小4特別活動「10才の節目~5年生に向けて~」指導アイデア

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【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア
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帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
小4特別活動「10才の節目~5年生に向けて~」指導アイデア
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多くの4年生が10才を迎えている年度末。高学年である5年生を目前に控えた子供たちに、希望や目標をもって生きることの意義や、現在および将来の自己の生き方を取り上げることで、楽しく豊かな学級や学校の生活づくりにも主体的に関わることができるようにしたいものです。
本実践では、自己の生き方についての考えを深めることができるよう、これまでの自分の生活を振り返りながら10才を1つの節目と捉え、高学年である5年生に向けて「なりたい自分」について学級のみんなで考えます。これまでの成長に気付くとともに、「なりたい自分に向けてがんばりたい」「将来の自分をよりよい姿にしたい」という願いが芽生えていくことをねらっています。
今の学びが将来につながることを知り、友達と認め合い、高め合ってともに成長していくための意思決定を工夫した学級活動(3)の実践を紹介します。

執筆/青森県八戸市総合教育センター主任指導主事・馬渡静香
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
 青森県公立小学校校長・河村雅庸

年間執筆計画

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4月 学級活動(3) ア 4年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ 歯ぴかぴか大作戦
7月 学級活動(3) ウ 見直そう自分たちの読書
9月 学級活動(1) オリジナルチャレンジ集会をしよう
10月 学級活動(1) 4年生仲良し集会をしよう
11月 学級活動(2) エ よりよい給食のマナー
12月 学級活動(1) 『学校をきれいにしよう大作戦』をしよう
1月 学級活動(1) 2年生と笑顔いっぱい集会をしよう
2月 学級活動(3) ア 10才の節目~5年生に向けて~
3月 学級活動(1) 4年生がんばったね集会をしよう

学級活動(3)について 

学級活動(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」は、現在及び将来の生き方を考える基盤になるように、学校の教育活動全体を通して行うキャリア教育との関連を考慮して、設定している年間指導計画に沿って、教師が意図的に指導する内容になります。
また、本題材は「ア 現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成」の内容です。学級や学校での生活づくりに主体的に関わり、自己を生かそうとするとともに、希望や目標をもち、その実現に向けて日常の生活をよりよくしようとすることをねらいとしています。

事前の指導

1.「事前アンケート」を活用
学級の現状や子供たち一人一人の思いや考えを事前に調査し、本時の導入時に活用することで、課題意識をもって授業に臨むことができます。また、意思決定の実践後の振り返りを見返して、自己の成長を実感することにもつなげることができます。
成人年齢は18才に引き下げられました。しかし、成人式は20才で行われることから、その「二分の一」の年齢に当たる「10才」についてのイメージや、「10才」としての現在の自分をどのように感じているか、アンケート調査を行います。ICT端末を使用し、アンケートをとることも考えられます。

図表1

<事前のアンケート例>
①「10才ってどんな年齢かな」
②小学校に入学してから成長したと思うこと
☆1~3年生で記入した「キャリア・パスポート」を振り返り、特に自分が成長したと感じることを書きます。
☆「成長できた理由」
 自分・家族・友達・先生・地域の人
③自分のよさ
④どんな大人になりたいのかな。
※記入した内容を本時で話し合います。

図表2・3

<アンケート結果>
円グラフなどで可視化することにより、子供たちがどんな点で成長を感じているのかが分かりやすくなります。
具体的な場面を事前に把握しておくことで、短冊などのカードにして準備することもできます。子供たちが互いに共感し合えるように、分類整理しておくといいでしょう。

2.資料準備

図表4

(1)「保護者からのメッセージ」
〇学級だよりなどで、「10才の節目」の授業を実施することを紹介します。その際、「20才になったときに、どんな生き方をしている人になっていてほしいのか」のメッセージをもらうようにします。

「10才の節目」という時期において、自己のよりよい生き方について考えてほしいという教師の願いを、保護者にも伝えます。
※家庭の状況により、メッセージをもらうことが難しいと考えられる場合があるときには、教師からのメッセージとします。

(2)「身近な20代からのメッセージ」
〇ロールモデルとなる20才の大人からのビデオメッセージを活用するのもいいでしょう。
大人たちの、自分たちと同年代の頃の思いや努力、小学校での学びが将来につながっていることを知ることで、これから将来の生き方に希望をもつことにつながります。

<話していただくポイント〉
①これまでの成長の喜びに共感する言葉
②将来について不安なことに対して、「自分のよさ」を生かして、可能性を信じ努力していこうというアドバイス

