小5国語「『子ども未来科』で何をする」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は「『子ども未来科』で何をする」です。この単元の学習活動は、「事実と感想、意見とを区別して説得力のある提案をしよう」になります。本時では、自分のスピーチの構成を考えるためのみちしるべとして、教科書の具体例である「山下さんのスピーチメモ」と「山下さんのスピーチ」を可視化した板書の工夫を紹介します。

監修/元京都女子大学教授
 元同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教頭・砂崎美由紀

 

単元名 事実と感想、意見とを区別して説得力のある提案をしよう
教材名 「『子ども未来科』で何をする」(光村図書出版)

単元の計画(全6時間)

  1. 「子ども未来科」で考えてみたいテーマを決める。
  2. テーマから課題を考え、情報を集める。
  3. 説得力のあるスピーチの構成を考える。
  4. スピーチの練習をする。
  5. (※と同様)
  6. スピーチ発表をして、互いに感想を伝え合う。

板書の基本

授業が始まる前に考えること

「子ども未来科」という教科があったとしたら、何を学びたいですか。

教科書が問いかけるこの問いは、子供たちが自分で問いをもち、課題を見付け、情報をもとに自分の考えをまとめるという「新しい学習の方法」を意識した単元です。教師が用意した問いに答えるのではなく、子供たちが問題意識をもち、提案することを求めている単元です。そのため、子供たちが解決したいという強い思いをもって、自分の提案をプレゼンテーションする学習の展開を考えました。

〇板書計画で考えておくこと

「話す・聞く」領域の教材の板書を考えるために、板書の役割を考えました。板書には学習の課題を示したり学習の成果を残したり、様々な役目があると思います。今回は自分のスピーチの構成を考えるという学習活動のため、構成を考えるためのみちしるべとなる板書を目指そうと考えました。教科書にはそのみちしるべとなる「山下さんのスピーチメモ」と「山下さんのスピーチ」が具体例として示されています。これをまとめ、可視化した板書を工夫しようと思いました。

板書のコツ(3/6時間目前半)

小5国語「『子ども未来科』で何をする」京女式板書の技術 3/6時間目前半の板書
3/6時間目前半の板書

板書のコツ①

学習のめあてと学習の見通しを伝える。

「めあて」は「説得力のあるスピーチの構成を考える。」です。ノートに日付とめあてを書いた後、教科書224ページを読みます。今日の学習は「スピーチの内容や話す順序を考えること」をつかみます。「山下さんの作ったスピーチメモ」と225ページの「山下さんのスピーチ」を読みます。ただ話すだけではなく、説得力のあるスピーチをするために、どんな構成の工夫ができるかを、教科書の例文から知ることを押さえます。

教科書224ページの下段「構成を考えるときは」を読みます。構成を考えるときのポイント「事実と意見を区別すること」を確かめ、板書します。

子供たちの生活に目を向けると、事実と意見が入り混じった状態で会話をしていることがあります。それがもとで、意見が合わなくなったり、誤解を招いてしまったりすることもあるでしょう。スピーチでは聞き手がいますので、聞き手が分かりやすいように話すためには、「事実」と「意見」をしっかりと区別することが必須であることを確認します。

板書のコツ

文章構成が一目で分かるように板書することを伝える。

黒板の真ん中に横線を引きます。ノートにも同じように上下に区切る横線を引く指示をします。上段には「山下さんの文」、下段には「自分のプレゼン」を書くことを伝えます。「自分のプレゼン」とは、前時までに決めたテーマと課題をプレゼンテーションの形式で提案することを指します。そのプレゼンテーションのために作成するスライドを考えるのが本時です。

文章の構成「初め」「中」「終わり」を確認し、黒板の一番上部に、「中」は黒板の中央あたりの上部に書きます。黒板全体が1つのプレゼンテーションになるように表を書くことを知らせます。表の右端には、上段に「山下さん・プレゼン資料」下段には「自分のプレゼン」と書きます。

