小4社会「郷土の発展に尽くす-蚕当計(さんとうけい)を発明した中村善右衛門-」指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

執筆/福島大学附属小学校教諭・板倉正哉
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
     国士舘大学教授・秋田博昭

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・伝統文化を今に伝える福島県
・郷土の発展に尽くす-蚕当計(さんとうけい)を発明した中村善右衛門-
・伝統的な技術を生かす新宿区 
・伝統文化を守り生かす台東区
・豊かな自然環境を生かす小笠原
・国際交流に取り組む大田区

目標

当時の世の中の課題や人々の願いなどに着目して、見学・調査したり地図などの資料で調べたりして、年表などにまとめ、地域の発展に尽くした先人の具体的事例を捉え、先人の働きを考え、表現することを通して、地域の発展に尽くした先人は、様々な苦心や努力により当時の生活の向上に貢献したことを理解できるようにするとともに、主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度を養う。

評価規準

知識・技能

①当時の世の中の課題や人々の願いなどについて、見学・調査や地図などの資料で調べて、必要な情報を集め、読み取り、地域の発展に尽くした先人の具体的事例を理解している。
②調べたことを年表などにまとめ、地域の発展に尽くした先人は、様々な苦心や努力により当時の生活の向上に貢献したことを理解している。


思考・判断・表現

①当時の世の中の課題や人々の願いなどに着目して、問いを見いだし、地域の発展に尽くした先人の具体的事例を地域の発展に尽くした先人の具体的事例を考え、表現している。
②先人の働きと地域の発展や人々の生活の向上を関連付けて地域の発展に尽くした先人の働きを考え、適切に表現している。


主体的に学習に取り組む態度

①地域の発展に尽くした先人について、予想や学習計画を立てたり、学習を振り返ったり見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。

学習の流れ(10時間扱い)

問題をつくる 3時間

  • 既習事項を基に、信達地方(福島市)の発展や人々の生活の向上の様子を捉える。
  • 中村善右衛門が登場する前の信達地方の様子を調べ、学習問題を設定する。

(学習問題)
中村善右衛門はどのように養蚕をさかんにし、信達地方を発展させたのだろう。

  • 中村善右衛門の働きについて予想し、学習計画を立てる。

追究する 5時間

  • 昔の地図や写真などの資料を関連付け、中村善右衛門が蚕当計を発明した当時の信達地方の様子について分かったことを話し合う。
  • 資料館を見学し、生糸ができるまでの流れについて調べる。
  • 当時の農家の願いについて調べる。
  • 中村善右衛門が蚕当計を開発する上での苦心や努力について調べる。
  • 学習を振り返り、さらに調べるとよいことについて話し合う。

まとめる 2時間

  • 調べたことを年表にまとめ、中村善右衛門の働きについて話し合う。
  • 中村善右衛門の働きと地域の発展とのつながりをまとめる。

問題をつくる

福島県福島市周辺の信達地方が発展した理由について話し合い、中村善右衛門が果たした役割について学習問題を設定するとともに、学習計画を立てる。(1、2、3/10時間)

既習事項を基に話し合うためのくふう

第3学年に学習した「市の様子の移り変わり」の学習を振り返る際に、写真や学芸員の説明動画等をタブレット型端末上に準備することで、既習事項を基にして、信達地方が発展した理由を話し合うことができるようにする。


1時間目 
既習事項を基に、信達地方(福島市)の発展や人々の生活の向上の様子を捉える。

これは3年生の時に学習した大町通りの写真です。どのようなことを学習したか覚えていますか。

「市の移り変わり」の資料
「市の移り変わり」の資料 
出典:福島市

銀行がたくさん集まっている地域だったので、私たちが「銀行まち」と名付けて移り変わりの様子を調べました。

明治時代には町の中を機関車が走るようになりました。それから人口が増えていったことで、路面電車へと移り変わっていったのでしたね。

しっかりと覚えていますね。では、大町通りに機関車が走り、銀行が集まるようになったのには、どのような理由がありましたか?

たしか、蚕を運んで取引をするためだったと思います。

そうでしたね。では、3年生の学習の時に使った資料が、タブレット型端末の資料箱に入っているので、その資料を見ながら学習を振り返ってみましょう。

生糸を出荷する様子
生糸を出荷する様子
出典:福島市
銀行街と機関車
銀行街と機関車

養蚕は、福島市や信達地方の発展につながっているとても重要な産業でした。

そうでした。でも、その養蚕はどうしてこんなに盛んになったのかな?

※第3学年の「市の様子の移り変わり」の学習における「交通」「土地利用」「人口」などの移り変わりは、本単元の内容と関連している場合があります。そのため、本実践では、導入でタブレット型端末を活用して第3学年の「市の様子の移り変わり」の学習を振り返り、児童たちが、当時の人々の生活の向上や地域の発展などの社会的事象と出合うことができるようにしました。

問いを見いだすためのくふう

話合いで出された疑問をタブレット型端末上に整理し、学習問題を全体で共有することで、学習の見通しをもつことができるようにする。


2時間目 
中村善右衛門が登場する前の信達地方の様子を調べ、学習問題を設定する。

信達地方の養蚕を盛んにした人物は誰でしたか?

前の時間に見た資料には、中村善右衛門という人が養蚕を盛んにしたと書いてありました。

それならば、中村善右衛門という人のことを調べれば、信達地方の発展の理由が分かりそうですね。

でも、中村善右衛門が登場する前から養蚕は行われていたと書いてありましたよ。

それならば、中村善右衛門が登場する前と後の様子を比べると、中村善右衛門が信達地方の発展と関係があるのかが分かると思います。

それではまず、中村善右衛門が登場する前の信達地域の様子を調べてみましょう。

中村善右衛門が登場する前の地域の様子について調べる活動
調べたことをタブレット型端末上で整理した図

調べたことをタブレット型端末にまとめるとこうなるね。

中村善右衛門が登場する前は、自然条件や農家の感覚に頼っていました。

はずれ年があると死活問題だったので、人々は苦労していたのではないかと思います。

ということは、中村善右衛門の登場と信達地方の発展は関係があるのではないかな。

それじゃあ、中村善右衛門がどんなことをしたのか調べていこうよ。

 
中村善右衛門はどのように養蚕をさかんにし、信達地方を発展させたのだろう。

追究する

当時の世の中の課題や人々の願いなどに着目して、中村善兵衛が行った具体的事例についてべる。(4、5、6、7、8/10時間)

資料を関連付けながら情報を読み取るためのくふう

タブレット型端末上で2つの資料を矢印でつなげ、そこから分かることを文にまとめる活動を取り入れることで、資料を関連付けながら情報を読み取ることができるようにする。


4時間⽬ 
昔の地図や写真などの資料を関連付け、中村善右衛門が蚕当計を発明した当時の信達地方の様子について分かったことを話し合う。

イラスト/(資)イラストメーカーズ

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