小5特別活動「最高学年に向けて」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小5特別活動の指導アイデアです。1月は、<学級活動⑶ア「最高学年に向けて」>を紹介します。
目の前の頑張りが最高学年でのよりよい生活につながることを理解したうえで、自分がなりたい姿を描き、「なりたい自分」に向けて5年生としての今の期間に希望や目標をもって過ごすことができることを目指します。
執筆/滋賀県公立小学校教諭・人見優衣
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
滋賀県特別活動部会顧問 元滋賀県公立小学校校長・鈴木靖彦
目次
年間執筆計画
4月 学級活動⑴ 5年〇組の係を決めよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 地震のときの正しい行動の仕方
7月 学級活動⑴ 1学期がんばった会をしよう
9月 学級活動⑵ イ 互いのよさの認識
10月 学級活動⑴ 5年〇組の運動会のめあてを決めよう
11月 学級活動⑶ ウ 目指す自分になるための自主学習
12月 学級活動⑴ 来年の1年生と交流会をしよう
1月 学級活動⑶ ア 最高学年に向けて
2月 学級活動⑴ 6送会で感謝の気持ちを伝えよう
3月 学級活動⑴ 5年〇組の一年を振り返る会をしよう
1 学級活動⑶アについて
今号で紹介する学級活動⑶ア「現在や将来に希望や目標をもって生きる態度の形成」は、子供たちが将来に向けた明るい希望や目標をもって生活する自己実現に関わるものであり、自己のよさや可能性を感じて、一人一人が主体的な意思決定に基づく実践につなげることをねらいとしています。子供たちが具体的な目標を決めて取り組み、それを振り返ることで「今の自分」に価値や意味を感じられるようにします。
2 題材「最高学年に向けて」について
5年生の3学期は、最高学年に向けての助走期間です。教師としては、最高学年としての自覚やリーダーシップを育てたい気持ちが出てきますが、子供たちは最高学年になることにやる気を高める一方で、「一体何をすればよいのか」「自分に務まるのか」そんな不安や悩みを感じていることもあります。
本実践では、「キャリア・パスポート」などを活用して、これまでの自分の取組等を振り返り、よさや成長に気付くようにするとともに、目の前の頑張りが最高学年でのよりよい生活につながることを理解したうえで、自分が目指す姿を描き、「なりたい自分」に向けて5年生としての今の期間に希望や目標をもって過ごすことができるようにします。
3 本時のねらい
最高学年への見通しをもって、なりたい6年生の姿を思い描き、そこに近付くために今の自分が必要なことを話合いの中から見付け、取り組むことを決める。
4 よりよい意思決定に向けた学習過程
学級活動⑶は、現在及び将来にわたってよりよく生きるために、自分に合った目標や具体的な方法を意思決定し、なりたい自分を目指すことができるような自己実現を図る力を育てます。そのために、本時は【つかむ】【さぐる】【見つける】【決める】の4つの段階で学習します。
① アンケート調査
事前アンケートで、子供たちが最高学年に向けてどんな思いをもっているのかを調べます。項目は、「5年生で頑張ったことや、成長できたこと」と「最高学年に向けて心配に思っていること」の2つです。アンケート結果から学級全体の様子を示すことで、自分だけでなく、同じ思いをもつ友達がいるということに気付くことができるようにします。
また、「キャリア・パスポート」を見返して、5年生で頑張ってきたことや成長できたことを振り返ることで、改めて自分のよさを生かしていこうという意欲付けができるようにします。
<事前アンケートの例>
1.5年生で頑張ったことや、成長できたことはどんなことですか。
2.最高学年に向けて楽しみなことや頑張りたいこと、少し心配に思っていることはありますか。
② 6年生にインタビュー
6年生にインタビューをする際には、6年生の担任の先生の協力を得て、進めていくようにします。6年生の子供の思いを引き出しつつ、5年生に伝えてほしい授業者の思いやねらいも理解できるように事前に打合せをしましょう。
<ICT端末の活用例>
