幼児教育と小学校教育って、どんなところが違うの? 幼児教育を知って、新一年生に寄り添う先生になろう!

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この春から新一年生の担任になったり、関わりを持つことになったりする皆さん。皆さんは新一年生がこれまでどんな教育を受けて育ってきたかご存知ですか? 幼稚園や保育園と小学校は違いもあれば、共通点もあります。そのことを知っておくだけで、子どもとの接し方が変わってきます。やっぱり楽しい学級にしたいですよね。まずは「幼児教育を知る」ことから始めてみませんか。

「今年はどんな子どもたちが入学してくるのかな」
新一年担任は、まだ見ぬ子どもたちの姿を想像しながら、期待と不安を抱きつつ入学式までの日々を過ごすことでしょう。どちらかと言えば期待より不安の方が大きいかもしれません。漏れなく私も不安を抱いていました。だって、まだ生まれて6年しか経っていない子どもたちがやってくるんです。この椅子に座る子どもはどんな子だろう、どんな育ちをして、どんなことが得意で、どんなことが苦手なのか…。会ってみないとわかりません。
でも、会う前に不安に対処する方法があるんです。
方法はシンプルです。子どもたちが育ってきた環境や人との関わりを知っておくのです。つまり、「幼児教育を知る」ということです。子どもは入学したからと言って、着ぐるみのように衣を変えるなんてことはありません。幼児教育で育まれた姿がそのまま小学校へと引き継がれていきます。だから幼児教育を知れば、自ずと4月5月の子どもたちへの接し方が見えてきます。
さらに、幼児教育を理解すると子どもの捉え方が変わってきます。ちょっと角度を変えてみるだけで、子どもたちのよさや可能性がぐっと見えてきます。見方を変えれば誰だってその子の力を伸ばすヒントを掴むことができるのです。つまり、子どもは急に変わらないのだから、先生の捉え方を少し変えてみましょう。
まずは教育の「根っこ」の部分である幼児教育を知りましょう。そこには子どもが子どもでいられる素晴らしい世界が広がっています。

【連載/小学校だいすき!な一年生を育てる #01】

執筆/大分県公立小学校教諭・小野晃寛 

幼稚園、保育所、認定こども園ってどんなところ?

幼児教育施設には様々な施設類型があります。

幼稚園
「学校教育法」に基づく学校で、3歳以上の子どもに教育を行う施設です。教育標準時間は4時間で、主に幼稚園教諭免許を持った先生が保育を行います。

保育所(保育園)
「児童福祉法」に基づく福祉施設で、0歳から就学前の子どもを、保護者が働いているなどの理由で「保育の必要性」がある場合に預かる施設です。保育時間は8時間~11時間程度で、主に保育士資格を持った先生が保育にあたります。

認定こども園
「学校教育法」と「児童福祉法」に基づき教育・保育を一体的に行う、いわば幼稚園と保育所の両方の機能を併せ持つ施設です。先生も幼稚園教諭免許と保育士資格を持った保育教諭の両方がいます。保育所と同じく8時間~11時間程度子どもを預かります。認定こども園は、大きく分類して、幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型の4つがあります。
表にまとめるとこうなります。

ども園の分類

※認定こども園は種類ごとに異なるため、「幼保連携型認定こども園」を載せています。

このように施設類型の違いはありますが、幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領には、「育みたい資質・能力(3つの柱)」や、「ねらい及び内容(5領域)」、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」「小学校教育との円滑な接続」等が共通しており、内容の整合性が図られています。
つまり、どの施設で過ごしても基本的な教育・保育の方針は共通していると言えます。

