自分の役割を自覚し働く意義を理解する「清掃指導」のポイント【主体的に生きる力を育む学級経営の極意⑦】


子供たちが多様な他者と関わりながら社会につながり、主体的に生きる力を育んでいくために、教師はどのような学級経営をしていけばよいのでしょうか。学級経営・特別活動を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に学級経営の本流を踏まえて基礎基本を解説します。第7回は「清掃指導」の指導法について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章
「清掃の時間」の子供の様子は、学校の教育指導の質を表します。いかに、高尚な教育理念を掲げても、その実情は子供たちの清掃の様子に体現されるといっても過言ではありません。「清掃の時間」は、子供が自己の役割を自覚して協働する意義を理解し、社会の一員としての役割を果たすために必要なことを主体的に考えて行動することをねらいとしています。「清掃指導」の特質を踏まえ、「清掃指導のねらい」「具体的な指導事項」「実践上の配慮事項」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 清掃指導のねらい
「清掃指導」の授業は、教育課程上、学級活動(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」のイ「社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」に位置付けられます。学級活動の授業での実践は、題材「当番の仕事」等での活動が展開されています。
学級活動(3)の授業の特質は、「集団思考による個人目標の自己決定(意思決定)」です。個々に違う子供の実態を踏まえ、「共通の問題」として授業を展開します。その過程は、「問題の把握(つかむ段階)」「原因の追究(さぐる段階)」「解決策(見付ける段階)」「意思決定(決める段階)」で行います。最終的に「清掃の時間」における個に応じた個人目標を意思決定できるように指導していきましょう。
「働くこと」の意義の理解を深める指導を行います
「働く」とは、自らが責任を果たすことによって、「他(はた)を楽にする」という意味としてとらえることができます。自らが真剣に清掃活動に取り組み、責任を果たすことが他を支え、他を楽にすることにつながるという話などを例として指導していきましょう。
CHECK② 具体的な指導事項
適切な「清掃指導」を行うためには、子供にわかりやすい具体的な行動の仕方を指導することが大切です。適切な服装、活動場所や活動時間、準備や片付けの方法、場に応じた清掃の方法、用具の使い方、役割分担、グループ編成、協働的な活動の仕方等、教師が具体的な指導事項を明確にして指導していくことが基盤です。
「清掃指導」として具体的な指導項目を取り上げます
①学校で定められた清掃を行うにふさわしい服装で活動します。
②活動時間を確保するために、開始時刻と終了時刻を厳守できるようにします。
③活動内容に応じた適切な人数でグループ編成をします。
④個々の清掃担当は、活動内容に応じて公平に役割を分担します。
⑤具体的な清掃方法を写真などで分かりやすく提示します。
⑥互いの努力を認め合うことを中心とした活動後の評価を行います。
⑦清掃用具を大切に扱い、後片付けまで丁寧に行うようにします。
⑧働くことの意義を理解し、他と協働して活動できるようにします。
⑨定期的に役割を交替し、全員が公平に活動できるようにします。
⑩他と協働して働くことを喜び、感謝の気持ちを抱くようにします。
「清掃指導」は、当番の仕事であるため、各自が責任をもって活動し、活動後の出来栄えも重視することが求められます。子供の発達段階や学級の実態に応じて、指導すべきことを明確にして、勤労観を養う時間となるようにしましょう。

CHECK③ 実践上の配慮事項
「清掃指導」の難しさは、学校内で決められた時間内に活動を終了しなければならないことです。そして、分担された清掃場所を活動の成果としてきれいに仕上げなければならないということです。そのため、何をどの程度の時間で行うのか、清掃場所ごとの明確なタイムスケジュールを示すことが大切です。また、よりよい清掃としてどのような状況が求められるのかを明確に指導しておく必要があります。
特に、現代は、ほうきなど、家庭生活で使用頻度の低い用具も学校では使用することがあります。雑巾の絞り方や掃除用具の適切な使い方を明確に提示できるように配慮しましょう。
協働的な活動となるようにします
「無言清掃」を行っている学校の実践があります。単に黙って掃除をすればよいということではなく、その趣旨を子供たちが理解できるようにしていくことが大切です。特に、清掃の時間は、一部の子供だけで活動することがないようにしなければなりません。グループ内で、役割を分担しつつも、互いに声を掛け合い、支え合い、協働して活動できるように配慮しましょう。

イラスト/池和子(イラストメーカーズ)