教科書を読み、山下さんのメモやスピーチ文を読んで、上段に書いていくことを伝えます。板書をするときに、ノートへの線の引き方や、書く言葉を具体的に指示しています。子供は、具体的な指示があることで、安心してノートづくりができます。

板書のコツ(3/6時間目中盤)

小5国語「『子ども未来科』で何をする」京女式板書の技術 3/6時間目中盤の板書
3/6時間目中盤の板書

板書のコツ① 

例題のスピーチの構成をつかむ。

教科書を読み、山下さんのスピーチの「初め」には何が書かれているかを確かめます。ここには、「提案」が書かれていますので、黒板に「提案」と書きます。山下さんのスピーチにプレゼンテーションに使うスライドを作るとどんなことを書くとよいかを隣の人と話し合います。そこで出た意見が「農業」と「学ぶ・体験する」でした。黒板にスライドを表す四角形を書き、その中に「農業、学ぶ・体験」と書きました。このように、学習の手順を全体に理解させます。

「中」では「現状の課題」「課題の分析」「根拠」を教科書のメモから読み取り、黒板に書きます。そして、「初め」と同様に、山下さんのプレゼンのスライドを隣の人と話し合いながらそれぞれのノートに書き、学習を進めます。時間を決めて、「終わり」までを取り組み、全体で確かめながら板書します。このとき、ノートには自分たちの考えが書かれていますので、板書を改めてノートに書くことは必要ありません。スライドを考えさせることで、話のポイント(要約)や話す順序をつかませることが大切です。

板書のコツ② 

例題のスピーチから「事実」を見付ける。

「山下さんのスピーチメモ」などからスライド構成を書いた板書を見て、「事実」がどのようにスピーチの中で示されているかを考えることを伝えます。板書のめあての隣に書いた「事実」に青色のチョークで丸を付け、黒板に書かれたものの中で、山下さんが「事実」として話したもの全てを青色のチョークで丸く囲みます。子供たちに、「スピーチのコツ」として、気付くことはないかと問います。子供たちは、スピーチの「中」に「事実」が書かれていることを見付けました。そこで、自分のプレゼンを考えるときにも役立つように、黒板の下段に「〈中〉には、事実・資料・根拠を書こう」と書き、雲形で囲みました。

板書のコツ(3/6時間目後半)

小5国語「『子ども未来科』で何をする」京女式板書の技術 3/6時間目後半の板書
3/6時間目後半の板書

板書のコツ①

プレゼンのコツを考える。

プレゼンのコツを1つ見付けた子供たちから、スピーチ中の「意見」の場所についても考えが出されました。「意見」には違う色で印を付けたいという発言がありましたので、赤色のチョークで四角く囲みました。

「意見」は「初め」「終わり」に必要であるという発言がありましたので、これもプレゼンのコツとして黒板の下段に書き、雲形で囲みました。ここで子供たちは、黒板の山下さんのスライドの位置が「初め」「終わり」が「中」より少し高い位置にずれて書かれていたことに気付きました。これは、指導者が授業の初めに仕掛けておいたものです。「なぜ、ずらしたのか」を子供たちは考えていました。授業者は、「相手にしっかりつたえたい」ことを意識させようと意図していました。

板書のコツ②

板書が自分のプレゼンを考える手引に。

授業の後半では、自分の提案のためのプレゼンテーションを考えます。一番伝えたいことがスピーチのどこにあるとよいか、可視化された板書やノートを見ながら、自分のノートに書いていきます。それが、前時までに集めた「資料」「体験」などをスピーチのどこに入れると説得力が増すかを考える手がかりになります。

これまでの学年では、発表のために原稿を書いていた子供たちですが、原稿を読むのではなく、聞き手によりよく伝えるために、聞き手を見て話すことをしてほしいと考えました。相手意識をもち、相手を見ながら話す、そのために要点を絞ったスライドのみを用意し、自分の言葉で伝えてほしいのです。自分の言葉で伝え、その言葉を互いに受け取り、言葉でやり取りを交わす、言葉で関わり合う子供たちを育てたいものです。

 

構成/浅原孝子

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