ほとんどの新一年生たちが、こうした幼児教育の施設を経て、小学校に入学してきます。
では、そんな幼児教育施設では、どんなふうに子どもたちを育てているのでしょう?
「幼児教育施設って、ただ遊ばせているだけでしょ」という声が聞こえてくることがあります。
しかし、遊びは遊びでも、「ただ」遊ばせているわけではありません。
小学校以降では、「遊び」と聞くと、休み時間に自由に過ごす「休憩」というイメージがありますが、幼児教育施設での「遊び」は「学び」なのです。
ここでの「遊び」を通して、子どもたちは環境に主体的に関わり、必要な体験を積み重ねながら「学びの芽」を育んでいるのです。
幼児期の子どもたちは、いろんな物に興味を持ちます。砂場の大きな山、雨上がりの水たまり、葉っぱの上のかたつむり、たくさんの積み木、高い滑り台、厚く張った氷。思わず触れたり、持ち上げたり、形を変えたりと自ら関わりながら、心のおもむくまま、夢中になって遊びます。
夢中になって遊ぶ中で、「砂山に水をかけると流れていくよ」「丸めると固くなるよ」、「氷って冷たい」「時間が経つとなくなっちゃった」など、直接的な体験を通して、多くの気付きが生まれます。
中には、「流れた水はなんでコーヒー色になっちゃうの?」「どうして今日は池に氷ができたの?」と不思議さやおもしろさが探究心をくすぐり、じっくり観察したり、大人に尋ねたりと調べてみようとする姿が見られるようになります。
このように子どもたちが遊びを通して得た直接的な体験は、子どもが発達する上で豊かな栄養となり、多くのことを学び、様々な力を獲得していくのです。これが、小学校以降の「学びの芽」となり、各教科の学習に繋がっていきます。

「ねらい」をもって子どもに接する保育者たち

では、保育者は何をしているのでしょうか。園庭で遊ぶ時間を作っておき、安全面さえ気にかけておけば保育は成立するのでしょうか。
時間の確保や安全面はもちろん大事です。しかしそれだけではありません。保育者は子どもたち1人1人に応じた「ねらい」を持って子どもたちに関わっています。
「Aちゃんはまだ友達と関わることが苦手だから、保育者も入って友達と関わる場を作ろう」
「Bくんは昆虫が大好きだから、虫かごと網を用意しておいておこう」
など、保育者は1人1人の個性や発達を踏まえ、育みたい姿を念頭に、どんな環境を用意すればよいか計画を立てます。保育者は子どもたちが夢中になって遊ぶ姿を想像しながら子どもたちが園にやってくるのを楽しみに環境を整えて待ちます。走ってやってくる子どもたちとハイタッチし、遊びに向かう姿を見届けるのです。
幼児教育に教科書はありません。年は同じでも、月齢や家庭環境によって個人差があります。そのため、遊びの中で一律に同じことを同じようにさせたり、教えこんだりすることは基本的にしません。
目の前の子どもをよく観察し、その子に応じた援助を行っています。遊びに没頭できていなかったり、興味・関心が持てなかったりした時には、その場で修正を加えたり、明日の保育のために日案を練り直したりして改善をします。次の日、また子どもの姿を観察しながら環境構成や援助が適切だったか判断し、修正を加えます。
保育者が常に見ているのは子どもの姿であり、「何を感じているんだろう」「何を実現したいのかな」など、子どもの内面を見つめています。つまり、保育者は子ども理解のスペシャリストなのです。
そんな保育者の愛をいっぱいに受け、1人1人のペースで成長してきた子どもたちが入学して来るのです。

入学してくる子どもはこんな子たちです

1人1人に個性や発達の差があります。月齢の差や、家庭環境、地域、様々な施設類型などの環境の違いもあります。だからクラスに集まる子どもたちは、とても個性豊か。次のようなタイプの子どもたちをよく見かけます。

「先頭行きます」リーダータイプ

その子が発言すると自然と周りの子が付いてくる雰囲気をもった子です。目に力があり、発言力もあります。正義感も強く、自信に満ちあふれています。先生にも近く、お手伝いも進んでしてくれます。学級経営の核となる子どもの匂いがします。幼児教育では、遊びの中で、子どもたちの意思を確認したり、つぎの活動の見通しを持ったりするために話し合いの場を設けます。子どもたちは発言力のある子の考えに流れがちになりますが、保育者は、「○○くんがオニの人数を増やしたらいいって言っているけど、みんなはどう思う?」とその都度確認し、他の子どもたちの思いや考えを引き出します。
声の大きい人の意見ばかりにのっかっていると、周りの子から「○○くんが言ったことばかりやっててずるい」と不信感が生まれてしまいます。周囲のバランスを取りながら発言させてあげましょう。

