小1国語科「しらせたいな、見せたいな」板書例&全時間の指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小1国語科「しらせたいな、見せたいな」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:しらせたいな、見せたいな(光村図書・こくご 一下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属大泉小学校・今村 行

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、学校にいる生き物や学校で見つけたものを、家の人に知らせたい!という意欲を喚起し、文章を書く単元です。本単元は10月に設定されています。児童は生活科の学びなどを通して学校に詳しくなり、「あんなことも、こんなことも知っているんだよ!」と知らせたい意欲がたくさん湧いているのではないでしょうか。

本単元では、単元で身に付けたい資質・能力を「書くこと」(1)アに設定しました。
知らせたいこととして何を選ぶのか、「題材の設定」「情報の収集」「内容の検討」の部分を意識して指導していきます。急いで題材を決めるのではなく、生活科の学習などとも関連付けながら、「ぜひこれを知らせたい!」というものを見つけ、よくそれを観察し、その上で書く、ということを目指すとよいでしょう。
教科書20ページにあるように、丸や点の使い方、「は」「を」「へ」を正しく使えているのかなど、知識・技能の面で指導すべきこともありますが、まず何よりも「書いて楽しかった!」「もっと書きたいな!」という意欲が児童の中に生まれることを願って単元を進めていくとよいでしょう。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元は思考力、判断力、表現力等のB「書くこと」の言語活動例ア「身近なことや経験したことを報告したり、観察したことを記録したりするなど、見聞きしたことを書く活動」を扱います。
いくつか留意したいポイントを確認しましょう。

一つは、「1.単元で身に着けたい資質・能力」でも触れましたが、この単元では「題材の設定」「情報の収集」「内容の検討」を大切にしたいということです。児童は、「伝えたい!」と思うものがいくつもあるかもしれません。できれば、生活科の学習と関連させたりしながら、学校にいる生き物やあるものなど、「伝えたい!」と思えるものをさらに増やし、その中から書く題材を決める、ということができるとよいと考えます。

もう一つは、自分の思いや考えが明確になるように、事柄の順序に沿って簡単な構成を考えることです。書く題材を決めたら、それを観察します。教科書21ページでは、バッタの観察が例に挙げられています。22ページの文例では、まず、ばったが「ぴょん」という名前であることが書かれています。ばったと書き手の関わり方が伝わってきます。1段落目はからだの特徴として「いろ」と「さわったかんじ」を書いています。続いて、「あたま」と「あし」、最後に、「うごき」が書かれいます。
これを、「うごき」から書くと、全体を見て取ることができません。全体から部分、そして動きというような簡単な構成が分かると、「何を」「どのように」書くかということが児童に身に付いていくでしょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 自分で題材を決める

ここまで繰り返し述べてきたように、この単元では「題材の設定」「情報の収集」「内容の検討」を大切にしていきます。生活科の学習と関連させるなど工夫して、文章の題材にしたい候補をいくつかもち、その中から自分で一つに決めるということができるとよいでしょう。
その際はぜひ、「なぜ、その題材にしたのか?」ということを児童に投げかけ、その子なりの理由が語れるといいのではないでしょうか。

〈対話的な学び〉 書いた文章を互いに読み合う

本単元では、書き終えた文章を家の人に読んでもらう前に、文章を声に出して読み返す、という活動をします。その際、一人で黙々と音読して誤字脱字があるかを確認するのではなく、ペアやトリオなどで聞き合いながら、文章を読み返す習慣を付けることを教師は意識したいものです。
互いの文章を読み合う際には、書いた文章に対して感想を伝え合うことができるとよいですね。感想を伝え合うことのモデルを教師が教科書の文例を使って行ってもよいでしょう。
その際、よいところを見つけて伝えると、児童にも広がっていきます。いいほめ方が学級に広がり、安心感が生まれることは対話的な学びを生むための土壌とも言えます。

〈深い学び〉 書いて伝えることのよさを実感する

深い学びを考える際に、実感を伴った学びにすることは大切です。そのためには、他の教科の学びとつなげたり、学校の外の生活の場面と結び付けたりすることが考えられます。
本単元においては、「書いた文章をお家の人に読んでもらう」という活動を設定することで、国語の授業で書いた文章が、お家の人に読んでもらえ、学習したことをよく知ってもらうきっかけになることを実感させるとよいでしょう。学校の国語の授業が自分のお家の人に影響を与えることがある、ということを実感することで、学びは学校の中のためではなく、学校の外に開かれたものなのだ、ということが理解できるはずです。

今回は、そのような活動を行うことを事前に保護者にも伝え、児童が書いた文章を前向きに受け止め、感想ももらえるよう事前にアナウンスしておくとよいでしょう。

5. 単元の展開(8時間扱い)

※教科書では10時間扱いとなっています。書く時間を伸ばすなど調整することも可能です。

 単元名: くわしく かこう

【主な学習活動】
・第一次(1時2時3時
①「学校にいる生きものや、学校で見つけたものをよく見て、いえのひとにしらせる文しょうをかこう」という学習課題を児童と設定する。知らせたいものを考える。
②③ 知らせたいものの候補の中から、文章に書く題材を決めて観察し、内容を検討する。

・第二次(4時5時、6時
④ 22ページの文例を参考にして、簡単な構成を考える。
⑤ 考えた順番に従って文章を書く。
⑥ 文章を声に出して読み返す。聞き合って感想を伝え合う。
  〜書いた文章をお家の人に読んでもらい、感想をもらう〜

・第三次(7時8時
⑦ お家の人に読んでもらった感想をまとめる。
⑧ 学習を振り返る。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

1時間目は、学校で見つけたものを取り上げてお家の人に伝えるという学習課題を、子供たちとつくっていきます。

書くことの題材は、何かを読者に説明したり、行動を働きかけたり、説得したりと、学年が上がるにつれて性質が変わっていきます。
1年生の10月に扱う本単元での学習は、「自分が見つけた好きなもの、ぜひこれを知らせたいと思うもの」を紹介するという性質ですから、何よりもまず自分で題材を決めるということが大切です。
書く前の題材設定にも丁寧に時間をかけたいところです。「自分で選択する」という経験を重ねていくことが児童の主体的な学びに直結することは言うまでもありません。

今、みんなが夢中になっているものって何かな?

生活科の時間に捕まえたカマキリ!

ウサギ小屋にいくこと!

鬼ごっこ!

※時間の都合もあるでしょうが、児童全員に答えてもらってもよいでしょう。本単元では、教科書教材にある「ばった」等の昆虫や生き物を対象にして伝えるという想定で進めます。

いろいろありますね。今聞いていると、生活科の時間に捕まえたカマキリとか、見学したウサギ小屋とかに夢中になっている人が多いようですね。他にも鬼ごっことか遊びに夢中の人もいますね。どうでしょうか。みなさん、字を書くのもとても上手になってきたので、「学校にいる生きものや、学校で見つけたものをよく見て、文章に書いて家の人に知らせる」という学習をやってみませんか。

えー、字をきれいに書かなきゃ。

何を知らせるか迷う。

何にしよう!

そうですね。これまでの学習などで見つけたものをお知らせするというのがいいですね。

まだ迷うなぁ……。

まだ迷って大丈夫ですよ。急がず、決めていきましょう。どうしても見つからない人は、先生と一緒に休み時間にもう一度学校を探検しましょう。これを知らせたい! というものは、写真を撮っておきましょう。


【2・3時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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