小4国語科「スワンレイクのほとりで」全時間の板書例と指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小4国語科「スワンレイクのほとりで」(光村図書)の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/鹿児島県霧島市教育委員会課長補佐兼指導主事・尾崎裕樹
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、登場人物の様子や行動、気持ちや性格、情景を関連付けながら教材文を読み、想像を広げていきます。その際、読む観点を決めて読んだり、教材文には書かれていない、主人公が書こうとする文章を考えたりして交流することで、それぞれの感じ方の違いの発見を楽しみ、物語をみんなで読み合う楽しさを実感できるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、物語を読んで考えたことを伝え合う言語活動を設定します。
本教材は、一人称視点で書かれており、行動や内心語、情景などが巧みに描かれています。また、作品の構成が、「現在-過去-現在」となっており、これまでの学習とは違ったストーリー展開を味わうことができるようになっています。
授業では、登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて読み、具体的に想像していきます。その読みのまとめとして、教材文には書かれていない、主人公がこれから書こうとしている文章について想像し、考えたことを話し合います。
自他の感じ方や解釈を比べながら話し合うことで、他者との感じ方の違いに気付き、物語を読み、考えを共有する楽しさを味わうことができるようにします。さらに、新たな経験や、人や文化との出合いを描いた作品や「現在-過去-現在」の構成をもつ作品について教師がブックトークをしたり、関連図書コーナーを設置したりして、多くの本に親しむことができるようにします。
4. 指導のアイデア
児童が主体的に読んでいくためには、これまでの物語で学んだことを生かしていくことが大切です。
また、登場人物の行動や気持ちの変化を考えて交流することで、対話を促し、物語をみんなで読み合うことや考えを共有する楽しさを味わわせることも大切です。
第1時では、これまでに読んだ物語を想起し、どんな読み方をしたのかを振り返ることで、登場人物の気持ちや性格などを具体的に想像しながら読むことを確認します。教材文を読み、感想を交流し合うことで、「アメリカでの経験」「人との交流」に着目させ、主人公「歌」の気持ちがどのように変化していったのかという課題意識をもたせ、学習課題を焦点化します。児童の感想は端末で作成し、全児童が一覧で見られるようにしておくと、共通点が見いだしやすく、課題の焦点化が図れます。
第2時から第5時では、場面ごとに「歌」の気持ちを確認し、観点を決めて読み深めていきます。ここでは、「歌」の思いとその理由をじっくりと考えさせ、児童一人一人が考えをもてるようにします。その上で、同じ観点や違う観点で読んだ児童と交流することで、一人一人の感じ方の違いに気付くよう促します。同じ観点であるのに考え方が違っていたり、違う観点なのに考えが似ていたりするなど、学級全体で読む必然性が生まれ、みんなで物語を読む楽しさを味わうことができます。他者との交流により、自分のものの見方や考え方が広がることを実感できるようにしましょう。
第6、7時では、これまでの学習を生かして、教材文には書かれていない「歌」が書こうとしている文章について考え、交流します。その際、これまでのノートやワークシートなどの学習の跡を見直しながら考えることで、理由を明確にして考えを書くことができるようにします。これまでの学習を生かして、友達の考えの共通点や相違点に着目したり、友達の考えのよさを伝えたりします。
5. 単元の展開(7時間扱い)
単元名: 読んで考えたことを、友達と伝え合おう
【主な学習活動】
(1時)
これまでの物語の学習で学んだことを振り返り、「スワンレイクのほとりで」を読んで感想を交流し、学習課題と学習計画を立てる。
(2時)
物語の組み立てや設定を確認し、「歌」がグレンと出会う前にアメリカで見聞きしたことや経験したこと、そのときの「歌」の気持ちを読み取る。
