低学年から始める「生成AIを活用した学び」
令和6年度生成AIパイロット校として文部科学省から指定された茨城県つくば市立研究学園小学校では、生成AIの授業の研究を行っています。その中心となって指導を行っているAI・DX担当(令和6年度時点)の内田卓先生に、生成AIを活用した授業実践、情報モラル教育の話を伺いました。同校では、主に教育特化型AIアプリである「スクールAI」と「ClassCloud」を使用しています。
監修/茨城県教育庁学校教育部指導主事・内田 卓

目次
情報モラル教育
情報モラル教育では、安全への配慮や情報セキュリティの意識を中心に指導しています。同校では、つくば市のガイドラインに基づいて、次のように発達段階ごとに系統的な指導を行っています。つくば市では、小学1年生から中学生(つくば市では7~9年生)の情報モラル教育の基本を次の通り示しています。
〇低学年の情報モラル教育
・パスワードの重要性を理解し、正しく利用できる。
・不適切な情報に出合わない環境で利用する。
・知らない人に連絡先を教えない。
〇中学年の情報モラル教育
・協力し合ってネットワークを使う。
・危険や不適切な情報に出合ったときは、大人に意見を求め、適切に対応する。
・情報には誤ったものがあることに気付く。
・健康のため利用時間を決め守る。
〇高学年の情報モラル教育
・不適切な情報であるものを認識し、対応できる。
・自他の個人情報を、第三者にもらさない。
・不正使用や不正アクセスされないように利用できる。
・情報の破壊や流出を守る方法を知る。
〇中学生の情報モラル教育
・ネットワークの公共性を意識して行動する。
・安全面から、情報社会の特性を理解する。
・トラブルに遭遇したとき、主体的に解決を図る方法を知る。
・自他の情報の安全な取扱いに関して、正しい知識をもった行動ができる。
・基礎的なセキュリティ対策が立てられる。
情報モラル教育は、すべての学年で継続的に行います。低学年では、道徳や特別活動、また関連教科を通して適宜指導し、中学年からは、つくば市独自の「つくばスタイル科」の情報活用単元(サテライト単元)を中心に、必要に応じて関連教科でも指導しています。また、学年や教科を横断して、児童生徒の発達段階に応じた体系的な情報モラル教育を推進しています。
低学年から生成AIを指導するポイント
低学年から無理なく生成AIを使いこなせるように指導するポイントを紹介しましょう。
1 タイピングの練習
生成AIを活用した授業実践をするにはICT端末を使いこなすことが必須となります。最初はデジタル、アナログの両方を使いながら進めていきます。子供たちはタイピングやプログラミングなどを学習することによって、ICT端末をだんだんと使いこなすことができるようになってきます。例えば、振り返りの場面などで、ノートから徐々にICT端末を使う機会を増やしていくとよいでしょう。
2 情報モラル教育
情報モラル教育は前述したとおり、同校ではつくば市のガイドラインに沿って指導します。4月の授業参観では、動画などの教材を使い、親子で学べる情報モラル教育の授業を行って、情報との正しい付き合い方を親子で学習する機会を設けました。低学年の情報モラル教育は「パスワードの重要性を理解し、正しく利用できる」「不適切な情報に出合わない環境で利用する」「知らない人に連絡先を教えない」などが重要です。低学年では、道徳教育、特別活動で適宜行います。
3 具体的な実践
低学年の子供が生成AIの特性や注意点を直感的に理解できるよう、段階的に活用方法を工夫します。子供たちとプロンプト(生成AIへの指示や質問)を共有し、生成AIの仕組みを考え、生成AIが機械であり、誤った情報を出すこともあることを理解できるよう、プロンプトを見せながら試行錯誤する活動を実施しました。
授業実践では、児童4人とAI転入生がグループになり、自分のクラスならではの思い出かるたづくりや、生成AIを「話合いの相手」として活用した「言葉をつないで話し合おう」などの活動(以下に紹介)に取り組みました。
子供たちには、「生成AIは、ヒントだったり、手伝ってくれたりする手段なので、最終的には人間であるあなたたちが決めるようにしてね」ということを意識して伝えます。
4 グループで活動
低学年の成長段階では、生成AIを個別に使うことはしないで、グループで使うようにします。低学年の段階では、生成AIを活用することに慣れていないため、どのように対応するとよいかということの判断が難しくなります。グループで使うことによって、友達に相談しながら活用することでだんだんと使いこなせるようになります。できるようになった子が苦手な子に教える姿が見られるようになるなど、教え合うことが自然にできるようになります。子供たちが生成AIを正しく使いこなせるようになるには、いろいろな場面で使っていくことが大切です。