《1人1台端末フル活用》クラウドを活用して理科の学びを深めるコツ【理科の壺】

1人1台端末、どの程度使いこなしていますか。「とても便利!」と活用中の先生がいらっしゃる一方で、「従来どおりの紙のノートでも十分なのでは?」と端末を使うメリットを実感できていない先生もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、理科の授業における1人1台端末ならではの活用法について紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県相模原市公立小学校教諭・関口達大
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1人1台端末で「クラウド」をフル活用!
GIGA端末が導入されてから急速に活用が広がったのが「クラウド」です。「クラウド」とは、データの保管や活用をインターネット上で行う仕組みのことです。クラウド活用というと、ハードルが高いように感じますが、すでに授業や校務等で多くの活用例が挙げられています。GoogleのツールやCanvaなどを使ったことがあれば、「クラウドを活用したことがある!」といえるでしょう。
授業でクラウドを活用する利点として、次の点が挙げられます。
①一つのデータを複数の児童で編集することができる。
②友達の学習状況を閲覧して、自身の学びの参考としたり、他者の考えを把握したりすることができる。
①の活用の仕方を「共同編集」といいます。
②の活用の仕方を「他者参照」といいます。
この2つの視点を意識すると、個の学びと協働の学びがより充実していきます。
ここでは、「共同編集」と「他者参照」のそれぞれの視点でクラウドを活用して、理科の学びを深めるアイデアをご紹介していきます。
【共同編集】実験結果を共同編集することで、結果の妥当性を検討する
4年生「天気の様子」を例にして考えましょう。この単元では、晴れの日や曇りの日の一日の気温の変化を測定し、それぞれの実験結果から特徴を考察します。子どもたちは、校庭の中の測定したい地点で時刻を決めて測定していきます。
ここでクラウドが活用できます。「Googleスプレッドシート」などでグラフを作成すると、一日の温度の変化を可視化することができます。クラウド活用のよさは、各地点の温度をみんなで入力してクラスで一つのグラフとして共有できることです(共同編集)。
他の班の結果が見えることで、自分の班だけでなく、他の班の結果も踏まえて考察を考えることができます。複数のデータから考察を行うことは、「妥当な考えをつくり出す力」にもつながっていきます。
クラスで1つのグラフを作成すると、多少の温度差が出ることが考えられます。このとき、温度計の測定方法の指導が不十分だと、誤差の範囲を超えてばらつきが出ることがあります。1つのグラフに集約すると、結果のズレや外れ値に注目が集まります。その原因を考えていくと、測定地点や測定方法に問題があると子どもは考えるでしょう。その場合、測定場所や測定方法を再度確認したり、考えさせたりして、再実験をするか子どもと相談をするとよいです。
晴れの日はお昼あたりに気温が高い、曇りの日は気温の変化が少ない、などの特徴がクラス全体の傾向として捉えられる場合には、再実験を必ずしも行う必要はありません。晴れの数値がばらついた場合、測定方法を確認すれば、次の実験で曇りの日の結果のばらつきが軽減されるでしょう。

このように、共同編集を通してクラスで一つのグラフを作成・共有し、結果の妥当性を検討することで、考察するための思考力や実験の技能の高まりにつなげることができます。
