小3算数「重さ」指導アイデア《適当な任意単位を使う重さの比較》
執筆/上尾市立尾山台小学校教諭・齋藤礼乃
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫
目次
単元の展開
第1時 身の回りの「重さ」に着目し、身の回りにある文房具の重さを直接比較する。
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第2時(本時)直接比較の限界を知り、適当な任意単位を使って重さを比較する。
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第3時 共通の単位の必要性から、「グラム(g)」を知り、1 円玉を使って重さを測定する。
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第4時 はかりの使い方を知り、はかりを使って重さを測定する。
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第5時 身の回りのものの重さを、適切なはかりを使って測定する。
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第6時 箱に入ったものの重さから、重さの計算の仕方について考える。
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第7時 「トン(t)」を使った重さの表し方を知る。
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第8時 「トン(t)」や既習の単位との関係を考える。
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第9時 まとめ
本時のねらい
直接単位の限界を知り、適当な任意単位を使って重さを比較する。
評価規準
重さを数で表すために任意単位が必要であることに気付き、調べたい物に合わせて任意単位にする物を選んで、重さを測定することができる。(知識及び技能)
本時の展開
前回の学習では、天秤を使って物の重さを比べてみましたね。天秤がどのようになれば重いことが分かりましたか。
重いほうに天秤が傾くので、傾きで下になるほうが重いです。
はさみとのりでは、はさみが下になったのではさみが重かったです。
コンパスとはさみでは、コンパスが重かったです。
乾電池とのりでは、乾電池が重かった。
では、重い順にするとどうですか。
※直接比較をしている様子を写真にとっておき、天秤の傾き具合が分かるようにしておく。
はさみ、のり、コンパス、かん電池を重いじゅんに表しましょう。
コンパス、はさみ、のりでは、コンパスが一番重くて、はさみ、のりの順です。
乾電池はのりより重いから……。でも、はさみとのりを比べないと順番が分からないなあ。
それぞれを比べないと、重い順に並べられないですね。
2つずつ比べるのでは、順番がつけにくいです。
あまり傾かなくて差が分かりにくいものもあったよ。どれだけ重いのかも分かりにくかった。
そうでしたね。2つずつなら比べやすいけれど、4つもあると重い順にしたりどれだけ重いか調べたりするのが難しいですね。どのようにしたら、一度に比べられるでしょうか。
長さのときも「算数ブロックの何個分」で表したから、重さも「〇〇のいくつ分」で表したらいいと思います。
なるほど。重さを「いくつ分」というように数で表すのですね。では、数で重さを表す方法を考えてみましょう。
いろいろな物の重さを数で表す方法を考えよう。
見通し
同じ重さの物がたくさんあるものじゃないとだめだね。算数ブロックか1円玉かな。
同じ重さの物がいくつ分になったときに天秤が釣り合うようになるか調べれば、重さを数で表せるんじゃないかな。
今回は調べるものの重さの違いが少ししかなさそうだから、なるべく細かく重さを調べられるように、1つ分の重さが軽めのものを選んだほうがいいと思います。
自力解決の様子
A つまずいている子
・任意単位にする物を重い物に設定し、うまく「○個分」と数に表せない。
・「算数ブロック5個と1円玉4個」のように1種類のもので表さず、「任意単位いくつ分」と表すことに気付いていない。
B 素朴に解いている子
・任意単位にするものを選び、重さを数で表すことができる。
C ねらい通り解いている子
・調べる物の重さにより、「1円玉何枚」「ブロック何個」など適切に任意単位を選ぶことができる。
・自分の調べた結果と、友達の調べた結果を比べ、重い順に表したり、重さの違いに気付いたりしている。
学び合いの計画
