私の生成AI活用アイデア:特別支援に特化したGPTsによる生徒指導の進化|中澤幸彦 先生(八王子市立中学校)
特別支援教育の現場でGPTs(カスタマイズ可能なGPT)を活用した実践事例を紹介。八王子市立上柚木中学校の中澤幸彦先生が、GPTsを使って生徒の特性に合わせた指導計画のリアルタイムな見直しや、教師自身の問いかけの質を高める方法を解説しています。自閉傾向のある生徒のコミュニケーション能力向上や、学習障害のある生徒の学習意欲向上など、実際の成功事例を通して、AIと教師の力を融合させた深い支援のあり方を提案。とくに「好きなことを入り口にして苦手を小さくする」アプローチの有効性を強調し、教育現場でのAI活用の可能性を広げる内容となっています。

実践報告:中澤幸彦 先生
八王子市立上柚木中学校教諭。保健体育科として14年勤務し、生活指導主任や研究主任を経て2023年から特別支援巡回指導教員。初任時からICTを駆使、コロナ禍からはGoogleサービス等をフル活用した、中学校では珍しい年間を通した自由進度型で保健体育の学びを構築。2023年にはAIとの教育対談本『AI問答はじめてみれば文明開化の音がする~教育のあり方をAIとともに自問自答してみました』(ホリエモン出版)を出版。数多くの心理学やコーチングの資格を取得し、現場で活かしている。 また子育て支援のコミュニティ「 パパラボ 」「 ママことの場 」の代表として情報発信やイベントを運営している。
目次
はじめに:カスタマイズ可能なGPTsの活用効果
特別支援教育において、教員は日々「この指導目標は適切か?」「支援が本当に生徒に合っているのか?」と考え続けています。
しかし指導計画を立てても、生徒は日々成長し、環境も変化し、見取れなかった課題が見えてきます。とくに発達に特性のある児童生徒は、環境の変化や人との関わり方で学習の進め方が変わることもあるため、一度決めた指導計画をそのまま適用し続けることは難しいのが現実です。
そんな中、私が実践しているのが「GPTs」(カスタマイズ可能なGPT)の活用です。GPTsを使うことで、指導計画や内容のリアルタイムな見直しが可能になり、生徒の変化に柔軟に対応できるようになったと実感しています。
本記事では、GPTsの活用によってどのように指導が進化し、生徒の変容が促されるのかを具体的な事例を交えて解説します。また、ChatGPTとGPTsの違い、AIの批判的思考の効果、教師のプロンプト技術の向上についても掘り下げます。
GPTsとは?:特別支援教育との相性の良さ
ChatGPT | GPTs | |
用途 | 一般的な質問への応答のみ | 特定の目的向けにカスタマイズ可能 |
特別支援向けの設計 | 難しい | 支援計画の作成や見取りの補助が可能 |
フィードバック機能 | 限定的 | 生徒の変化に応じて指導目標の修正を提案可能 |
批判的思考の促進 | 難しい | 指導目標や支援方法を再考する問いかけを設計可能 |
GPTsというのはChatGPTに追加されたカスタマイズ機能で、特定の目的や用途に合わせたオリジナルチャットボットを作って公開することができます。ChatGPTは汎用的なAIですが、目的にあわせてカスタマイズできるGPTsは特別支援教育の現場向けに最適化できます。
私が通常学級を経験したうえで感じることは、特別支援教育では、より生徒一人ひとりに応じた指導方法や見取りの判断が求められるため、GPTsのようにカスタマイズ可能なAIの活用が効果的だということです。
とくに、特別支援の専門家ではない教員がほとんどを占める現場において、GPTs利用のメリットは、「この指導方法で本当にいいのか?」と常に問いかけることで教員の批判的思考を促し、指導法を継続的にアップデートしながら支援できる点にあります。