「大好きなもの一直線」好奇心旺盛タイプ

例えば、動いているものや木の枝に生(な)っているものなどの自然事象に敏感に反応し、怖い物知らずで、すぐに手に取ります。一度触れたらもうお友だち! 昆虫がぐったりするまで、実が弾けるまで離しません。たくさんの知識があり、図鑑を見ながらさらに知識を獲得しようと進んで動きます。虫博士として注目されたり、教室の後ろにずらりと虫かごが並んだりと、昆虫ブームを作ってくれます。
よく似たタイプに、電車博士やキャラクター博士などもいますね。
幼児教育では、こんな子たちのために傍に図鑑を置いています。「捕まえたチョウは何て名前かな?」「何を食べて過ごすのかな?」など知りたいことが調べられる環境を作っています。図鑑を見ながら、脚の数や体長、名前や餌、生育地などが分かることで、数量の感覚や文字への興味を持つようになります。
子どもは自分の好きなことに夢中になって取り組む中で、必要な体験が得られ、自然に知識が身についていきます。小学校でも子どもたちが興味を持ったものに乗っかりながら学級経営に生かしたり、授業に取り入れたりすると子どもたちが生き生きと学ぶ姿が見られます。

「おしゃべりまかせて」人との関わり大好きタイプ

たくさんおしゃべりしてくれます。常に先生の側にいて、昨日あったことや自分が感じていることをドンドンしゃべります。友達ともおしゃべりができるので、その子の周りはいつも賑やかです。しかし、友達との関わりが多い分、小さなトラブルに発展することも珍しくありません。
こうした子が話したがっているとき、保育者は、話せるだけ話させてあげます。コップに入った水を想像してください。いっぱいに水が入っていると、新たに水をつぎ足してもあふれるばかりです。しかし、コップの水を出してあげると新しく水が入る容積が生まれます。人の心も同じです。まずは思いを吐き出させます。すると友達の思いや大人の話を聞き入れる準備ができます。
小学校でもトラブルが起きたときは、まずは思いを吐き出させてから、じっくり出来事を振り返りましょう。出来事を振り返る場を設け、落ち着いて話ができれば、成長が期待できます。

「お笑い大好き」目立ちたがり屋タイプ

流行の言葉や動きを表現したり、大げさなリアクションをとったりするのが得意な子どもです。根は明るく、楽しいことが大好きです。みんなが静かにしているときでも、チャンスと言わんばかりに空気を読まず出てきます。子どもたちは楽しいことが大好きですから、周りの子たちからも求められている存在です。そんな行動を面白いと認めつつ、場に応じた態度の大切さについて指導が必要です。一方的に伝えるのではなく、経験を振り返りながらじっくりゆっくり理解していくようにしましょう。よさを認めながら。
幼児教育でも、子どもが主体だからと言ってすべて良しとしているわけではありません。悪ふざけで友達の心を傷つけたり、先生の話を聞く時間に騒いだりしたときは、「それを聞いた○○くんはどんな気持ちがすると思うかな」「今は何をするお約束だったかな」と声をかけます。そして「こんなときはどうするのがいいかな」と考えさせます。一方的に指導するのではなく、子どもが考える時間を作り、みんなと「マナー」を共有します。この「マナー」が、後々「ルール」を守る意味やよさへと繋がっていくのです。

「じっくりゆっくり」努力家タイプ

時間をかけて絵を描いたり、工作を作ったりと、周りの友達や次の活動を気にせず取り組む子どもです。幼児教育施設では、作業に時間がかかっても、ご飯を食べた後に続きをしたり、保管しておいて次の日に続きからスタートしたりします。小学校は教科の枠があり、場所の制限もあるためチャイムで区切る場面が多々ありますよね。その子の作業スピードがあがることを期待するより、幼児教育のように、「続きは休み時間でもいいよ」と一旦保管しておき、続きができる環境を用意しておきましょう。廊下や棚の上にゆとりスペースがあるといいですよ。

「周りの目が気になります」消極的タイプ

入学式の次の日、泣いて教室に入れない子どももいます。心配に感じることが多いんですよね。知らない世界に飛び込むのは大人でも勇気がいります。特に感受性豊かな子どもは、「失敗したらどうしよう」「他の人はどう思っているのだろう」と不安な思いを風船のようにどんどん膨らませてしまうことがあります。が、これも今に始まったことではありません。ヒントは幼児期の保育者の支援にあります。

幼児期には、アタッチメント(愛着)を基盤に、情緒の安定を図ります。肌の温もり、温かいまなざし、優しい声かけ等、保育者と子どもとの関係を大切にしています。

4月5月は広い心で子どもたちを包み込みましょう。「そんなことしていると周りの子も甘えちゃうんじゃないの?」そうです。みんな甘えたいのです。順番にだっこしたり、手を繋いだり、5秒間ハグしたり、アタッチメントで安心感を持たせるのはこの時期の子どもにとっては大切です。でも1年間続ける必要はありません。というより、安心すれば子どもたちから自然と離れていきます。しばらく離れられないシクシクちゃんがいても大丈夫です。幼児教育施設では見慣れた光景なのですから。そんなシクシクちゃんに優しくしてあげれば、周りの子たちも優しく接してくれるようになります。優しく接している子を認めれば、学級全体が幸せな雰囲気になります。
一人の子を大切にすることは、みんなを大切にするという担任からのメッセージなのです。