子供たちは 2年生までに長さや広さについて比べる経験や、長さやかさについて任意単位の測定を基に普遍単位で測定する経験をしてきています。また、3年生の長さの学習では、測定する物の形状や大きさなどの特徴に合わせておおよその見当を付けて計器を選択することや、複数の単位で表せることを学習しています。重さの測定でも、測定する物の特徴に着目し、おおよその見当を付けながら適切な計器を柔軟に選択したり、長さや重さの単位を関連付けたりすることが学習のねらいとなっています。
本時では、前時で行っている直接比較の限界に気付くことができるように、比較する物が複数あり、さらに重さの誤差が少ないものを問題場面で提示しています。この重さの差を数字で表すためには、直接比較では難しいことから、任意単位の必要性に気付くことができるようにしていきます。
その際、2年生の学習で経験してきた長さを任意単位で表したことを想起させ、重さも長さと同じように測定することができる考えに繋げていきます。また、任意単位として使うものを子供自身が考え、選べるようにしていくことも、適切な計器を選択する考えに繋がっていきます。
測定の場面では、1円玉、クリップ、算数ブロック、積み木など、重さを調べる物(任意単位)を用意し、グループで1種類選ばせた後、物の重さを任意単位で測定できるようにします。その際、子供一人一人の活動の様子がノートなどには残りにくいことが予想されます。そこで、ICTを活用して活動を記録していきます。測定している様子を学習用端末で写真や動画に記録できるようにすることで、子供がそれぞれ考えた任意単位で使用する物が適切なものであるか、比較検討する場面や評価の場面活用することができます。また、測定の場面でつまずいてしまった子供にも、友達の活動を視覚的に確認でき、理解を深められるようにしていきます。
学び合いの時間では、任意単位で表すことにより、数値として重さを捉え、重さを数値化することにより比較することができるなどのよさを確認します。さらに子供にどのようなものが任意単位として適していたのかを話し合うことで、適切なものを選択して測定する大切さと、普遍単位の必要性を感じさせて次時の学習へ繋げていきます。
ノート例
B 素朴に解いている子
A つまずいている子
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
重さを調べるのにどんな物を使いましたか。結果を確認してみましょう。
僕は1円玉を使いました。はさみが37個、のりが35個、コンパスが42個、乾電池が30個でした。
私はMサイズのクリップを使いました。はさみが74個、のりが70個、コンパスが84個、乾電池が60個です。
私は算数ブロックを使いました。はさみが18個と少し、のりが18個、コンパスが21個、乾電池は15個でした。
4つの物を調べてみて、どんなことが分かりましたか。
どの調べ方でも、一番重いのはコンパスで、一番軽いのは乾電池でした。
クリップで調べると、コンパスと乾電池の重さの違いは24個もありました。
重さの差が数で表せるので、どれくらい違うのかが分かりやすくなりましたね。
でも、数ブロックで調べたら、はさみとのりの重さの差が「少し」だから分かりにくいと思います。
数ブロックで調べた人は早く調べることができたけれど、細かく調べることが難しそうです。
どの調べ方でも、使っているものが違うので結果の数字が違います。同じものが必要です。
では、どんなものを使って調べればよいのでしょうか。
同じ重さで、たくさんあるものを使います。
長さのときのように、世界共通のものがあるんじゃないかな。
では、次回は長さのときのように、みんなが同じ重さの物を同じ数で表す方法を学習していきましょう。
学習のまとめ
- 「あるものの何個分」で重さを数で表すことができる。
- 「あるものの何個分」と数で表すと、重い順や重さの違いをはっきり表すことができる。
評価問題
次の数を答えましょう。
①はさみとのりは1円玉で表すと、どちらがどれだけ重いですか。
②一番重いものと一番軽いものは、1円玉何まい分ちがいますか。
③かん電池の重さを調べます。クリップはSとMのどちらを使えば早く調べられますか。理由も書きましょう。
子供に期待する解答の具体例
①はさみのほうが、1円玉2枚分重いです。
②一番重いコンパスが42枚、一番軽い乾電池が30枚なので、42-30で12枚分違います。
③Mクリップです。理由はSクリップが軽いので枚数が多くなり、調べるのに時間がかかるからです。
感想例
- 重さも、長さと同じように重い順を調べたり、「あるものの何個分」と数字で表せたりすることが分かった。
- 「あるものの何個分」を調べるときに、あまり軽すぎたり重すぎたりするものを使うと、うまく調べられないときがあることに気付いた。
- 今回は「いくつ分」を調べるときに違うものを使ったから結果がバラバラだったけれども、長さと同じようにcmなど共通のもので表せるようにしたい。
板書例とワークシート
イラスト/横井智美、やひろきよみ