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「チームとしての学校」、説明できる?「生徒指導提要」の改訂と子どもへの発達支援~シリーズ「実践教育法規」~

連載
シリーズ「実践教育法規」
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早稲田大学教職大学院客員教授

池辺 直孝

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第42回は「『生徒指導提要』の改訂と子どもへの発達支援」について。生徒指導提要はどのような背景で改訂されたのでしょうか。また、現在の生徒指導提要で取り上げられている「チームとしての学校」とはどういったものなのでしょうか。

執筆/池辺 直孝(早稲田大学教職大学院客員教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#42

「生徒指導提要」の改訂

「生徒指導提要」は、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書として、2010年に作成されました。

しかし、近年、いじめの重大事態や暴力行為の発生件数、不登校児童生徒数、児童生徒の自殺者数が増加傾向にあり、また、「いじめ防止対策推進法」や「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が施行されるなど、児童生徒を取り巻く状況が変化していることから、2022年に改訂されました。

こども基本法・エンパワメント

2022年6月に「こども基本法」が成立し、子どもの権利擁護や意見を表明する機会の確保等が法律上位置付けられました。「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。」(第3条第3号)とあります。子どもへのエンパワメントの進め方が子どもの成長・発達を左右し、その学校の特色になりえます。

「校則」は、ブラック校則として話題になってきたところですが、特に、人権への配慮が求められています。子どもたちがこれまで当たり前と思っていた校則を見直そうと話し合いを重ね、改正の要望を提出するなど、子どもによる自治が推進される好事例も見受けられます。

子どもへのエンパワメントがうまく行われ、学校の方針や運営などを作り上げる場に参画することは、子どもの大きな成長につながるばかりか、それを見守る社会に一体感をもたらします(OECD、2024)。

チームとしての学校

チームとしての学校像については、「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」(中央教育審議会、2015)で次のように述べられています。

校長のリーダーシップの下、カリキュラム、日々の教育活動、学校の資源が一体的にマネジメントされ、教職員や学校内の多様な人材が、それぞれの専門性を生かして能力を発揮し、子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校

中央教育審議会答申、2015

生徒指導提要の69ページには、チーム学校における組織イメージ図が掲載されています。そのポイントは、次の通りです。

チームの学習 
チーム支援そのものを学習の場にすることがとても大切です。

「学習する組織」の理論を提唱するピーター・M・センゲは、チーム学習のメリットについて次のように述べています。

チームが真に学習するとき、チームとして驚くべき結果を生み出すだけでなく、個々のメンバーも、チーム学習がなかったら起こり得ないような急激な成長を見せる。

ピーター ・M ・センゲ、2011

チームの機能開発 
チーム支援に関して、保護者や児童生徒と事前に「何のために」「どのように進めるのか」「情報をどう扱い、共有するのか」という点で合意形成や共通理解を図り、チームの機能を開発します。

チームの持続 
学校や教職員は、保護者や地域社会に対して、説明責任を果たします。そのためにも、会議録、各種調査票、チーム支援計画シート、教育相談記録等を、的確に作成し規定の期間保持することが児童生徒、保護者そして学校を持続的に守ることにつながります。

学校と家庭、地域とのパートナーシップ
「子どもたちの成長を支えるために、学校がいかに家庭とのパートナーシップを結べるか」。いじめ問題などは、学校と家庭が相互に理解できず、残念ながら訴訟になるケースもあります。本来は、学校・家庭・地域社会が、互いにやれること・やれないことを認め、補い合いながら子どもの成長を支えていくのです。

発達支持的生徒指導

発達支持的というのは、児童生徒が自発的・主体的に自らを発達させていくことが尊重され、その発達の過程を学校や教職員がいかに支えていくかという視点に立ちます。

生徒指導提要の19ページにある生徒指導の重層的支援構造の図は、困難事案への予防的な対応や児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長を目指し、発達支持的生徒指導・課題未然防止教育の充実を図るというものです。

見直し続ける支援

学校は、児童生徒情報の共有を日常的に十分に行い、ケース会議で支援方針を検討・選択します。選択した方針には固執せず、学校側の誤りを発見し修正するよう見直しを続けましょう。このように支援そのものを見直し続けることは、チームとしての学校の力を最大化し、支援する子どもを将来にわたる持続的な成長・発達につなげるのです。

生徒指導の実践に際し、「生徒指導提要」の内容を基とし、教職員間や学校間の共通理解を図り、組織的・体系的な取組を進めることが望まれます。

参考文献
OECD(2024)What Does Child Empowerment Mean Today?
「子どもへのエンパワメントがうまく行われ、学校の方針や運営などを作り上げる場に参画することは、学校の環境や社会の一体感を良い方向に推進することに貢献するでしょう。」
中央教育審議会答申(2015)「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(2015 年 12 月)
ピーター M センゲ(2011)『学習する組織』英治出版

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