【相談募集中】学級崩壊しかけているクラスを立て直したいが、その気力もなく困っています
一人の児童にかかりきりになり、学級が崩れてしまったという相談が「みん教相談室」へ寄せられました。子どもたちが笑い合う学級を取り戻したいが、頑張る気力がなく何をどうすればいいかさえもわからない状況だそうです。これに回答をしたのは教頭、校長をそれぞれ10年間経験した武庫川女子大学非常勤講師の岡田治美先生。その内容をシェアします。
目次
Q.子どもたちが笑い合う教室を取り戻したいが、何をすべきかわかりません
小学校教諭2年目です。本当に子どもたちのことを思って、指導することができなくなってしまいました。
自分の気持ちをコントロール出来ない児童に困っています。その児童は、特別支援学級の児童で、一学期はできそうなことは頑張ってやってみる姿勢があったのですが、二学期になってからは、何もする気がありません。勉強がしたくないからと授業妨害、担任への異常な暴言、暴力が止まらない毎日です。
職場の環境は良く、相談もしているので、助けて貰ってなんとか毎日乗り越えています。学級の子どもたちや、保護者にも理解はしてもらっており、幸いなことに周りの人のその児童への嫌悪感も無く過ごせています。ですが、私がその児童にかかりっきりになってしまうことも多く、他の子どもたちに100%で向き合えない毎日です。他にもかなりしんどい児童が多く、担任1人の体じゃ足りません。
昨年、初任の時も似たような学級を持ち、同じことを繰り返し、毎日頑張ってる子どもたちに対して100%向き合えない毎日を送っていました。それが原因で、去年も今年も、学級が崩れてしまいました。原因もわかっているのですが、周りの目線を常に気にしすぎて、思うように学級経営ができません。特に保護者のことを常に考えながら働いてしまいます。なので、子どもたちのことを本当に思って指導しているのではなく、保護者に後で文句を言われないために指導してしまっている毎日です。
2年目にもなって職員室で泣きながら相談に乗ってもらったり、支援の先生を毎日当ててもらったりしてもらううちに、自分にも自信が無くなり、どんな学級を作りたかったのか、何もわからないようになってしまいました。「もっと努力しなさい」と先輩には言われますが、もうそこまで頑張れる気力もありません。仕事を持ち帰っても、家では何も手が進まず、丸つけすら出来ない日々を送っています。食事量も減り、ストレス性の咳も毎日止まりません。
だんだんと自分に余裕が無くなり、子どもよりも保護者を優先してしまうようになってしまいました。そんな自分ももう嫌です。この仕事が楽しくなくなってしまい、とにかく毎日が過ぎるのを待っているだけになっています。子どものことが大好きで、みんなの成長が誇りだと思っていたのですが、それすらも見えなくなり、困っています。今、何をすべきなのかがわかりません。どうすれば学級を持ち直せるでしょうか? もういっそ、今年度で辞めてもいいのかなとも思っています。
長々と書いてしまいましたが、とにかく今、なにも体が動かなくて困っています。優しい子どもたちが笑える教室を取り戻したいです。アドバイス頂けたら嬉しいです。
(塚・20代女性・小2担任)
A. まわりに助けを求め、子どもたちと一緒に学級づくりを考えてください
ご依頼の件、拝読しました。精神状態がぎりぎりの状況の中、それでも踏ん張っておられるのは、子どもたちへの深い愛情と教職への情熱がある証だと受け止めました。それを受けて私からは3つの話をします。
まず、あなたは特別な教員ではないということです。今は落ち着いて学級経営ができている先輩教員も、ほとんどの人があなたと同様の経験をしています。ベテランと呼ばれるまで教員を続けてこられたのは、何らかの方法でそれを乗り越えてきたからです。同僚や管理職の支え、家族の励まし、カウンセラーや医療従事者の働きかけなど、何らかの支援があったのでしょう。病気休暇をとる、転勤をするといったケースも考えられます。でもそれらをマイナスに考えるのではなく、前に進む手段としてとらえていけば、自分の気持ちを立て直していくきっかけになります。
自分自身のことを教員としての力量に欠けると捉える必要はまったくありません。不足しているとすれば経験だけです。
2つ目は、まわりに助けを求めることは恥ずかしいことではないということです。経験の浅い教員は、人を頼ると指導力が不足していると思われるのではないかと考えがちです。今は一人の教員が一つの学級を担任していくという時代ではありません。ご存じのように、チーム担任制や教科担任制を採用している学校は珍しくなくなりました。教員も子どもも相性というものがあります。いろいろな教員が関わる中で、学級内で困難さを抱えている子どもにも「居場所」となる教員に出会うことで落ち着きを取り戻すこともあります。
また、若い教員は保護者の目を気にして萎縮してしまうこともよくあります。経験が浅いということをマイナスとして評価されているのではないかという感覚は、よくわかります。でも、実は保護者は若い教員には好意的なことが多いのです。担任としての安定感よりも、まっすぐに子どもたちと向き合ってくれる姿勢に好感を覚えるからです。困っている状況があれば、それを正直に懇談会等で話せば、アドバイスをいただけたり、応援をしてくださったりします。学校によっては、支援サポーターになってくれるケースもあります。学年の指導体制や保護者との連携は学校運営のあり方に関わることではあるけれど、一人で学級を抱え込む必要はないと捉えてください。
3つ目として、子どもたちと一緒に学級づくりをしていくことを考えてください。学級内でみんなと一緒にできない、邪魔をするといった子どもがいた時に、まわりの子どもたちはどうしているでしょうか。仕方がないと我慢したり、先生に訴えたりしているのだとすれば、あなたはその子にかかりきりになっていきます。支援に入っていただいている場合には、その方にお任せするという状況でしょうか。いずれにせよ、課題のある子とまわりの子の関わりは薄くなっていきます。子どもたちからすれば、あの子のことは先生たちに任せたらいいという意識が育ちます。
先生が困っているなら、子どもたちに知恵を借りましょう。どうしたら落ち着くのか、一緒に学び合うためには、自分たちができることはないのかということを子どもと一緒に考えて、試行錯誤していく。その中で、みんなで共に学ぶという意識が育っていきます。
それが学校教育の素晴らしさです。
ご自身の健康状態を見きわめながら、納得ができたことから取り組んでください。それができない状況なら、休養をとることも大切な選択です。何よりも自分を大切にできないと教育活動には前向きにはなれないことを忘れないでください。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。