小5算数「単位量あたりの大きさ」指導アイデア《人口密度について知り、大きさを比べる》

執筆/神奈川県横浜市立箕輪小学校教諭・鴨志田岳大
監修/東京都国立教育政策研究所教育課程調査官・加固希支男、神奈川県横浜市立伊勢山小学校副校長・黒木正人
目次
年間指導計画
・整数と小数
・体積
・合同な図形
・比例
・小数のかけ算
・平均
・単位量あたりの大きさ
・小数のわり算
・速さ
・図形の角
・整数の性質
・分数のたし算とひき算
・わり算と分数
・面積
・割合
・帯グラフと円グラフ
・円と正多角形
・□と△を使った式
単元の展開(各時の主な学習活動内容)
第1時 部屋の混み具合を調べ、単位量あたりの考え方について知る。
第2時 日常生活の中で単位量あたりの考え方が使われていることを知り、量の大きさを比べる。
第3時(本時)人口密度について知り、大きさを比べる。
本時のねらい
2025年大阪・関西万博と1970年大阪万博の混み具合を考える活動を通して、混み具合を知るためには「人口」と「面積」を用いることに気付き、「人口密度」の意味とその求め方を理解することができる。
評価規準
- 2025年大阪・関西万博と1970年大阪万博の混み具合について、人口密度を用いて比べたり表したりすることができる。(知識・技能)
本時の教材のポイント
本単元では、単位量あたりの大きさを用いて混み具合を調べたり、日常にあるものの量の大きさを比べたりしていきます。本時では、前時までに学習した混み具合を比べるために「人の数」と「広さ」を用いて考えることを想起して課題解決していきます。「人口」と「面積」をはじめから提示して「人口密度」を求めるのではなく、子供たちに日常事象から必要な数量関係を見付ける目を養えるようにします。
そこで本教材では、2025年大阪・関西万博と1970年大阪万博の写真を提示することで、子供たちが直感を用いてどちらが混んでいるかを考えた後に、話合いを通して混み具合を比べるには「人口」と「面積」が必要であることに気付けるようにします。そして、「人口密度」という言葉を知り、混み具合を比較していきます。さらに、1970年大阪万博のほうが混んでいることが分かった後には、「混んでいるとどんなことに困るかな」という発問をすることで、評価問題につなげていきます。
本時の展開
この写真はどこだか分かりますか。

大阪万博だ。
すごい人の多さだなあ。
夏休みに行ってきたよ。いろんな国のことを知ることができたよ。
1970年にも大阪万博は開かれました。

テレビで見たことある! 太陽の塔が有名だよね。
僕のおじいちゃんが行ったことあって、すごく混んでいたって。
月の石が展示されたみたいだよ。
どちらの万博が混んでいたのかな。
写真を見ると、2025年のほうが混んでいるかなあ。
写真だけじゃ分からないよ! たまたま写真に写った人が多かっただけかもしれないよ! 僕が行ったときも混んでいるパビリオンと空いているパビリオンがあったよ。
混んでいるパビリオンと空いているパビリオンを合わせた全体の人数をならして考えればいいんじゃない。
人の数だけでなく、面積も知ることができたら、前の時間にもやった全体の人数をならして同じ面積あたりに何人いるかで比べられるよ。
今言ってくれた全体の人数をならして、同じ面積あたりに何人いるかを「人口密度」と言います。ちょうど人の暮らしをイメージしやすい単位として1平方キロメートルあたりの人口を表すことが多いです。それぞれの1日の来場者数と会場の面積はこちらです。

1970年大阪万博に来た人が多い!! 2025年より混んでそう!
でも、2025年の面積のほうが狭いから違うかも……。
では、人口密度を求めてどちらが混んでいるか比べてみましょう。数が大きいので、必要な人は電卓などを使って計算してもいいですね。

それぞれの人口密度を求めて、どちらが混んでいるのか比べよう。
見通し
1㎢あたりの人数を求めるということだから、1日の来場者数を面積で割って計算してみよう。(方法の見通し)
混み具合を比べるためにやっているから、割り切れない場合は、四捨五入して概数で求めてみよう。(方法の見通し)
1㎢あたりの人数が多いほうが混んでいるということだと思う。(結果の見通し)
自力解決の様子
A つまずいている子
・何から何を割ることで1㎢あたりの大きさを求められるのかを理解できていない。
B 素朴に解いている子
・2025年大阪・関西万博の人口密度は193548.38709677419…で、1970年大阪万博の人口密度は251515.151515151515151515…だから、1970年の万博のほうが2025年の万博より混んでいる。
C ねらい通り解いている子
・2025年大阪・関西万博の人口密度は約19万人で、1970年大阪万博の人口密度は約25万人だから1970年の万博のほうが2025年の万博より混んでいる。
ノート例
B 素朴に解いている子

C ねらい通り解いている子

全体発表とそれぞれの考えの関連付け
2025年大阪・関西万博の人口密度はいくつでしたか。
1㎢あたりの人数を求めると混み具合を比べられることは分かったけれど、何と何を割ると求められるかが分からなくて……。
1㎢あたりの人数を求めるということだから、1日の来場者数を面積で割って計算してみるといいよ。
ということは、2025年の万博は30÷1.55で19.354838709677…。1㎢あたりに19人ということになるね。
いや、約30万人だから、30÷1.55ではなく300000÷1.55だよ。
なるほど、じゃあ、300000÷1.55=193548.38709677…だね。
小数第1位で四捨五入して、約193548人/㎢でいいんじゃないかな。
今回は混み具合を比べるから、もっと量が分かりやすいように約19万人でいいんじゃないかな。
1970年大阪万博の人口密度はいくつでしたか。
830000÷3.3=251515.151515…で約25万人です。
ということは、どちらが混んでいると言えますか。
2025年大阪・関西万博の人口密度は約19万人で、1970年大阪万博の人口密度は約25万人なので、1970年大阪万博のほうが混んでいたと言えます。
今回は人口密度を用いて混み具合を比べられましたね。
1㎢に25万人もいたらどうなるのかな。
混んでいてトイレで行列ができそうです。
移動に時間がとてもかかりそうです。
迷子になる子が多そうです。
1970年大阪万博の迷子の人数は約48000人もいたそうですよ。
えっ! そんなに迷子がいたの!?
もっと、人口密度を減らしたほうがいいんじゃない。
でも、ガラガラになってしまったらさびしいよ。
私たちの住んでいる県くらいの混み具合だったら、空いていていいのだけどなあ。
そうしたら、私たちの住んでいる県の人口密度を調べてみましょう。
まとめ
- 混み具合は、人口密度を使って比べることができる。
- 人口密度は実際に1㎢あたりにいる人数ではなく、すべての人数をならして考えている。
評価問題
私たちの住んでいる神奈川県の人口密度を調べましょう。

子供に期待する解答の具体例
人口密度は1㎢あたりの人数なので、9220000÷2416=3816.22517なので、約3816人です。万博と比べると、とても空いています。
感想例
- 人口密度を求めることで、混み具合を比べることができました。
- 万博や神奈川県以外にも、テーマパークや他の都道府県や国の人口密度についても調べてみたいです。
ポイント&アドバイス
構成/桧貝卓哉 イラスト/横井智美 図版作成/永井俊彦
