキリです。成虫の大きさは8cmから9.5cm。南に行くほど成虫が大きくなる傾向があり、九州地方では10cmを超える大型の個体も珍しくありません。明るい太陽の下で活動するのが好きで、草地や河原や草の上など、日当たりのよいところを好みます。体の色は鮮やかな緑色の個体、枯れ草に紛れるような褐色の個体の両方が見られます。一番の特徴は後羽で、広げると濃い紫色をしています。
・ カマキリ(チョウセンカマキリ)

たんに「カマキリ」と呼ぶ場合、この種をさします。広く朝鮮半島から日本に分布しているためか、チョウセンカマキリという名前もついていますが、日本在来種です。成虫は7~8㎝です。体色は同じく緑型と褐色型があります。オオカマキリとよく似ており、見分けるのが難しいです。写真のように前足(カマ)の付け根の部分が、鮮やかなオレンジ色をしているのが一つの目印です。これに対してオオカマキリは、ここの部分が黄色です。また、威嚇など羽を広げてみせたときにも見分ける方法があります。オオカマキリの後羽には濃い紫色の部分がありますが、チョウセンカマキリは透明な後羽をしています。草地や河原、公園など人の生活圏でもよく見られます。
・ ハラビロカマキリ

名前の通りに、お腹が太く、ずんぐりと短い体形で、大きさは5~6㎝と中型のカマキリです。体色は緑であることがほとんどで、ごくまれに褐色のものもいます。高いところを好み、木の上や背の高い草花に止まっている姿がよく見られます。いちばんの特徴は前羽のサイドに白い点があることです。上の写真でも確認できますね。また、後述するハリガネムシにいちばん好まれる種でもあります。
・ コカマキリ

名前の通り大きさは4~6cmと小さく、すばしっこい動きをします。また、好戦的ではなく、危険を察すると死んだふりをしたり、逃げたりします。
前足(カマ)の内側に黒地に白い模様をもっています。体色はだいたい褐色で、緑色の個体はあまりいません。都市部でも空き地や公園など、身近な所で見つけることができます。
2. カマキリの卵を観察してみよう

カマキリは秋になると、「卵のう」という、硬めのスポンジのような固まりを木の枝などに産み付けます。中には200個ほどの卵が入っており、1匹のメスはこうした卵のうを数カ所で産みます。
これはメスにとって命と引き換えにするほどの大事業(実際に、産卵後すぐに死んでしまいます)で、その莫大なエネルギーを補給するため、メスは交尾中にオスを共食いすることがあります。
ちなみに、メスがオスを共食いした場合、しなかったときよりも産む卵の量が倍程度に増えるそうです。オスにとってみれば、メスに食べられることによって自分の遺伝子を残す確率が増えるほうがいいのか、少しだけ生きながらえるほうがいいのか、複雑なところかも知れませんね。

秋に産み落とされた卵は卵のうの中で越冬し、4月下旬以降、気温が20度ほどになった春の日に、何の前触れもなく一斉に孵化します。1つの卵のうの中には200個ほどの卵が入っており、小さなカマキリの姿をした幼虫がワラワラと這い出してくるのです。それは大変におもしろくも生命の神秘を感じさせる景色で、ぜひとも子どもたちに見せ経験させてあげたいものです。
そこで筆者は、カマキリの卵のうを見つけると、毎年、「ワクワク観察実験」を行うことにしています。

まず、写真のようなボトルに卵のうを入れます。枝を短く切って入れましょう。
空気穴の開いたフタをして、中の幼虫が這い出してこないようにしてください。ボトルに対応したフタがない場合は、フタの口をガーゼなどの布で覆って輪ゴムで止めたり、ラップをかけて爪楊枝で空気穴を明けてもいいですね。
春、暖かい時期になるまでは生まれませんので、北側の廊下など外気と同じ温度になるところで保管してください。
暖房のきく教室内に置いておくと、卵が勘違いして冬に羽化してしまい、全滅することになりかねませんので、注意してくださいね。
採集日時・場所などを記録しておくことも大切。毎年継続して実験し、データを残しておいて自由研究などに発展させると楽しいことでしょう。
「カマキリ卵のう観察コーナー」として、多くの子どもたちに見てもらうだけにとどまらず、筆者は、コーナーの横に、紙・鉛筆・メモ用紙・小箱を用意し、「オオカマキリの赤ちゃんはいつ生まれるかな? 誕生日を当てよう!」という投票コーナーも設置しました。カマキリが孵化する日を予想するだけの単純なことですが、子どもたちの興味関心が高まり、たくさんの子が毎日卵を見に来るようになり、楽しい学習へと発展させることができます。なお、応募した子どもは100人を超え、2人の子が見事にピタリ賞を取ることができました。

3. 卵のうと成虫の総合けんさく
カマキリは日本に10種程いますが、そのうちの代表的でよく見かける4種について、種名がすぐに分かるようなけんさく表を作成しました。卵のうと成虫の総合けんさく表です。ぜひ、ご活用ください。ただ、生物は個体差があります。数値などは一般的なものであることをご承知ください。

4. カマキリの豆知識クイズ
【第1問】
カマキリはバッタの仲間。○か×か?
【答】
答は×。体の色などはバッタに似ていますが、まったく違う種類の昆虫で、カマキリはカマキリ目(もく)で、バッタは直翅目(バッタ目)で、チョウとハチの違いと同じくらい離れた存在です。なお、カマキリは肉食ですが、バッタは草食。足もバッタは飛びはねるためですが、カマキリの中足・後足はノソノソと這いまわるためだけの足です。
写真/森田弘文
イラスト/ミセスモンタ

森田弘文(もりたひろふみ)
ナチュラリスト。元東京都公立小学校校長。公立小学校での教職歴は38年。東京都教育研究員・教員研究生を経て、兵庫教育大学大学院自然系理科専攻で修士学位取得。教員時代の約20数年間に執筆した「モンタ博士の自然だよりシリーズ」の総数は約2000編以上に至る。2024年3月まで日本女子大学非常勤講師。その他、東京都小学校理科教育研究会夏季研修会(植物)、八王子市生涯学習センター主催「市民自由講座」、よみうりカルチャーセンター「親子でわくわく理科実験・観察(植物編・昆虫編)」、日野市社会教育センター「モンタ博士のわくわくドキドキ しぜん探検LABO」、あきる野市公民館主催「親子自然観察会」、区市理科教育研修会、理科・総合学習の校内研究会等の講師を担当。著書として、新八王子市史自然編(植物調査執筆等担当)、理科教育関係の指導書数冊。趣味は山登り・里山歩き・街歩き、植物の種子採集(現在約500種)、貝殻採集、星空観察、植物学名ラテン語学習、読書、マラソン、ズンバ、家庭菜園等。公式ホームページはこちら。