いろんな子どもたちがいます。でも多様な子どもたちがいてこそ、楽しい学級になります。その子のよさが認められ、1人1人の力が十分に発揮できるクラスを目指しましょう。
どうしても気にしてしまうのは、子どもたちの姿勢や態度です。個人用の机がない幼児教育で育った子どもたちにとって、模範に示すようなよい姿勢で1時間の授業に臨むのは無理があります。もちろん、学校のきまりにある学級規律は必要です。しかし、きまりを守らせることが目的ではありません。きまりを守ることを通して、子どもたちが安全に生活したり、安心して力を発揮したりするように指導をすることが大事です。
焦らず、子どもの個性や発達を理解しながら、子どもたちと一緒に行動を振り返り、「どうしてこんなきまりがあるのかな」「誰のためにあるのかな」と子どもたちと一緒に考えていきましょう。特に4月5月は、6年間の小学校生活のスタートであり、心理的安全性を求めるデリケートな時期です。子どもたちが育ってきた環境を踏まえ、1人1人を理解しながら、長期の計画を念頭に、指導の改善に取り組みましょう。
忘れてはいけないことは、きまりは教える側の「教師のため」ではなく、育つ側の「子どものため」にあることです。今一度ご確認を。

幼稚園・保育園と小学校の過ごし方の違い

表 幼児教育施設と小学校の1日

通学は大冒険!

幼児教育施設は、基本お家の方と一緒に登園します。車で送迎され、手を繋いだり、だっこされたりしながら、園の玄関で保育者に迎え入れられます。1人で歩く時間は園の駐車場から靴箱までくらいです。一方、小学校は基本的に徒歩通学です。1人で、または小学生の集団で学校に向かいます。背中より大きな重たいランドセルを背負い、保護者に手を振りながら、何度も振り返り、途中止まったり引き返したり、ある時は犬に吠えられ、ある時は雨で靴下がびっしょりになりながら、何とか自分の力で歩いて学校を目指します。学校で生活するよりもハードルの高い試練と言っても過言ではありません。小学生にとっては「あたりまえ」のことでも、新一年生にとっては大冒険なのです。始めの一週間は、教室で出迎え、「よく来たね!えらいよ!」と声をかけてあげましょう。「1人はちょっぴり怖いけど、明日もがんばって行こうかな」子どもの心の中で先生の応援がこだまします。

トイレの時間

遊びが生活の中心にある幼児教育では、小学校のように決まった時刻にトイレの時間が設定されていません。トイレに行く時間は子どもの実態や生活の様子に合わせて保育者が活動前や後に適切に設定しています。また、急かすこともありません。幼児教育では、排泄については、子どもの健康管理として重視しており、丁寧な声かけや支援を行っています。
小学校は「学習」が学校生活の中心にあるため、学習と学習の時間の間にトイレ休憩や休み時間が設けられます。子どもたちは授業間の短い時間で用を足す必要があります。当然、排泄に時間がかかる子、頻度が多い子、漏らしたりトイレを汚したりしてしまう子がいます。これは、仕方ありません。小学校の時間に合わせることも大事な力ですが、まずは子どもたちの発達に合わせ、柔軟に対応するようにしましょう。学校になれるまでの3ヶ月間は、サポートしてもらえる先生にトイレのみかじめや失敗した時に支援してもらえるよう、学校全体で協力体制を構築しておくようにします。まずは学年で打ち合わせしておきましょう。

