低学年でも取り組める国語「お話づくり」のプログラミング学習

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2020年度から全面実施の小学校プログラミング教育について、低学年向け授業状況を紹介します。今回は、 東京都町田市立小山中央小学校教諭&町田市小教研情報教育部・古屋一希先生による、プログラミングアプリでお話を作る国語の授業です。

古屋一希先生

古屋一希●小山中央小学校において低学年から高学年までの担任を務めた経験を持ち、国語などの教科の中でプログラミングを活用した授業を行っている。同校の2020年度プログラミング教育のカリキュラムを担当。

プログラミング学習風景

町田市内の全小学校に同環境を整備

今回は、東京都町田市立小山中央小学校を紹介します。町田市では市の教育振興基本計画「町田市教育プラン2019-2023」の一つとしてICT教育の取組を行っており、町田市立の全ての小学校にLTE版のノートパソコン『Chromebook』40台の導入を進めています。Chromebookは、Googleが開発した独自のOSを搭載したパソコンで、低価格で操作も簡単なことが特徴です。

町田市ではさらに、ICT活用の中核となる教員を「ICTマスター」として指名し、研究活動を行っています。

小山中央小学校では、2018年から児童用に40台、全教員に1台ずつChromebookが導入されました。これに加え、パソコンルームにはWindowsのノートパソコン40台が設置され、全学年の授業などに活用されています。

同校でプログラミング教育のカリキュラム作成を担当している古屋一希先生は、「低学年でのプログラミング教育を考えた際、国語と意外にマッチングすることに気付いたのです」と話します。「2017年度に三年生の国語で『段落を意識して、道案内の文章を書かせる』という授業を行った際、実際に組み立てられるプログラミングブロックを使ってみたところ、圧倒的な効果を得ることができました」

この経験をもとに、古屋先生は、二年生の国語でもChromebookでプログラミングアプリを使った授業に挑戦しました。国語の授業においては、「プログラミングをすることが目的ではなく、あくまで教科の指導内容を、子どもたちに理解させるためにプログラミングのブロックやアプリを取り入れています」と言います。

必修化される2020年度から、「教科の中に、いかにプログラミングを取り入れるか」と悩んでいる先生も多いでしょう。

今回ご紹介する国語の授業事例は、教科書の良さを生かしつつ、プログラミングをツールとして取り込むことで、子どもたちが自ら進んで学ぶ機会をつくる好例の一つと言えます。

Chromebook
Chromebook

『Chromebook』とは
Chromebookは、Googleが開発した独自のOS「Chrome OS」を搭載したノート型パソコンの総称で、様々なメーカーが製造しています。Windowsのパソコンのようにすべてのアプリをインストールして使うのではなく、高度な作業はネットワーク上のホストコンピュータに委ね、その入力と出力をWebブラウザで行うという設計思想のため、動作が軽快で起動時間も早いのが特長です。
町田市教育委員会によると、メリットとして「データがクラウド上に自動保存されるため、セキュリティ性と操作性に優れている。学校の共有機器としても使いやすく、低価格ながらタッチパネル機能を備え、キーボードも使用できる」といった点を挙げています。

プログラミングアプリを使った国語の授業事例

第2学年 国語「お話の作者になろう」

教科の目標

「はじめ」・「なか」・「おわり」の構成に気を付け、プログラミングアプリを用いて、「なか」の絵と動きを作り、文章化する。

プログラミング的思考の目標

物事を順序立てて考える力、自分が思い描くお話になるような動きをつくることで、自分の思いを表現する力を養う。

プログラミングアプリを使ったお話づくり

教科書の「まとまりに分けて、お話を書こう」という単元の「お話のさくしゃになろう」という教材で、ビジュアルプログラミングアプリ『ソビーゴの日曜日』を使って、オリジナルのお話をつくる活動を行いました。

「ソビーゴの日曜日」とは
子供向けビジュアルプログラミングアプリ「ソビーゴ」のオリジナルアプリ。アプリの画面の中で、ブロックを組み立てていくような感覚でプログラムを作成できます。

