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【小5・社会「わたしたちの国土」】教師は「教える」から「引き出す」へ──子供自身が学びを動かす授業〈デジタル×深い学び〉

連載
「デジタル×深い学び」の授業デザインReport

東京都西東京市立上向台小学校では、授業の中でデジタルを活用することが日常の光景となっています。そんな中で同校が取り組んでいるのが「ミニ公開授業」。これは、単元全体だけではなく授業の一部からでも、学習の方法や進め方を子供に委ね、これからの新しい学びに挑戦しようという試みです。
今回は、この「ミニ公開授業」から小学5年生・社会科「私たちの国土」の授業(星野洸子教諭)をご紹介します。

この記事は、連続企画『「デジタル×深い学び」の授業デザインReport』の3回目です。記事一覧はこちら

東京都西東京市立上向台小学校

学校教育目標は、「人にやさしさ 自分につよさ 生き抜くかしこさ」。高学年では教科担任制を取り入れ、学校全体で「自立した学習者」という子供像の育成に取り組んでいる。

[授業のはじめ]
子供を主役にする授業の第一歩

上向台小学校の「ミニ公開授業」は、自己申告の授業観察を管理職だけでなく、他の教員にも公開することにより、教員同士が学び合う機会となっています。誰もが自由に参観することができるため、そこで得たアイデアを自分の授業に取り入れてみようという前向きな雰囲気が広がっています。

この日の授業は、単元計画の第2次「情報収集」「整理・分析」「まとめ」「説明」の5時。学習のまとめに向けて、これまでの取組を整理する最後の授業でした。

授業の最初には、前時の学習をみんなで振り返り、ほかのクラスの子供が書いたまとめなども紹介されました。矢印の使い方や、図や文章を組み合わせたまとめ方など、友達の工夫から学び、自分のまとめに活かしていく時間です
その後、本時の「学習の手引き」を使って、学習の進め方を全員で確認。次時に向けた見通しも共有され、子供たちはそれぞれの学びに向かってスタートしました。

星野先生が作成した社会科のポータルサイトは、「学びの手引き」や「学習計画書」を学級を越えて他者参照できるように工夫されている。また子供たちが自分のタイミングで取り組めるよう、「確認小テスト」にはいつでもアクセスできるようになっている。
同校では、3〜6年生の「学習の手引き」や「学習計画書」において、授業の内容や目的に応じて紙とデジタルを使い分けている。デジタルで進める場合は、スプレッドシートを活用している。

本時の学習計画を立てて、学びを進めていきましょう。

次の時間は「振り返り」なので、今日が「情報収集」の最後の時間ですよ。

●指導のポイント
教師が話しすぎないことに注意しています。子供たちの「学ぶ時間」をしっかり確保することが、何より重要だと考えています。
また、子供たちが一人で学習を進めることができるように、前時までのよい学びをしていた子供の学び方を紹介したり、「学びの手引き」を少しかみくだいて説明したりしています。そうすることで、クラス全体によい学びを広げたり、困っている子には「こうすればいいんだ」というモデルになるのではないかと考えています。そして、自分で学びをデザインして進められる子供たちが、さらに自信をもって学べるようにしています。

[授業のなか]
子供が主役となる学びの時間

子供たちは、インターネットや動画、教科書など、自分に合った方法で調べ学習を進めていきます。まとめ方もそれぞれで、黒板やノートに書く子、付箋アプリを活用する子、スライドで整理する子など、使用するツールの選択も子供たち自身に委ねられています

子供たちは授業の冒頭で星野先生が紹介した、図や矢印を使ったまとめ方を早速取り入れていた。教室のあちらこちらで、それぞれが自分の学びを工夫しようとする姿が印象的だった。

星野先生は「今日は何をやるの?」「どこまで進んでる?」などと、子供たちの状況に合わせて声をかけながら、各机をまわります。

(学習の進みが遅い子に対して)
今、何をしているの?
〇〇ちゃんがちょうど同じ部分をまとめてたから、聞いてみたら?

(調べ方が一面的になっている子に対して)
教科書のこの部分を読んでみて。

(子供の理解の深まりをうながすとき)
〇〇って、どういう意味だった?

授業中には、子供同士で意見交換をしており「まだ意見交換していない人、いませんか?」と子供同士で声をかけ合う姿も見られました。

データ上の他者参照だけでなく、クラスの友達と直接意見交換をしている。子供たちからは、「友達の意見を聞くっていいね」という声も。

●指導のポイント
質問した子に対して、近くの子が「私が説明するよ」と声をかけてくれることがあります。そんなときは、「お願いしていい? ○○さん、よかったね」と声をかけ、子供同士で自然に学び合う姿を、大事にしています。

[授業のおわり]
本時の振り返りと次時に続く準備

授業終了の10分前になると、「そろそろまとめに入ろう」「うまくいかないときは、友達のまとめを参考にしてもいいよ」と星野先生が自然にナビゲート。調べが足りない子には「他のクラスの友達のまとめを見て、真似してみよう」「前の時間の取り組みをもう一度見てみるのもいいね」と、柔軟なアドバイスが送られていました。

「学習計画表」には子供たちが自分なりに考え、言葉を選びながら学びをまとめようとする様子が記録されている。

●指導のポイント
私は、子供たちが単元で身につけるべき知識や技能に着目する手立てや、また「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図るための手立てに課題を感じていました。今回の単元では、「学びの手引き」にキーワードを明記することで、習得すべき事項を着目できるようにしました。また、付箋アプリや黒板を自由に使えるようにすることで、一人ひとりの学び方に合った協働の形が自然と生まれる工夫もしました。
子供たちの学ぶ意欲は無限大で、私の想定以上に「学びの手引き」や協働のしかけを活用してくれたことが、今回の単元の収穫でした。

授業実践者からのメッセージ

子供たちは最初こそ戸惑いも見られました。しかし昨年度の1年間、ともに試行錯誤を重ねる中で、「よい学びとは何か」「自立した学習者とはどのような姿か」といった問いに向き合いながら、主体的に学ぶ姿が少しずつ増えてきました。学習面だけでなく、体育発表会などの学校行事でも、自分たちで考え、実際に行動に移すことも増えています。
私自身は、一昨年度に他県の先進校を視察する機会をいただき、大きな衝撃と焦りを感じました。「このままではいけない」という思いから、昨年度は右も左もわからないまま校内研究授業に挑戦し、大きな挫折も味わいました。しかし、「部分的にでも、まずは挑戦することが大切」と考え、今でも悩みながら授業を考える日々です。
今後は、自身の課題改善はもちろん、教科担任制の強みを生かして、各クラスの枠にとらわれずに、学びを広げたり、深めたりする授業に取り組みたいです。

取材・文/カラビナ

この記事は、連続企画『「デジタル×深い学び」の授業デザインReport』の3回目です。記事一覧はこちら

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