アンケート調査は、用紙に記入する方法のほかに、ICT端末を活用して調査する方法があります。これにより、回答の回収や結果のグラフ化などの集計作業を効率よく行うことができます。また、アンケート項目に記述された内容は、各自のICT端末で見ることができるようにすることも効果的です。
6 本時の展開
板書例
【つかむ】
5年生になってから今までを振り返り、最高学年になることへの期待や不安な思いを出し合い、学習のめあてを共有する。
5年生もあと3か月ですね。高学年になり、学習もそうですが、委員会活動やたて割り遊びでのお世話など、これまでいろいろなことに取り組んできました。キャリア・パスポートとアンケートの結果を見ながら、そのなかで、頑張ったことや成長したことを振り返ってみましょう。
私は、初めての委員会活動で、図書当番を頑張りました。休み時間も活動するのはいやな気持ちもあったけど、そのおかげで今まで図書室を当たり前に使うことができていたことに気が付きました。
ぼくは、運動会の応援団に挑戦しました。応援を考えるのは難しかったのですが、6年生がたくさん考えてきてくれていて、すごいなと思いました。下学年に教えに行くのは初めてで、不安だったけど、頑張りました。
この1年間を見ていて、みんな本当によく頑張ったと思います。
さて、この前、みんなが書いてくれたアンケートの2つ目の結果を見てください。最高学年に向けて楽しみに思っている人もいるけれど、なかには心配なことを書いている人もいましたね。
私は6年生になったら委員会活動や登校班のリーダーなどで、今の6年生のようにできるか、少し心配しています。
ぼくは6年生になったら集会での低学年のお世話や、たて割り活動の計画などを中心になって行うので、楽しみですが少し不安もあります。
では、今日のこの時間を使ってみんなで話し合い、最高学年に向けての自分の目標を立てて、心配ごとも解決していきましょう。
【さぐる】
6年生の学校生活を写真や動画資料から知ることで、不安を和らげて最高学年への見通しと、自分はこんな6年生になりたいという意欲をもつことができるようにする。
では、次の「さぐる」の段階では、6年生になった自分をイメージできるようにしていきましょう。6年生ではどんなことをするのでしょうね。先輩たちの写真や映像を見て、確かめてみましょう。
6年生の1年間の活動を知って、どう思いましたか。
ぼくは「こんなにいろんなお世話をしてくれて、ありがとう」と思いました。
私は「かっこいいな」と思いました。自分のことだけでなく、みんなのために行動したいです。
6年生はあと3か月で卒業します。次は君たちが最高学年になります。あなたはどんな6年生になりたいですか。
登校班の班長が、上靴を忘れた1年生のために一緒に職員室に行って、上靴を借りていました。「1年生の困っている気持ち」になって、一緒にするところがすごいし、かっこよかったです。ぼくもそうなりたいと思いました。
ぼくは運動会の児童代表のスピーチがかっこいいと思いました。苦手なことだけど、挑戦してやりきる姿がかっこいいし、自分も挑戦する姿を見せられる6年生になりたいと思いました。
私も運動会のときに、赤組の応援団長がかっこいいと思いました。振り付けの案をみんなで話し合う前からいくつも考えたり、小道具づくりも一人一人の考えを生かして進めたりするところに憧れました。
憧れの最高学年の姿と問われて、具体的な姿を想起して話すことは、難しいかもしれません。そこで、6年生の姿を写真で提示することで、目指したい姿を見付けたり、考えたりするための材料とします。下学年から6年生への感謝の声、手紙などがあれば、それを活用することも考えられます。
【見つける】
本時のめあてを示し、目指したい6年生の姿に向けて、これから取り組むことを話し合う。
「こんな6年生になりたい」がどんどん出てきましたね。実は、6年生に協力をしてもらって、インタビューをしてきました。「6年生になって頑張っていること」と「5年生までの経験が生かされたこと」の2つを質問しています。
※インタビュー動画について
今回は6年生にインタビューをしましたが、質問内容によっては6年生の担任や校長先生にインタビューすることも考えられます。
6年生へのインタビューを見て、5年生の今から頑張ろうと思うことは見つかりましたか。