本時の展開

題材:「10才の節目~5年生に向けて~」

学級活動(3)の学習過程
学級活動(3)には、「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の4つの段階の学習過程があります。それらの過程において、互いの成長やよさを認め合ったり、話合いの場を設けたりすることで個々の考えや可能性を広げるようにします。学級での話合いを生かして自分に合っためあてや実践方法を意思決定し、強い決意をもって実践できるようにしましょう。
①課題の把握「つかむ」
「10才」について考える。
これまでの成長を振り返る。
②可能性への気付き「さぐる」
「20才の自分」について願いをもち、自分のよさや可能性、「なりたい自分」について考える。
③解決方法等の話合い「見つける」
「なりたい自分」に向けて、これから5年生までに取り組むとよいことを、学級みんなで話し合う(ペアやグループでの話合いを活用するのもよいが、必ず学級全体でも話し合うようにする)。
④目標の意思決定「決める」
「なりたい5年生」に向けて、自分に合った具体的な個人目標(内容や方法など)を決め、実践への強い決意をもつ。

本時のねらい

これまでの生活や学習を振り返って自他のよさや成長に気付くとともに、「なりたい5年生」に向けて今から取り組むことを学級みんなで話し合い、具体的なめあてや実践方法を意思決定することができるようにする。

導入【つかむ】

これまでの成長の振り返り
授業の導入では、本時の題材を「自分ごと」として捉えることができるようにします。
事前アンケートや、「キャリア・パスポート」を活用しながら、これまでの自分の成長や頑張りについて、歩みを共有していきます。

「10才」ってどんなとしかな? 先日のアンケート結果を見てみよう。

10才ってどんな年れいかな
23件の回答

 20才の半分のとし
 大人になるじゅんび期間の始まり
 とびばことか色々なことができるようになるとし
 学校の副リーダー「5年生」になる前の年れい
 年れいが2けたになるとき

大人になる半分だ。

特別なとしって感じがする。

20才は、成人式のとしだね。大人への折り返し地点が「10才」です。生まれてから、みんなは10年たちました。「節目」を迎えるとしだよ。

さて、「10才の節目」の今、みんながどんなところで成長を感じているのかを見てみよう。

→アンケート結果をもとに、気付いたことを発表し合います。

図表6

<1~3年生の「キャリア・パスポート」を提示する>
大型モニター等で表示

では、小学校に入学してもうすぐ4年間がたつけれど、どんなことができるようになったかな?

ぼくは、字がきれいに書けるようになったよ。1年生のときの「キャリア・パスポート」を見たら、字を習い始めたときはふにゃふにゃのひらがなしか書けなかったのに、自分でもすごく成長したなあって思った。でもこのときは一生懸命書いたんだろうな。

私は、下学年の世話ができるようになったよ。「お兄さん・お姉さん、そうじの仕方を教えてくれてありがとう」って書いてあった。6年生のお兄さんやお姉さんにたくさんお世話になったけど、今は私が下学年に「どうしたの?」って言って手伝ってあげられるようになった。

4年生になってクラブ活動も始まって、3年生のときよりも、もっといろいろなことを頑張ってきたな、って思いました。

これまでの「キャリア・パスポート」を見ると、いろいろなところで成長したことを実感することができるね。

図表7

図表8

図表9

【つかむ】場面の板書
事前のアンケート結果や子供たちの発言を取り上げて、小見出しを付けて分類・整理しながら板書していきます。

図表10

事前のアンケートから円グラフを示し、「学習・異学年交流(クラブ活動や縦割り班活動)・学校行事・体の成長……」というように出された意見を分類して、気付いたことを発表し合い、互いの成長や頑張りを共有していきます。
また、これまでの「キャリア・パスポート」を振り返ることで、互いの成長を共有し合うようにします。

努力してできるようになったことがいっぱいだね。
うまくできなかったときはどうしたのかな?

さか上がりができないとき友達が励ましてくれたんだよ。一緒にやろうって、こつを教えてくれた。うれしかったなあ。

私もうまくいかないことがあったときに声をかけてもらったな。

先生に「いつも○○を頑張っているね」と赤文字で書いてもらえたのがうれしかったな。

みんな一人一人違うけれど、一歩一歩、大きく成長してきたね。

自分が努力してきたことだけでなく、周囲の人々の支えについても、いろいろな人に支えられて今の自分があることに気付き、感謝の思いをもつことができるようにします。
また、事前アンケートで把握していた少数意見にも触れるようにし、全員の子供たちが、題材を自分事として捉え、授業に参加できるようにします。

10才はこれまで成長してきた1つの節目だと分かったね。「10才は二分の一成人」だよ。
では、これから成人までの10年はどうしていきたいかな。

☆本時のめあてである、「『二分の一成人の一歩』をふみ出そう」を提示します。

めあてを提示する先生

展開【さぐる】

「どんな大人になりたいのか」について話し合います。

20才になるとできることがたくさん増えて、「もう大人です!」かな?
お世話をしてもらうことも減ったし、自分1人で決められるようになったし。大人の生き方に近付いたんじゃない?

どうかなあ。大人ってどんな生き方をしているんだろう?

