小3算数「あまりのあるわり算」指導アイデア《問題に応じた商の処理の仕方》

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

執筆/さいたま市立木崎小学校教諭・伊藤佳祐
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫

単元の展開

第1・2時 割り切れない場合の計算の仕方(包含除)14÷3

第3時 割り切れない場合の計算の仕方(等分除)16÷3

第4時  割り切れない場合の答えの確かめ方

第5時(本時)問題に応じた商の処理の仕方(余りを考える問題)

第6時  まとめ

本時のねらい

商や余りの意味に着目して、問題に応じた商の処理の仕方を考え、説明することができる。

評価規準

商や余りの意味に着目して、図などを用いて問題に応じた答えの求め方を考え、説明している。

本時の展開

問題①
ケーキが23こあります。1箱に4こずつ入れていきます。ケーキを全部入れるには何箱ひつようですか。

どんな式になりそうですか。

23÷4です。

どうしてわり算なのですか。

同じ数ずつ、ケーキを分けていくからです。

そうですね。同じ数に分けていくことを「わり算」で表すことができるのでしたね。答えはどうなりますか。

5余り3です。5箱に入れて3つ余ります。だから、5箱必要です。

でも、よく問題を見ると、ケーキを全部入れないといけないよ。

そうか。余りの3つも箱に入れないといけないんじゃないかな。

つまり、6箱必要だ。

なるほど。余った3個も箱に入れないといけないんですね。今までの問題とどんなことが違いますか。

計算の答えをそのまま使うと、問題の答えに合わないところです。

余ったケーキも箱に入れないといけないところです。

余りをどうするかを考えなくてはいけないのですね。では、次の問題ではどうでしょう。

問題②
1台の車にタイヤを4こ使って、おもちゃの車を作ります。タイヤは30こあります。何台の車が作れますか?

これもわり算の問題だから、式は30÷4です。

割り切れないから、余りが出るね。

今回の問題も余りが出てきそうですね。今日は余りに注目して問題を考えていきましょう。余りをどうするか考えて、答えを求めましょう。また、わけも考えましょう。

学習のねらい
余りをどうすればよいか考えよう。

見通し

問題①と同じように、余りがあるので1足して考えればいいんじゃないかな。

図を使って考えればはっきり分かるよ。

かけ算を使ってわけを考えてみよう。

自力解決の様子

A つまずいている子
式は書けているものの、余りの処理の仕方が分からず、そのまま「7台余り2個」や前問と同様に考え、答えを+1して「8台」と回答している。


B 素朴に解いている子
計算の答えが「7余り2」であることから、答えも「7台」と書いている。


C ねらい通り解いている子
Bの子に加えて、「余り2ではタイヤが足りずに作れないから、この問題は+1をしない」と前問と比べて説明することができている。


学び合いの計画 

この単元では、既習事項(わり算)を活用しながら、余りのあるわり算について考えていく単元です。本時での子供がつまずく場面として、余りの捉え方と処理が考えられます。立式することや計算の答えを求めることは可能ですが、問題場面の答えとして余りをどう処理していくかに難しさがあります。そのため、日常場面に即しながら考察したり、具体物や図を活用しながら問題場面を視覚的に表したりすることでより良い理解につながります。

例えば、問題場面①ではケーキを4個ずつ入れていくと5箱はきれいに入れることができますが、3個余ってしまった場面を「答え5箱」とするのではなく、余ってしまった3個も箱に詰めないといけないことを確かめたり、図のように表し、すべて箱に入れるためにはもう1つ箱を用意しなければならないことが視覚的に理解したりできるように工夫します。

図表1

また、問題場面②では、タイヤが4個ずつ7台分と余り2個の場面では、タイヤ2個では車を作ることができないから、余りのタイヤは使わないことを理解させます。そのため、自力解決の際は、図やブロックを使って考えている子供に対し、「なるほど。図があると分かりやすいね」「ブロック使っているから説明が上手だね」と称賛し価値付けていくことが大切になります。その際、問題場面①のケーキの問題と比較させ、「余りの分を考えて、計算の答えに1を足すときと足さないときがある」と気付けるようにします。

図表2

練り上げの際は、どうして車の問題では答えに1を足さないのか、どんなときに1を足すのかと、余りの処理の仕方について話合いを行い、余りの処理の仕方について日常場面に即して考察し、理解を深めるようにすることが大切です。適用発展の際に、子供自ら問題を作成し、子供どうしで問題を出し合う活動も考えられます。余りの処理を考える問題をつくり、ICTを活用しながら全体に共有することで、今日の学びを深めていく活動につながります。

ノート例

B 素朴に解いている子

ノート例1

A つまずいている子

ノート例2

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

先生がみんなの答えを見ていたら、2つの答えがありました。C1さん、式と答えを教えてください。

〈C1〉30÷4=7余り2。余りがあるので答えに1を足して答えは8台です。

この考えが分かりますか。同じような答えの人もいましたね。

ケーキの問題と同じように考えたんだと思います。

ケーキの問題では余りがあるので答えに1を足していたから、足したんだね。

〈C2〉僕は少し違います。計算はC1さんと同じです。しかし、答えは7台になりました。

え。余りはどうしたの。

C1さんとC2さん。考え方で違うところはどこですか。

答えに1を足しているかいないかです

もう少しくわしく説明してくれますか。

おもちゃの車はタイヤが4個ないと新しい車が作れないので、答えに1を足すことはできません。もし1を足して8台とすると、8台目の車にはタイヤが2個しかついていないことになります。

そうか。今回は2個タイヤが余るけれど、新しい車(8台目)ができないから、今回は足してはいけないんだね。

私は図を書いて答えを求めました。7台作れることがよく分かりました。

図表3

ケーキの問題と車の問題では、余りをどうするかに気を付けないといけないようですね。どんなことに気を付けないといけませんか。

余りがあるとき、答えに1を足すときと足さないときがあることです。

どうすれば、答えに1を足すか足さないかが分かりますか。

「ケーキなどすべてを入れる」ときは、ケーキが余ったときももう1箱使ってケーキを入れないといけないので、1を足します。

「4個で1つの車が完成する」や「8枚で1回引ける」ときは、余ってしまったときは完成できなかったりくじが引けなかったりするので、1は足しません。

すごいですね。つまり、「すべて入れる」などのときは1を足して、「○個ないと1つのものが完成しない」などのときは1を足さないのですね。他にもこのような場面があるか、考えてみましょう。

学習のまとめ

・問題場面によって、答えに「余りの分を考えて1足すとき」や「余りの分を足さないとき」がある。
・図を使って表すと、理由が分かりやすい。

評価問題

問題を考え、とききましょう。図などを使ってわけをせつ明しましょう。
※子供がつくった問題を解き合う。

例① 
子どもが35人ならんでいます。1つのベンチに6人ずつすわります。全員すわるには、ベンチは何きゃくひつようですか。

例② 
8まいのけんを集めると1回くじが引けます。今、52まいけんをもっています。くじは何回引けますか。

子供に期待する反応の具体例

例①
式 35÷6=5 余り5
余りの5人も1脚使うので
5+1=6
答え 6脚

例②
式 52÷8=6 余り4
余りの4枚ではくじが引けないから
答え 6回

感想例

  • 余りのあるわり算の文章問題は、余りによって答えが変わることが分かりました。
  • 余りのあるわり算の問題をつくるときに、余りをどうするか考えるのが楽しかったです。もっと問題をつくってみたいです。

ワークシートと板書例

イラスト/横井智美

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