私は、インタビュービデオで6年生が1年生にそうじを教えることや、登校班で下学年に声をかけることを聞いて、今から自分たちにもできると思いました。
ぼくは、6年生が入学式の準備やプールそうじなど、学校のみんなのために一生懸命頑張っている話を聞いて、かっこいいと思いました。だからインタビューにあったように、今から教室の本棚の整理や黒板消しなど、当番活動や委員会活動でしていることを今まで以上にしっかりと取り組むようにするといいと思いました。
私は、係活動で学級のみんなが楽しめたり、学級が過ごしやすくなったりしているかを考えることを一番大切にしようと思います。きっとそれが、1年生や下学年への思いやりや、インタビューにあったみんなにとってもっとよい学校にするための委員会活動の工夫につながると思うからです。
はじめは、最高学年で目指したい姿と今のつながりが見えずに心配に思っている人もいたかもしれません。でも、みんなで考えていくなかで、6年生ではこれまでの経験が生かされることや、これからの努力が目指したい未来の自分の姿につながるということが分かってきましたね。
子供たちがこの場面で一番知りたいことは、どうしたら目指したい姿に近付くのかという見通しです。6年生へのインタビューで5年生までの経験や活動が生かされていることを知ることで、目指したい姿と今取り組むことがつながっていることに気付くことができます。ここで、最初に捉えた5年生での成長、頑張れた自分を再度押さえ、決めた目標に向けて努力することができる自分をイメージできるようにするとよいでしょう。
【決める】
最高学年に向けてこれから取り組むことを考え、具体的な行動目標を立てる。
では最後に、みんなの考えを参考にして、自分の目指したい6年生の姿と、それに向けて5年生の今から意識して取り組むことを決めましょう。
意思決定では、生活の中で実際にできそうな、自分に合った具体的な実践目標を立てられるようにしましょう。そのために、目標にはどのような姿を目指して、何をするかをできるだけ具体的に書くようにします。決めたことはまず一定期間実行し、相互に振り返り、互いの頑張りに気付くようにします。その後も定期的に振り返り、必要に応じて支援するなどして継続的に実践し、今後の生活を意識できるようにします。
7 事後の指導
【実践する】
意思決定しためあてを意識して、実践していきます。朝の会や帰りの会の時間を活用して、自分の立てた「めあて」と行動目標を確認したり、振り返りをしたりする時間をとるようにします。
今日から「6年生へのチャレンジ週間」が始まります。自分の立てた「めあて」と行動目標を確認して、隣の人に宣言しましょう。隣の人は励ましの言葉を伝えたり、アドバイスしたりしてくださいね。
ぼくは、苦手なことに挑戦できるかっこいい6年生になりたいから、朝学習の時間に苦手な算数の割合の勉強を1ページずつします。
私は、1年生にも優しい6年生になりたいから、低学年から「ありがとう」を1日5回言われるように心配りをしたり、クラスのみんなにも優しい気持ちで接したりするようにします。
【振り返る】
チャレンジ週間、よく頑張りましたね。取り組んでみてよかったことを振り返りましょう。
私は優しい6年生になりたいから「ありがとう」を5回言われることを目標にしていました。相手の気持ちを考えて何をすればいいかを考えて、自分からやっていくうちに、だんだん感謝されることが増えて、うれしかったです。
ぼくは隅々まで丁寧に時間いっぱいそうじをすることを目標にしました。昇降口のそうじをしていると、隣のそうじ場所の6年生から「頑張っているね、ありがとう」と声をかけてもらえました。なんだか嬉しくて6年生になる自信が出てきました。6年生を送る会ではしっかりと「ありがとうの気持ち」を表したいと思います。
なりたい姿に向けて、今できることを積み重ねると、だんだんと近付くことができるのですね。今回はこの1週間で終わりですが、なりたい6年生に向けてこれからも積み重ねていけるといいですね。
構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝
監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106