「パワハラ管理職がいる飲み会には行きたくない」先生の相談への答え
小学校の職員室にあるパワハラの問題。どうしても許せない管理職が出席する飲み会には出たくないという悩みに、心理カウンセラーとして30年以上対人関係などをテーマにセミナーやカウンセリングを行い、小学校教師からの相談も数多く受けてきた石原加受子さんがアドバイスします。
執筆/心理カウンセラー・石原加受子
目次
まず「許せない」という気持ちを受け入れる
職員室で、屈辱的に叱られたり、嫌がらせに近いことをされたりして、そのことを思い出すたびに、
「どうしても許せなくなってしまいます。こんな感情から解放されるには、どうしたらよいのでしょうか」
という相談を受けることが少なくありません。
こんなとき、相手に対して許せないと思うだけでなく、そんな感情を抱いている自分に対しても、
「まだ忘れられないなんて、しつこいのではないか」
などと、そんな感情を抱く自分を責めたり、「こんな自分ではダメだ」と否定したりして、いっそう自信をなくしていく人がいます。
もしあなたが、そんな感情に陥っているとしたら、まず実践してほしいのは、そんな感情を抱く自分を認めるということです。
「ああ、そうか、まだ忘れられないなあ。つらいなあ。まだ心が癒されていないのか、そうかあ……」
と、自分の心に寄り添って、自分に語りかけるような気持ちで言ってみるだけで、許せない気持ちが少し軽くなるのではないでしょうか。
いま、あなたは許せない気持ちでいっぱいになっているけれども、あのときあなたは、一生懸命努力したのではないですか? あのときあなたは、精一杯頑張ったのではないですか? つらい気持ちに なっているとしても、そんな起こったことを「自分の問題」として捉える自分の努力を認めてあげることは、大事なことなのです 。
起こったことを「自分の問題」として捉える
許せないという気持ちから、相手を心の中で責めたり、自分を責めたりしても、過去に戻ることはできません。
もし相手が謝ってくれたとしても、あなたが絶対に許せないほどの気持ちになっていれば、
「謝罪してもらったぐらいでは済むものか」
と、さらに言いたくなるかもしれません。実際には、相手が謝罪したからといって、
相手を心から許す気持ちになるのは難しいでしょう。こんなふうに言うと、
「じゃあ、どうしたら、自分の心を救うことができるのですか」
と、絶望的な気持ちで尋ねたくなるでしょう。
それには、その起こったことを「自分の問題」として捉えてみることです。
そもそも、どうして「許せない」という気持ちになってしまうのか。
実は、それはそのとき「自分を守ることができなかった」ということが、自分にとって最も悔やまれることだからなのです。
「あのとき、早めに手を打つことができれば、あんなふうにはならなかった。こんなにまで傷つくことはなかった」
「あのとき、相手の立場を考慮するより、自分を守ることだけを考えて対処していれば、こんなにひどいことにはならなかった」
というふうに、他者や周囲のことを考えて穏便に終わらせようとして、自分を優先できずに、自分を守る方法を知らなかったからではないでしょうか。
大事な場面で自分を守れなかった、そんな悔しさが、「許せない」という気持ちになっているのです。
自分を守ることに注意を払う
では、具体的には、どうやって自分を守ったらよいのでしょうか。
それは、あなたの態度を変えることです。
例えば、あなたの職場に、ガミガミと小言ばかり言うタイプの上司がいるとしましょう。
もしあなたが、日頃から人に対して自信なさげに「はいはい」と従順で萎縮するような態度をとっていれば、小言を言うその上司は、あなたに対してはいっそう強い態度で小言を言ってくるでしょう。
その一方で、あなたに対してはそうであっても、ほかのある人にはあまり注意しない。むしろ、避けているように見えるということがあると、あなたは「どうして自分ばっかり攻撃されるのだ」と腹を立てるかもしれません。
けれども、まさにこれが、あなたと上司との「関係性」なのです。あなたのその自信なさげに萎縮している態度に、上司はいっそう小言を言いたくなっている、ということなのです。
ですから、相手を変えようとするよりも、日頃からの自分の態度のあり方を改める努力をしたほうが賢明です。
そして、相手に対して「許せない」と思ってしまうほど追い詰められる前に、自分を守ることに注意を払いましょう。
そうやって自分を守ることができれば、もし過去に許せないことがあっても、その傷みも少しずつ、癒されていくのです。
石原加受子●心理カウンセラー。厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。対人関係のテーマを中心に、30年以上カウンセリングを続ける。著書に『仕事も人間関係も「すべて面倒くさい」と思った時に読む本』(中経出版)『先生に向いていないかもしれないと思った時に読む本』(小学館)ほか多数。