「特別支援教育就学奨励費」とは?【知っておきたい教育用語】

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特別な支援を必要とする子どもがいる家庭に支給される「特別支援教育就学奨励費」。今回は、特別支援教育就学奨励費の概要や支給要件などのほか、特別支援教育における教育と福祉の連携についても考えていきましょう。

執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム

特別な支援を必要とする子ども・家庭への経済的支援「特別支援教育就学奨励費

特別支援教育就学奨励費
特別支援学校や特別支援学級、通級指導教室などに通っている子どもがいる家庭を対象に、通学費や学用品費、給食費などの一部を国や地方公共団体が支援する制度。

特別支援教育就学奨励費は、1954年6月1日に公布された「特別支援学校への就学奨励に関する法律」に基づいて支給されるものです、なお、この法律の目的は以下の通りです。

第1条 この法律は、教育の機会均等の趣旨に則り、かつ、特別支援学校への就学の特殊事情にかんがみ、国及び地方公共団体が特別支援学校に就学する児童又は生徒について行う必要な援助を規定し、もつて特別支援学校における教育の普及奨励を図ることを目的とする。

法令リード(ウェブサイト)「特別支援学校への就学奨励に関する法律」昭和29年法律第144号

また、第2条では各都道府県に対して、以下のものの全部または一部の支弁を命じています。

①教科用図書の購入費
②学校給食費
③通学または帰省に要する交通費や、付添人に要する交通費
④学校に付設された寄宿舎に居住する場合に伴う経費
⑤修学旅行費
⑥学用品の購入費

上記のほか、地方公共団体によっては、職場実習や校外活動、交流学習などの交通費・参加費を支給する自治体もあります。こうした特別支援教育就学奨励費の支給によって、特別な支援を必要とする子どもがいる家庭にも、教育の機会均等の確保が図られています。

支給対象者や支給時期、金額について

特別支援教育就学奨励費は、以下のいずれかに該当する子どもの保護者が対象です。

●特別支援学校に通う子どもの保護者
●小中学校の特別支援学級で学ぶ子どもの保護者
●通常学級で学ぶ子どものうち、「学校教育法施行令第22条の3」に定めた障がいの程度に当たる子どもの保護者

支給方法には「金銭支給」と「現物支給」の2種類があります。東京都の場合、金銭支給だと保護者がいったん負担した金額について、7月・12月・3月の年3回の定例払によって金銭が支給されます。現物支給だと、教科書の購入や行事の参加費などを学校が一括契約して直接業者に支払い、現物を支給します。

支給金額は、「支弁区分」によって異なります。東京都では、世帯の収入状況等によって次の4区分に分かれています。

Ⅰ段階
①生活保護受給世帯
②住民税非課税世帯
③所得が生活保護基準の1.50倍未満の世帯
各経費の限度額の範囲内で、実費の全額を支給

Ⅱ段階
所得が生活保護基準の1.50倍以上2.50倍未満の世帯
各経費の限度額の範囲内で、実費の半額を支給(教科用図書、通学費等一部の経費については全額)

Ⅲ段階
①Ⅲ段階を選択した世帯
②所得が生活保護基準の2.50倍以上の世帯
教科用図書購入費、通学費、交流学習交通費等一部の経費のみ支給

施設等
児童福祉施設に措置入所している児童・生徒
ICT機器購入費(新入生用端末)、校外活動等参加費、補助教材費の一部の経費のみ支給

東京都教育委員会(PDF)「就学奨励事業のお知らせ

上記はあくまでも東京都の支弁区分であり、支給時期や支給額の基準などは自治体によってさまざまです。また、特別支援教育就学奨励費の制度を利用したい場合、学校を通じて申請することができます。自治体によっては電子申請も可能です。

特別支援教育における教育と福祉の連携

特別支援教育就学奨励費のほかに、文部科学省では教育と福祉の連携を強化し、特別な支援を必要とする子どもとその家庭の支援を推進しています。

①相談窓口の一本化
教育委員会と福祉部局が連携し、相談窓口を一元化している地方自治体の例を参考として、教育センターや保健所、発達障害者支援センター、児童発達支援センターなどの関係機関の相談窓口を整理。保護者が相談したいとき、自治体のどこの部署や機関に相談すればよいのかをわかりやすく示す。

②保護者支援のための情報提供の推進
保護者の福祉制度の理解および利用を促進するために、支援の情報や相談窓口が一目でわかるような「保護者向けハンドブック」を作成し、継続的にその活用と周知を図る。

③保護者同士の交流の場および機会の創出、促進
障害をもつ子の保護者が孤立感や孤独感を感じて、家に引きこもってしまうことなどへの対策として、保護者同士の交流の場を設けるピアサポートなどを推進。教育委員会と福祉部局の連携によって、就学相談や教育相談などの機会を設定し、保護者同士の交流を促進できる取組を実施。

④専門家による保護者の支援相談
相談支援専門員が受講する、障害のある子どもについての知識や経験などを積むことができるような専門コース別研修を積極的に開催すること。

特別支援教育就学奨励費をはじめとした特別支援教育のより一層の充実や制度の整備、相談窓口へのアクセスなどは今後ますます重要になってきます。特別な支援を必要とする子どもたちに充分な教育の機会および一人一人に適した学びを提供することはもちろん、保護者への経済的サポートや福祉サービスにも注力していくべきでしょう。

▼参考資料
法令リード(ウェブサイト)「特別支援学校への修学奨励に関する法律昭和29年法律第144号
文部科学省(PDF)「特別支援教育就学奨励費負担等の概要図
東京都教育委員会(PDF)「就学奨励事業のお知らせ」 
文部科学省(PDF)「教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知)」平成30年5月24日

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