休み時間の終わりの時間

幼児教育でも当然、遊びの終わりの時間を設定します。保育室には大きな時計が壁に掛けられており、「長い針が4になったら片付けを始めようね」と時間を意識した声かけを行います。しかし、遊びに没頭して時間になっても遊びが終わらない場面もあります。そんなとき、保育者は、「明日続きをしようね」と子どもたちに安心して片付けができるように伝え、子どもたちで踏ん切りをつけるのを待ちます。時間が少々遅れても子どもたちが自ら動くのを待って支援をします。
小学校では、時間ごとに学習の教科が決まっており、教科担任制や専科の授業があるため、時間を守ることは重要です。しかし、1年生の4月5月に6年生のように時間を守ることを強いることは果たして適切な指導でしょうか。もちろん指導は必要です。ほったらかしにしてしまうことは子どものためになりません。しかし、発達に差がある子どもたちです。時間の感覚はそれぞれで、「時計の時間」と「自分の時間」に隔たりがある子どもも多くいます。
4月5月は弾力的な時間設定をし、子どもも先生も余裕を持って活動できるようにスタートカリキュラムを見直しましょう。また、特別活動の時間に、学校生活を振り返り、時間を守ることの大切さについてみんなで考える場を設けましょう。子どもたちが自分たちの生活を充実させるためには学校の時間を守ることが大切だと、実感を伴って理解していくといいですね。

給食の時間

幼児教育施設と小学校の大きな違いは開始時間と役割です。幼児教育施設の給食の時間は、小学校よりも早く始まります。11時には給食の準備を始める園も多くあります。小学校ではまだ3時間目あたりですよね。また、小学校では、配膳室から食缶を運んだり、ご飯やお汁をつぎ分けたりしますが、幼児教育の子どもたちは安全面を配慮して基本的には行いません。
しかし、園によっては、小学校を見据えて、5歳児がテーブルを拭いたり、エプロンを着たり、みかんをお盆に載せたりするなど、子どもができる役割を与えて仕事を経験させているところもあります。さらに給食を配膳するときは静かに待つ、食べ終わったら本を読んで待つ等、小学校にも繋がるような指導もしています。
つまり、給食も0からのスタートではなく、程度の違いはあれど給食について共通のイメージを持っています。「園ではどうしてた?」「待つときはどうすればいい?」など、幼児教育施設での経験を想起させながら、考えさせたり、約束を作ったりすると、子どもたちも安心して給食の時間を過ごせることでしょう。
幼児教育では、安心して食事を楽しめるよう、きめ細かな支援をしています。徹底的なルールの押しつけや、完食宣言なんてしちゃうと、小学校に行きたがらなくなりますよ。

掃除の時間

日本の小学校では当たり前のように一日のスケジュールに入っています。子どもたちは小学校ごとに決まった時間に、割り当てられた掃除場所に行き、自分が使っていない場所でも毎日のように掃除をしています。
一方、幼児教育施設には、「掃除の時間」は多くの施設では設定されていません。(園の方針で掃除をする習慣がある園もあります)
多くの幼児教育施設では、遊びの後に片付けをする中で、紙の切れ端を拾ったり、ほうきを使って掃いたりします。また、水彩バケツや水筒の水がこぼれると、雑巾を使って拭いたり、絞ったりする姿が見られます。その時の子どもたちの様子はどうでしょう。我先にと雑巾を取りに行ってこぼれた水を拭く姿があります。頭を寄せ合って散らばったビーズを集める姿があります。目を疑うくらい生き生きと部屋をきれいにしようとします。掃除は活動とセットで行われており、「自分たちで使ったから」「次の活動を気持ちよくできるように」という目的がはっきりしています。子どもたちにとって掃除は義務というより、自主性や責任感のもと、行われているのです。
この気持ちを小学校でも引き継いでいきたいですね。


小野晃寛教諭

小野晃寛【プロフィール】
大分県の公立小学校教諭、大分大学教育学部附属小学校教諭を経て、大分県教育委員会の指導主事となる。公立小学校時代は、九州算数・数学教育研究大会にて、提案授業者や研究発表者として算数の授業研究を進める。また、全国生活指導研究協議会にて、2度の全国大会実践レポート発表を行う等、学級経営についても実践を積み重ねてきた。大分大学教育学部附属小学校では、算数教育の研究を重ね、公立小学校の先生方に授業公開を行ってきた。現在は大分県教育委員会にて幼児教育の理解・発展や幼小の円滑な接続に向けて、「しんけん遊ぶ子」の実現を目指し、指導・助言を行っている。
著書は、「はじめての学級づくりシリーズ」として、「班をつくろう」「リーダーを育てよう」「話し合いをしよう」を執筆する(共著)。また、生活指導誌にて、実践記録やトピックなどを投稿している。
信念は「遊びは学び、学びは遊び」。子どもたちが遊びに夢中になることで育まれる力の可能性を、幼児教育施設を訪問する度に感じている。

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