最初に「はじめ」と「おわり」の絵から、どんなお話にするのかイメージし、『ソビーゴの日曜日』で自由にステージをつくる機能を使って、「なか」の絵を作成します。そして、画面を見ながら、お話を文章化していきました。

2時間続けての授業で、アプリでお話をつくる、文章化するところまでを行いましたが、その準備段階として、『ソビーゴの日曜日』を子どもたちに体験させ、操作に慣れる時間を1時間設けました。そのため、本時では少ない説明ですぐに実践に入ることができました。

反省点としては、本来の目的としては「先に頭の中でお話を考えてから、それをアプリで形にする」という予定でしたが、実際にアプリを始めると、作業しながらお話を考えてしまう子どもが多かったことです。ただし、二年生の発達段階としてはこの方法でもよいと考えました。

これまでは、なかなか書き出すことができなかった子どもたちが、『ソビーゴの日曜日』を使った過程を経たことで、進んでお話を書いていました。結果として、教科の学びに適した活用ができていました。

授業の流れ(2時間続きの授業で行う)

1.めあてを理解し、「なか」の物語を考える

最初に単元の流れと、今日のめあてを確認する。「はじめ」と「おわり」の絵から、どんなお話にするかをイメージし、「なか」の物語を考える。この段階では、パソコンやプログラミングアプリには一切触れない、まずはシートの絵を見て、どんな話にするかというお話づくりに集中させる。

2.『ソビーゴの日曜日』で絵を作成する

お話を考えたら、それに沿ってアプリの『ソビーゴの日曜日』で、「なか」の絵を作成する。背景を決めたら、飾りやアイテム、仕掛けなどを決める。

「ソビーゴの日曜日」の背景作成画面
話づくりが難航する子どもには、アプリ画面を見せて考えさせる。

3.お話に沿ってキャラクターを動かす

「なか」の絵ができたら、今度はキャラクターの「ソビーゴ」君を動かすプログラミングを行う。考えたお話に沿って、絵の中で動くよう工夫する。

「ソビーゴの日曜日」のプログラミング作成画面
お話の内容を確認し、ねらいとずれないように声かけする。

4.できあがった絵と動きを見てお話を書く

プログラミングしたキャラクターの動きを見ながら、お話づくりのためのメモをする。最後に、まとめたメモを元にお話を完成させる。

プログラミング中

用意するもの

プログラミングアプリ『ソビーゴの日曜日』

『ソビーゴの日曜日』

ワイズインテグレーションが開発した、学習用のプログラミングアプリ。ブラウザー上で利用できるため、機種を問わない。ブロック型の命令を並べると、右側の絵の中のキャラクター「ソビーゴ」君がプログラムしたとおりに動く。自分で背景や物を置き換えて、ステージを自由に作る「ステージクリエイト機能」を使用した。

また、今回は使用しなかったが、アプリと同じ絵柄と形のブロックの実物もセットになっているため、ブロックだけを使った、アンプラグド・プログラミングの授業も行うことができる。

ソビーゴ プログラミング教育スタートセット
「ソビーゴ プログラミング教育スタートセット」

教育機関向けに、ブロックとアプリ教材をセットにした「ソビーゴ プログラミング教育スタートセット」などが用意されている。ブロック教材1セットとアプリ教材1IDのセットで1万6000円(税抜)。

パソコンもしくはタブレット

『ソビーゴの日曜日』が動くパソコンやタブレットなど。今回は、Chromebookを使用。

ワークシート

お話を書くシートを3枚用意する。「はじめ」と「おわり」の絵だけを用意し、「なか」は絵の枠だけをつくっておく。

【関連記事】低学年向けのプログラミング学習⇒低学年でも取り組める「アンプラグド・プログラミング」授業とは

取材・文/教育ライター&編集者・相川いずみ

相川いずみ●ICT教育、プログラミング教育をテーマに、全国の幼稚園から大学まで、教育現場の取材・執筆を行う。民間のプログラミング教室のマニュアルなども作成するほか、東京都内の学校でプログラミング教室の開催なども行っている。

『教育技術小一小二』2019年11月号より

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