(3時)
グレンと出会い、野菜畑に行くまで、野菜畑からスワンレイクまでの「歌」の気持ちを読み取る。
(4時、5時)
「歌」と「グレン」の人物像を考え、「歌」がもつようになった思いについて読む観点を決めて考え、同じ観点の友達と交流したり、違う観点の友達と交流したりして、考えを広げる。
(6時)
物語の最後で「歌」が書こうとしていることについて、理由とともに考える。
(7時)
考えを伝え合い、自分の考えと比べて感じたことを伝え合う。その後、単元を振り返り、単元を通して身に付けた力を確認する。
板書例、発問例、端末活用例と全時間の指導アイデア
●「主体的な学び」のために
導入では、これまでに学んだ「白いぼうし」「ごんぎつね」の学習を振り返り、行動描写や会話、情景描写から読んだこと、場面を比べて登場人物の気持ちの変化を捉え、自分の考えをもったことを「スワンレイクのほとりで」の学習に生かしていくことを確認します。
教師が児童に「白いぼうし」「ごんぎつね」の学習で活用したワークシートやノートを提示することで、既習の学習内容を想起できるようにします。
観点を決めて初発の感想を短く書きます。観点としては、「登場人物について」「出来事について」「表現について」とします(ただし、時間がかかることが考えられるので、全ての観点を書く必要はありません。できる範囲で記入します)。児童が書いた感想を観点ごとに一覧にして見比べることで、人物の性格、出来事による気持ちの変化に気付くことができるようにし、児童一人一人が自分の問いをもつことができるようにします。
1人1台端末で感想を書くようにすると、一覧にでき、感想を共有しやすくなります。児童の問いを整理して、気持ちの移り変わりを想像して考えたことを伝え合うという学習課題へと焦点化していきます。人物の性格や場面ごとの気持ちなど個々の問いについては、学習計画の中に位置付け、単元を通して読む中で解決していくようにします。
〈 第1時の端末の画面例 〉感想一覧表の例「登場人物について」
● 端末利用の方法や効果
感想は、児童の名前を添えて、観点ごとに一覧にすることで、個々の児童がどんな感想をもったかが分かります。全観点を通して、学級全員の児童の感想を一つ以上取り上げることで、みんなの感想を大切にするようにします。みんなの感想を短くまとめ、次時以降の学習に活用します。
<教師の発問、児童の発言例>
~学習課題焦点化の場面~
みんなの感想を出し合い、まとめました。みなさんは、この学習で、どんなことを読んで考えていきたいですか。
歌とグレンの性格をもっと詳しく考えていきたいです。
登場人物はどんな性格なのかを考えていきたいのですね。では、性格を考えていくと、どんなことが分かるのでしょうか。
性格を考えると、その人物が行動したわけや、気持ちが分かると思います。
歌とグレンが交流することで、歌がどんな気持ちになったのか考えたいです。
性格を読むと、気持ちが想像できるのですね。ごんぎつねでも登場人物の気持ちを考えましたよね。ごんと兵十の気持ちは、どうだったかな。
最初と最後で変わっていきました。歌も最初と最後は変わっていると思うので、どう変わったか考えたいです。
何で気持ちが変わるんだろうね。感想一覧表を見てみようか。
感想一覧表を見ると、スーパーマーケットや野菜畑でも気持ちが違うね。
スーパーマーケットの出来事では、文化の違いについて考えているけど、野菜畑では、グレンが歌の気持ちに関わっていると思います。気持ちが変わっていっていると思います。
なるほど。アメリカでの経験や人物との交流が歌の気持ちと関わっていて、歌の気持ちを変化させているようですね。では、全体の学習課題をどうしたらよいでしょうか。
アメリカでの経験や人物との交流から、歌の気持ちの変化を考えるのがいいと思います。
気持ちの変化を考えるのは大切だけど、自分たちの考えも大事だと思います。
(状況に応じて、教科書の学習のページも参考にしましょう。)
では、みんなにいろいろと出してもらいましたが、できるだけ短くまとめましょうか。
「登場人物が経験したことや、他の人物との交流によってうつり変わっていく気持ちをそうぞうしながら読み、考えたことを伝え合おう。」
とまとめましょう。
イラスト/横井智美