子ども同士が学び合い、成長し合う学級づくりを目指そう! 協働的な学習の原則とは
新人教員のための学級安定実践13選⑬

本連載の最終回は、子ども同士が教え合い、学び合う協働的な学習についてご紹介します。
西川純先生が提唱する『学び合い』は、「みんな」で「分かる・できる」ことを目指し、一人も見捨てない教育を実現する手法です。
私はこれを少しアレンジして使っていました(西川先生のお考えでは方法はそのままで行うべし、というのが基本的な考えです。私はリスペクトを持ってアレンジしていますが、まずは西川先生の著書をしっかりと読まれることを強く推奨します)。
単なるグループ学習ではなく、子どもたちが主体的に学習に取り組み、お互いの成長を支え合う学習文化を作る実践です。
執筆/私立小学校教諭・熱海康太
目次
学び合いの基本理念
学び合いというのは、算数の時間でいう、ミニ先生のようなイメージです。学び合いの根底にあるのは、「一人も見捨てない」という理念です。勉強が得意な子だけでなく、苦手な子も含めて全員が「分かる・できる」状態を目指します。これは決して理想論ではなく、適切な環境設定と指導により実現可能な目標です。
従来の一斉指導では、教師が一方的に教える形でしたが、学び合いでは子どもたち同士が教え合います。これにより、教える側も教わる側も、より深い理解を得ることができます。人に教えることで自分の理解も深まり、人から教わることで新たな視点を得られるのです。
「ちょうどよいヒント」の技術
学び合いで最も重要なスキルは、「ちょうどよいヒント」を出すことです。単純に答えを教えるのではなく、相手が自分で考えて理解できるレベルのヒントを提供する技術です。
「答えを言うのではなく、相手がギリギリ考えられる、ちょうどよいヒントを出すことが、教える側にも学びが深くなる」と子どもたちに伝えます。これにより、教える子は相手の理解度を推測し、適切な支援を考える力を身につけます。
具体的には、「ここまでは分かる?」「この部分で困っているの?」といった確認から始め、相手の理解度を把握してからヒントを出します。「○○を思い出してみて」「図に書いてみたらどう?」といった方向性を示すヒントが効果的です。
環境設定と教師の役割
学び合いを成功させるには、適切な環境設定が不可欠です。子どもたちが自由に立ち歩き、相談できる環境を作ります。従来の「席について静かに」という授業スタイルから脱却し、必要に応じて移動し、協力し合える空間を提供します。
教師の役割は、直接教えることから「学習環境の管理者」に変わります。「今日の目標は全員が○○を理解することです。時間は△△分。さあ、どうぞ」という投げかけにより、子どもたちの主体的な学習を促します。
教師は教室を歩き回りながら、子どもたちの学習状況を観察し、必要に応じて支援します。しかし、すぐに答えを教えるのではなく、「誰かに聞いてみたら?」「○○さんが詳しいよ」といった仲介役に徹します。
学び合いの効果と価値
学び合いには多面的な効果があります。学習面では、教える側も教わる側も理解が深まります。教える過程で自分の理解の曖昧さに気づき、より確実な理解を得ることができます。教わる側は、同年代の子どもの説明により、教師の説明とは異なる角度から理解することができます。
人間関係の面でも大きな効果があります。普段交流の少ない子同士が学習を通じて関わり合い、お互いの良さを発見します。「○○さんって、実はとても優しいんだ」「△△さんは説明が上手だな」といった発見により、学級全体の人間関係が改善されます。

「一人も見捨てない」の重層的な意味
バナーイラスト/futaba(イラストメーカーズ)

著者:熱海康太(あつみこうた)
一般社団法人日本未来教育研究機構 代表理事
大学卒業後、神奈川県内の公立学校、私立学校で教鞭を取る。
大手進学塾の教育研究所を経て、現職。
10冊以上の教育書を執筆し、全国10,000人以上の先生方に講演を行うなど、幅広く活動している。
