「校内教育支援センター」とは?【知っておきたい教育用語】

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文部科学省による最新の統計では、2022年度の小中学校における不登校児童生徒数は過去最多の29万9048人に達したとあります。年々、不登校児童生徒等が増加していくなかで、「校内教育支援センター」の整備、充実が求められています。

執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム

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不登校児童生徒等を支援する「校内教育支援センター」

【校内教育支援センター】
「校内教育支援センター」とは、空き教室を活用して、不登校や集団生活に不適応傾向のある児童生徒等を支援する教室のこと。「スペシャルサポートルーム」とも呼ばれる。

校内教育支援センターは、2023年3月に発表された「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)において重要な役割を果たしています。今年8月29日に行われた、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部(第4回)」では、「設置率が全国平均で46.1%になっていること」が報告されました。

また、不登校児童生徒等への対応について、政府は不登校児童生徒等の早期発見および早期支援、学びの継続ための取組の方向性を令和5年度補正予算案(11月10日閣議決定)に反映しました。これを受けて、文部科学省は「不登校児童生徒等の学び継続事業」「不登校児童生徒等の早期発見・早期支援事業」としてさまざまな取組を検討。そのなかには、校内教育支援センターの充実も含まれています(文部科学省「不登校児童生徒等の学び継続事業」から、該当部分を抜粋して紹介)。

校内教育支援センターの設置促進 29億円
公立の小・中学校に校内教育支援センターを設置できていない学校のうち、不登校児童生徒数が多い学校(6,000校)に対して、設置に必要な経費を支援することにより、不登校の未然防止・登校復帰支援を加速度的に進める。

自分のクラスに入りづらい児童生徒の学校内の居場所を確保し、不登校を未然に防止するとともに、不登校児童生徒の登校復帰を支援する

以上のことから、校内教育支援センターは、不登校児童生徒等の不登校防止および登校復帰策として、大きな効果を期待されていることがわかります。

校内教育支援センターの主な役割

岐阜県教育委員会「学校内教育支援センターの運営」よると、校内教育支援センターの運営において、パーテーションなどによって個別学習エリアや、丸テーブルを設置しコミュニティエリアを整えるといった、環境面での「居場所づくり」と心理面での「居場所づくり」が大切であるとされています。特に、心理面での居場所づくりにおいては、次のことを重視しています。

◆気持ちに❝寄り添う❞
〇登校できたことや継続して取り組むことができているということ、新たにできるようになったことなどを認める。
・児童生徒・保護者の思いや考えを大切にする。
・できた、できなかったに関わらず、「やろう」とした思い、できなかった思いに共感する。
・児童生徒にとって安心・安全な空間であることを第一とする。
〇児童生徒が、自分の思いや考えを話すことができる時間や場面の設定
・屋外での活動(散歩、菜園、遊び等)等、心のゆとりが生まれる活動を計画する。
・担任・学校内教育支援センター支援員等以外の教師が関わることも効果的である。

◆❝自己決定の場❞の位置付け
〇登下校の時間や活動内容を自分で選択(自己決定)
・教室復帰を前面に押し出さない。決めていたけどできない日もある。

岐阜県教育委員会学校安全課(PDF)「学校内教育支援センターの運営」令和5年10月

不登校児童生徒等の支援については、子どもたち一人一人に合った方法、ペースで行うことが大事であり、校内教育支援センターがその役割を大きく担っています。

校内教育支援センターにおけるICTの活用

ICT端末を活用し、校内教育支援センターと教室とをつなぐことで、より効果的に学びの継続を実践することができます。例えば、校内教育支援センターで過ごしている児童生徒に向けて、所属教室での授業を定点カメラで撮影、ライブ配信することで同じ授業を受けられます。また、通信環境によってライブ配信が難しい場合は、授業動画をクラウド上に保存し、校内教育支援センターで視聴することも可能です。

また、所属教室の授業にオンラインで参加することも可能です。課題の提出などは、eラーニングやロイロノート、Google Classroomなどのツールを活用することで対応できます。

1人1台端末の整備が進み、ICTによる不登校児童生徒等への対応・支援策の可能性も広がっています。不登校の未然防止策としては、魅力ある学校づくりのための取組が重要ですが、それと同時に、校内教育支援センターのような、学校に行きづらい、教室に入りづらい子どもたちの居場所を充実させる取組も必要不可欠です。

▼参考資料
文部科学省(PDF)「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」令和4年10月4日
文部科学省(PDF)「資料3 校内教育支援センター設置状況」令和6年8月29日
文部科学省(ウェブサイト)「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部(第4回)安心して学べる魅力ある学校づくりの推進に向けた方向性等について議論」令和6年8月29日
文部科学省(PDF)「不登校児童生徒等の学び継続事業」令和5年11月17日
岐阜県教育委員会学校安全課(PDF)「小・中・義務教育学校における 学校内教育支援センターの運営 ~誰一人取り残されない学びの保障のために~」令和5年10月
千葉県教育委員会(PDF)「令和5年度 千葉県不登校児童生徒支援推進校における校内教育支援センターの活用事例集

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