「どんな大人になりたいのか」事前のアンケート結果をもとにして、今の自分の生き方との違いを考えていきます。

人にやさしくいつもえ顔でいる人
みんなのために働く人
高れい者とかにやさしく声をかけられる人
あきらめないでやりとげるところ
人に親切でだれにでも心を開く人
いろいろの人を助けてくれるやさしい人
人の役に立ったり、人助けをしたりする人間
いろんな人を助ける大人
あきらめないで最後までやる人

実は、20才になった大人の人からメッセージが届いているので紹介しますね。

<資料>「20代からのメッセージ」

※事前に打合せを行い、これまでの成長の喜びに共感する言葉や今の学びや努力が将来の自分につながっていることを言ってもらうようにします。

20代からのメッセージ

笑顔で話してくれていたね。

私も、あんな笑顔になれる大人になりたいな。

そのためには、自分のよさを知っていることが大切!

少し苦手でも、励ましてくれた友達や周りの人がいたと言っていました。

「なりたい自分」に向けて、今、頑張ることが大切なんだね。

展開【見つける】

「なりたい5年生」を目指して、今の自分からステップアップするために取り組むことを話し合います。

大人に向けてのこれからの10年間は、よりよい自分への挑戦の10年間になるよ。まずは、どんな5年生になりたいか考えて、5年生に向けてステップアップするために頑張りたいことをみんなで見付けていこう。

私は、今の5年生みたいに、6年生を助けて、プレリーダーとして頑張りたい。そのためにまず、下級生のお手本として、しっかり生活や学習に取り組みたいです。

ぼくは上級生や友達に励ましてもらって頑張れたことがたくさんあったから、困っている下級生がいたら進んで助けてあげる5年生になりたいな。そして、クラス替えをして新しい友達と行動するときも、相手と気持ちよく付き合っていきたい。

私も困っている子に、優しく声をかけていきたい。「いいね!」「ありがとう」というふわふわ言葉をたくさん使える人になりたいな。

ぼくは、面倒なことはあきらめちゃうから、責任をもって働く大人になるために、まずは決めたことを継続してできる自分になりたいな。

日常生活や学習で、例えばどんなことに取り組めばいいかな。

毎日、自主学習に計画を立てて取り組んだらいいと思います。あと、めあてを決めるのも大切じゃないかな、と思います。

「なりたい5年生」に向けてどんなときに、どんなことに取り組んだらよいかをグループの友達と話し合ってたくさん見付けよう。

(小グループで、互いの考えを交流し合い、話し合う)
〇「なりたい5年生」に向けた具体的なめあてや取組について考えを出し合い、意見を交流していきます。

高学年を目前にした2月の実践です。「できなかったことをできるようにする」「苦手なことに取り組む」だけではなく、自分のよさや得意なことを生かし、伸ばしていこうという思いをもてるようにしましょう。

〇グループで話し合ったことを発表し合って学級で共有します。出された取組をもとにさらに学級全体で話し合ったりより具体化したりします。

グループで話し合ったことを出し合って終わりにせず、それを受けて学級全体で話し合い、多様な実践方法を見付けることができるようにします。

終末【決める】

「見つける」の段階で、学級で話し合ったことを生かして、一人一人の子供が自分に合った具体的なめあてや実践方法を意思決定できるようにします。

5年生になるまでのこれからの1か月半で、一人一人が取り組むめあてが決まったね。「なりたい自分」に向けて笑顔で頑張り、「ニ分の一成人」の一歩にしていこうね。

〇友達に「励まされて頑張れた」「自分の考えを話したときに、いいねって言ってもらえてうれしかった」といった、成長の原動力となる周囲からの力にも目を向けることで、学級みんなで「なりたい5年生」を目指してともに成長していこうという願いや思いを共有します。

板書例

※「家の人からのメッセージ」は、学級の家庭の状況に合わせて今回は取り上げないようにしたり、教師が簡単に触れるだけにしたりするなど、悲しい思いをする子供がいないように十分配慮するようにしましょう。

事後の指導

①決 めたことの実践

朝や帰りの会で、取組の様子を伝え合い、頑張りを認め合うようにしましょう。自己肯定感や自己効力感の向上につながります。
教師が取組のよさや努力の様子を取り上げて、励ましたり、頑張りを認めたりしましょう。実践意欲が継続します。
子供たちの取組状況により、必要に応じて、目標を修正することも考えられます。その際にも教師が適切に助言するようにします。

② 振り返り

まずは1週間など期間を決めて取り組み、振り返りを記入します。
めあてが達成できた場合は、さらに次のめあてを設定して、アップデートしていくようにします。

ワークシート記入例

③ カードの掲示

学級の一人一人がめあてに向けて取り組んだ振り返りを記入したカードを掲示し、見合うようにすることにより、互いのよさや頑張りを認め合う気持ちが高まります。

④ 学級通信等で保護者に伝える

将来に向けて歩みを進めている姿や頑張りを保護者と共有することで、学校と家庭との連携を一層強め、教育活動の質の向上を図ります。

学級通信例

※道徳科との関連を図る
内容項目「A 個性の伸長」「A 希望と勇気、努力と強い意志」に関連付けて、自分を輝かせて生きるために、「自分らしさ」を磨いていこうとする実践意欲を高め、態度を身に付ける授業を行うことも考えられます。

構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈


安部恭子

監修
安部恭子
帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと カバー

楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと

特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!

楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


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