小5国語科「銀色の裏地」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小5国語科「銀色の裏地」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都渋谷区立富谷小学校・佐藤綾花
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
この単元では、主に登場人物の相互関係や心情などについて、描写を基に捉える力を身に付けます。
高学年となり、初めて扱う物語文です。中学年までは行動や気持ち、気持ちの変化や性格、情景に注目して読んできました。高学年からは相互関係や心情などに注目して読んでいきます。
本単元の学習を通して「心情」という言葉の意味を捉えられるようにします。心情は、直接的に描かれておらず、暗示的に表現されていることもあります。中心人物が他の人物とどのような関係にあるのかを捉えたうえで、行動や会話、情景などの描写に注目し、心情を捉えられるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元は高学年になり、初めて物語文を読む単元です。
学習指導要領解説の国語編では「登場人物の相互関係や心情などについて、描写を基に捉えること。」に関して次のように書かれています。
「登場人物の心情は、直接的に描写されている場合もあるが、登場人物相互の関係に基づいた行動や会話、情景などを通して暗示的に表現されている場合もある。」
本教材の中心人物である理緒はクラス替えで、仲がよかった二人の友達とクラスが分かれてしまい、疎外感を感じて不満に思っていましたが、新しく同じクラスになった高橋さんとのやり取りや高橋さんの言葉によって心情が変化していきます。また、高橋さんに対する見方や関係もだんだんと変化していく様子が読み取れます。変化していく様子は直接的に描写されているわけではなく、理緒の行動や会話、情景から捉えることができます。このような教材の特性から、目標に迫るのに適した教材であると言えます。
「関係」や「心情」を中心に扱うのは初めてのこととなるため、それぞれどのように捉えるとよいのか児童が明確につかめるようにしたいと考えます。教科書36、37ページの学習の手引きや38ページの「たいせつ」にもあるように、人物同士の関係は図に表すと分かりやすくなります。
本単元では、「物語を読み、人物同士の関係を図に表して説明したり、読んで考えたことなどを伝え合ったりする」という言語活動を設定します。読み取ったことをどのように図に表すと関係が分かりやすくなるのか、例を示しながら関係の整理の仕方を児童がつかめるようにします。
「心情」は「気持ち」とは違って暗示的に表現されていることもあることを、教科書290ページの巻末資料「学習に用いる言葉」に書かれている説明を読みながら確かめるとよいでしょう。そのうえで、「こんな表現からも、理緒の心情が分かるのではないか」という表現に児童が注目できるようにしていきます。
4. 指導のアイデア
本単元は5年生になって初めて物語文を読む学習です。高学年になって新たに加わった「心情」や「関係」をどのように捉えていくとよいのか、児童がつかめるようにすることが大切です。教材文を読んだ児童の感想を価値付けたり整理したりしながら、「心情」や「関係」に注目させていきます。
「関係」を捉える際は図に表すよう促します。登場人物を配置する場所や、書く内容を全体で確認してから一人一人が書くようにすることで、読み合ったときに関係の捉え方の違いに注目しやすくなります。「どうしてこう書いたの?」と尋ね合いながら、様々な表現に注目し読み深めていきます。
単元の最初と最後に感想や考えたことを書く時間を設定し、自分の考えの変化にも気付けるようにします。最後に考えたことを書く際は、それまでの学びを生かせるよう、クラスでどのようなキーワードが挙がったかを確かめるようにします。
5. 単元の展開(5時間扱い)
単元名: 人物どうしの関係・心情に注目して読もう
教材名 「銀色の裏地」
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 初めて読んだ感想を伝え合い、学習の見通しをもつ。
・これまで、物語文をどのようなところに注目して読んできたかを確かめる。
・これまでに読んできた物語文を思い出す。
・教材文を読む。
・「注目したところ」「印象に残ったところ」に印を付けながら読む。
・感じたことを1人1台端末上の付箋に書く。
・初めて読んだ感想を伝え合う。
・1人1台端末上の付箋を読み合う。児童の実態に応じて、似ているところに注目して分類する。〈 端末活用(1)〉
・クラス全体で感想を共有する。
・学習計画を立てる。
・共有した感想を基に「人物同士の関係・心情に注目して読む」という単元全体のめあてを確かめる。
・どのように学習を進めていくとよいか考え、簡単な学習計画を立てる。
・第二次(2時)(3時)(4時)
② 理緒とあかね・希恵との関係を図に表しながら、様々な描写に注目し、理緒の心情を確かめる。
・関係図をノートに書く。
・ノートの写真を撮り、1人1台端末の共有スペースに上げる。
・1人1台端末上でそれぞれの関係図を読み合う。
〈 端末活用(2)〉
・全体で考えを出し合いながら理緒の心情を確かめる。
③④ 理緒と高橋さんとの関係を図に表しながら、様々な描写に注目し、理緒の心情の変化を確かめる。
・関係図をノートに書く。
・ノートの写真を撮り、1人1台端末の共有スペースに上げる。
・1人1台端末上でそれぞれの関係図を読み合う。
〈 端末活用(2)〉
・全体で考えを出し合いながら理緒の心情の変化を確かめる。
・第三次(5時)
⑤これまでの学習を振り返り、特に印象に残ったことについて考えたことを伝え合う。
・これまでの学習を振り返り、特に印象に残ったことを出し合う。
・出し合った中から自分が考えたいことを決め、自分の考えをノートや1人1台端末上に表す。
・同じテーマについて考えた友達と、考えを共有する。
・クラス全体で考えたことを共有する。
・単元全体の学習を振り返り、身に付けた力を確かめる。
6. 全時間の板書例・端末活用例と指導アイデア
イラスト/横井智美