先生と保護者が知っておきたい「子どもがつくうそ」4種類
うそをつく子に手を焼く大人は少なくありません。
どうして、何のために、子どもはうそをついてしまうのかを考えてみましょう。
30年以上の現場経験があり、全国で教員育成&保護者相談にあたっている多賀一郎先生の著書『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』より、具体的なアドバイスをお届けします。
追手門学院小学校講師・多賀一郎
Q うちの子どもがうそをよくつくのですが、どのように指導すればよいのでしょうか? 何度も厳しく叱ってはいるのですが……。
多くのベテランの先生方と話していると、みなさん、1年生でもうそを平気でつく子どもが増えていると言います。顔色も変えずにうそをつききってしまう低学年の子どもがいるのです。
うそにはいろいろな種類があります。
「子どもがつくうそ」の種類
自分を守るうそ
ちょっと追い込んだら、子どもはすぐにうそをつきます。一度うそをついたら、それを隠すためにうそを重ねてしまいます。そうやって、うそが膨れ上がって自分の立場が悪くなっていくのです。
自分を守るうそは人間的で、たちは悪くないものです。ぼくだって、そういううそをついたことがあります。良いことだとは思いませんが、情状酌量はありだと思っています。
自分を守るうそについては、まずはうそをついてしまった子どもの思いを聞いて、受け止めてあげましょう。
するべきことをしなかったのに「した」とうそをついたら、「しなかったことよりも、うそをついたことを叱る」という方もいらっしゃいますが、ぼくは、「うそをついて損したね」くらいにとどめていいと思います。
人を守るうそ
友達を守るためにうそをつき通した子どもがいました、自分は損をすることがわかっているのに。立派な子どもでした。
両親に心配をかけないために、学校での出来事について、うそをついた子どももいました。
小児ガンで余命1か月とされた子どもに、「あなたは1か月しか生きられないのよ」と、本当のことを言う人はいらっしゃらないでしょう。人は大切なものを守るためにもうそをつきます。このようなうそは、責めなくていいと思います。
人を陥れるうそ
これは絶対に認めてはならないものです。最近、この手のうそが子ども社会にも増えてきているような気がします。
「○○ちゃんが、あなたの悪口言ってたよ」
などと、その子と親しい子どもに言って、仲を裂こうとする子どもがいます。
この手のうそに対しては、断固として厳しい姿勢で臨んでいくべきことだと思います。間違っても「気持ちはわかるけど……」などと言うべきではありません。
虚言癖
たまに、うそを話しているうちに自分の中では本当のようになってしまう子がいます。本人が本当だと思い込むので、これは直しにくいものです。
わざわざ「うそをつき通しなさい」と教える大人はいません。しかし、うそをつき通してよかったと、幼い子どもに思わせてしまう教育をしている可能性はあります。
例えば、うそだとばれたら、子どもが一方的に叱られるだけということが繰り返されているなら、子どもはなんとかごまかし抜いてやろうと考えるものです。
うそをつくことが心の重荷にならないといけないのです。
耳が痛いかもしれませんが、子どもが正直に育たないということは、大人の行いが悪いからだと思いましょう。うそをついた大人が自らを罰したり悩み苦しんだりしないのならば、どうして子どもたちに「正直であること」の大切さが伝わるでしょうか。
「うそ」は、なかなか識別しにくいものです。子どもの観察と「自分は子どものことをどこまでわかっているのだろうか」という謙虚さ、どう指導するべき性質のものなのかを見極める力で、適切な対応してほしいと思います。
●多賀一郎(たが・いちろう)。追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。
『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』
著/多賀一郎
定価:本体1100円+税 (小学館)
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